第325話 マジックバッグ発売への道 その2

さてマジックバッグ発売からの半年は非常に目まぐるしい物であった。

ジョージさんの所と家の『オオサワ商会』は今回の売り上げで一気にSランクにまでランクアップした。俺の方は特に最年少のSランクカード保持者となってしまい、本来目指していた冒険者ギルドのSランクより全くメインに考えてなかった商業ギルドの方が先にSランクになってしまうとは皮肉な物だな。と心の中で苦笑いするのであった。


勿論、パパンもママンも我が事の様に喜んでくれたけど、マジックバッグの完成品を貰ったパパンが一番喜んでいたのだった。


一応ママンにもマジックバッグを上げようとしたのだが、そんな高級品を普段持つとトラブルの元と言われて辞退されてしまったのだった。



さて、アムール王国内でマジックバッグが飛ぶ様に売れ、取り合いになったり乱闘騒ぎになったりで、良い意味でも悪い意味でも凄く騒動になった。


そんな訳で、発売したマジックバッグはアッと言う間に完売してしまい、中古市場では異様なプレミアが付く始末。


再販を望む要望が日々多くなり、て商業ギルド経由で熱いラブコールが多数入って来てオリバーさんからも頭を下げられる程である。


マッシモ程ではないが、アッと言う間にガガの街は『マジックバッグ発端の街』と言う事で王国中で有名になってしまったのだった。


どうやら、ガガの商業ギルドの方にはありとあらゆる方面から再販の圧が掛かっていたらしい・・・。


結局ジョージさんと話し合った結果、ウエスト・ポーチ型を廃番にして背嚢型のみのラインナップで再販する事が決定した。

只同型を再販するのでは面白く無いので今度のロットは色を変えてみてはどうだと提案したのだが、再販を見込んで同色の皮を既に集めてしまって居るとの事でジョージさんから泣きが入り、結局以前と全く同色同型となってしまったのだった。


その代わりと言ってはなんだけど、焼き印のみ『オオサワ商会Ⅱ』としてⅡ型と判る様にしたのであった。


尤も再販を考慮して部材を収集していたのはジョージさんだけではなく、俺もあの沼に通って既に500個以上の胃袋の在庫を持っているのだが、一気に作り過ぎると相場が崩れると言うか価値が下がるので再販するのは、ウエスト・ポーチ型を廃止した分を加算して200個のみとした。残りの胃袋ははⅢ型を出す時の為に取って置く事にしている。


と言う事で200個の限定生産でオリバーさんに回答したところで、今度はオリバーさんから泣きが入ってしまったのだ。


何でも、アムール王国の王宮の方から直接の注文と言う名の拒否権の無い発注があった様で、その数だけで300個だそうで・・・。


「どうします?ってどうやら拒否権無さそうな感じの所からのご注文ですねよね!?」と俺が言うとジョージさんとオリバーさんが頷くのであった。


結局、急遽更に増産する事になって、一気に500個全部のストックを使われる事になってしまい、またストックを増やす為に沼通いを始める事にしたのであった。


しかし、この時点で俺は失念して居た。


500個作ると言う事は魔方陣を500回書いて付与しなければならないって事を・・・。


ジョージさんの所から縫製の終わった背嚢が倉庫の作業場に続々と入って来るに従ってあわてて魔方陣を描き始める俺。


以前同様に1個仕上げるのに10分掛かるので500個となると約4日程掛かる訳で、その間殆ど缶詰状態で倉庫の中で寝泊まりしてエナちゃんが運んで来る食事を取って、只管魔方陣を描き込んで行くのであった。

労基に真っ向から喧嘩を売る様な体勢で作成を行ったのだった。


この4日間でエナちゃんと仲良くなれたかって? いや・・・全くだよ。


本来ならもっと無理の無いペースで作業するつもりだったんだけど、ジョージさんの所の縫製に遅れが出た事とコスが多い事で一気に皺寄せがおれの所に掛かってしまってね。


王宮の方の納期が結構タイトだった事もあっていっそ面倒だから泊まり込んじゃえ!ってなったんだよ。


まあその気になればゲートで帰れるんだけど、その為にはゲートが使える事をバラさないといけなくなるし、秘密を余計に広めない為に泊まり込みを選んだと言う訳である。


漸く4日間が過ぎて倉庫から解放された時には太陽が黄色く見えた程である。

仕上がった物を全てジョージさんの方に任せ漸く俺はお役御免となったのであった。


そんな訳で、ジョージさんの所の焼き印押し作業も無事に終わって全てをやっと商業ギルドの方に納品し終わり、オリバーさんに


もう当分はマジックバッグを見たくないので当分は追加しないと宣言した為、不思議な事に1個当たり6億ウニーだった前作より高くなり7億ウニーでの販売となった・・・。


前回同様に半々に売り上げを分けたので、家の儲けは1750億ウニーと言う馬鹿げた金額となったのであった。



これで漸く通常の生活に戻れたのであった。


久々に自宅に帰ってみると妹のマリーが拗ねてしまっていてご機嫌を取るのに数時間一緒に遊んでやったり結構大変だったのだった。



■■■



翌日からは元通りに沼通いを再開し、久々のヒュージ・フロッグ狩りを楽しんだのであった。


とは言え数日間日々の訓練をサボっていたので身体がちょっと鈍っていて調子を戻すのが大変であった。



3日ぐらい日々の訓練をやって漸く何時もの調子を取り戻し、動きにキレが戻った。



久々に冒険者ギルドに行くと、ガラコさんに捕まって、ヒュージ・ボア狩りを強請られて体調も戻った事もあって快諾して置いた。



この世界の季節の事を話しておくと、ここガガには四季があり現在は秋である。


どうやら、ガラコさんの思惑では今期最後のヒュージ・ボアを仕入れておくと言う目的があるらしい。



そう言えば最近ヒュージ・フロッグの量が少ないのは季節も関係して居るのかも知れないな。


最近はあの鬱陶しかったキラー・ドラゴン・フライもメッキリ数を減らし寂しい感じになって来ている。

魔物が冬眠するのかは不明だが本当にあの500個はギリギリで当分の間は作りたくとも材料が無くて作れないと言う感じになったな。


冬になる前に王都への旅に出たいが間に合うだろうか?と頭の中で考えるのであった。



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