第359話 結局こうなる

必須科目の単位も取り終えてノンビリとした最終学年を過ごして居た俺だが、プライベートの方は縁談話のお断りで気忙しく過ごして居た。


親が貴族の場合なら、両親からせっつかれたりするのだろうけど、幸いな事に我が家の両親は庶民なので、そのような圧は賭けて来ないので自由にさせて貰っている。




そんなある日、王宮よりの招集の書簡が届いて急遽久々に王宮のゲート部屋へと飛んで、呼び鈴を鳴らして案内して貰うと、何時ぞやの軍議を行った会議室へととおされた。


「トージ・フォン・オオサワ、馳せ参じました。」と入室すると、何時ものメンバーが俺を待ち構えていた。


「おお、良く来た。また厄介なのが動き出してな・・・。」と苦い顔をする国王陛下。


どうやら、アグーラマ王国は城壁の修理を放置して、我が国を攻める事にしたらしい。


敵の国王の優先順位はどうなっているのか小一時間程問い詰めたいぐらいだが、性懲りも無く攻めて来る気なのだと言う事だった。


責めは最大の防御と思ったのか、はたまた侵略が中止となったのが敵国の国王には我慢ならなかったのか、強硬手段で攻めに転じるつもりらしい。


そこで、中止にしていた制圧作戦を実施する事にしたと言う事で呼ばれたらしい。


「と言う事は双方の血を流す覚悟をしたと言う事ですね?」と俺が質問すると、ユックリ頷く国王陛下。



そして、日時等は敵の部隊が出陣から2週間後位に制圧部隊を送り込む事となったのだった。


要は敵の王城に兵の少ない隙に可能な限り無血で制圧を謀ると言う事である。



2週間も王都から離れた所に居れば、仮にUターンしても即座に戻っては来られないだろうし、俺もまた食料その他を奪いに行くので十分に邪魔が出来るだろう。


恐らく敵は此方の様にリアルタイムな通信手段を持って無いだろうからな。


作戦としては俺がゲートで、王宮の国王の寝室とその他の場所に第一騎士団からなる制圧部隊約1000名を送り込み王宮制圧後に、王都の治安部隊4000名を追加で送り込む。


そして、俺は早い段階で敵の王宮内に即時撤退の場合を見据えて固定式ゲートを築いてゲートセンターに繋ぐ。


これで、当面の攻防問題は解決する筈である。



尤も王都の主力である第一騎士団を出すので、旧騎士団の落ちこぼれである第ニ騎士団がここ王都を守る事になるのが多少気掛かりではあるが・・・。



尚、家の方からも5名を残し、10名の騎士を制圧部隊に参加させる事とした。


当主である俺が参加する為、騎士団長であるパパンは勿論お留守番して頂く事にして留守中の我が家を守って貰う事としたた。





5月に入って暫くした頃、敵国に潜入して居る諜報員より出陣の一報が入った。


今回も王都を5000人の兵が元気に出発して行ったらしい。


哀れなのは国王の気分次第で振り回される兵士達だろうな・・・。


とは言え、我が方もそんな敵国に振り回されて居るので微塵も同情する気は無い。


敵国の王家にまともな頭と常識を持つスペアが居れば良いが、果たしてどう言うオチになるのか? 今回ばかりは中途半端な決着では収めてはいけない。と俺は思う。


完全な属国化をするとして、どの程度敵国の王家の血を流す事になるのかがポイントだろうな。



出陣したと言う進軍中の邸部隊を上空から、歩みが遅いのにイライラしつつ連日監視をしている俺。


もっとチャッチャと歩かんかい!と隠密セットを展開して居る中で上空から小声で怒鳴る俺。 つまり絶対に聞こえない筈だけど、一応ね・・・。


何故なら、ある程度進んだ所で街道に障害物を作って復路の妨害してやろうと考えているからである。


普通に迂回しても渡れない様な大きな断層の様な亀裂とかが良いかな?


レベルアップもしたし、十分に魔力も増えたので、結構大掛かりな魔法も使える様になっったし、出来るだけアッと驚く様な邪魔をして王都に帰ろうにも帰れないぐらいにしてやりたいのである。



そんな感じに悪さを企み漸く1週間が経った頃の夜中に街道に10m幅深さ10m長さ200mの断層に見える亀裂を作ってってやった。


とても自然な感じでなかなか良い出来映えだと思う。


これを迂回しようと思うと街道脇の林の中を進軍する必要があるので、事実上馬車や馬も通行が厳しい筈である。まあその様に作ってやったんだけどな。これは相当に困る事だろうとほくそ笑む俺。


こうして、事実上、侵攻部隊を孤立させておいて、作戦決行の日を待つのであった。


国王陛下に上記の妨害工作の写真をみせつと、驚きながらも、非常に悪い笑顔で爽快そうに微笑んでいたのだった。



いよいよ作戦決行の日である。俺は我が家の騎士10名と共に王城の騎士団訓練場の広場に赴き時を待った。


漸く時差を考慮した夕暮れ時である。


「諸君、今回の奇襲作戦に参加してくれてありがとう!長年に渡るアグーラマ王国の遣りたい放題にケリを付ける時が来た。敵の城を制圧し、全員無事に帰って来て欲しい。」と国王陛下が声を上げると、


「おーー!勝利をアムール王国に!!アムール王国万歳ーー!」と声を揃えて歓声が上がる。まずは、王宮の謁見の間に500名、更に国王の寝室に30名、残りを王城の中の居たる場所にゲートを繋いで送り込む事となる。


時間が時間で通常なら国王陛下は寝て居る時間なので寝室に居る筈である。


俺の繋いだゲートで順にドヤドヤドヤと敵の王城に消えて行く100名の騎士達、固定式のゲートを設置してそして残りの4000名を敵の王都制圧で城下町に送り込んだのだった。

そして俺も国王の寝室に向かうと、既に取り押さえられて縛られた国王がそこに居た。


そして、次々と王族を捉えて拘束して廻り作戦開始から1時間も経った頃にはほぼ無血で制圧を完了していたのであった。



城下町の衛兵による抵抗は多少あったものの、絶対数が少ないので早々に武装解除して拘束済みである。


これは最早完勝と言って差し支えが無いのではなかろうか?



■■■



明くる日の朝、一挙に自国が敗れた事を知った王都の民達は意外にも爽やかな顔をしていた。



さて、俺の役目はこれからである。


件の進軍中の部隊の食料その他を奪取すべく夜になると、前回同様に『隠密セット』を展開して、荷馬車ごと回収して廻った。今回は多少工夫がしてあって、荷馬車に鈴が付いて居たが、俺の防音シールド内では意味が無い。


「残念だったね!」と面と向かって言えないが、今回は気持ち良く50台の荷馬車を奪取出来た。しかし、前回の反省の結果か、荷馬車の喪失の発見が早く、俺が潜んで見てる前で上を下への大騒ぎに発展してしまったのだった。


「おい、食料の荷馬車は何処に行った?」と詰め寄る指揮官。


「はい、目は離してませんが突如として忽然と消えました!」と真っ青な顔で叫ぶように報告する、警備兵。


これ、強ち嘘ではないんだよね。俺が光学迷彩を掛けて回収したから、彼にはその瞬間に消えた様に見えたって訳だ。


もっと早くに気付いていれば10台位は確保出来たかも知れないけれど、もう俺の『時空間庫』の中だから取り戻すのは無理だよ!! てか前回のも入れたまんまだったな。どうしよう? 国王陛下に聞いてこの国の国民に還元した方が変な抵抗とか無くスンナリ属国化出来るかも知れないな。


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