第315話 ランクアップ試験
いよいよである。待ちに待ったDランクへのランクアップ試験を受けるチャンスを得る事が出来た。
EランクからDランクへは前記の通りランクアップ試験を受けて、その実力を示す必要がある。
試験の内容は割と簡単で、試験官と試合をしてその実力を示せば良いだけである。
基本はこのガガの街のAランク冒険者であるパパンが受け持つ事が多いのだが、実の息子の試験を担当して合格を出すと、依怙贔屓だ!不正だ!と騒ぐ奴も居るので隣町から試験官として、Bランクの冒険者を特別に呼ぶ事になったらしい。
尤もそれでホッとしたのは俺で在る。
もしかしたらパパンもそうかも知れないけど、ウッカリ完膚無きまでに完勝しちゃうとパパンの世間体が非常に悪くなって仕舞う。
訓練時の勝率は最近俺の身体強化を使わなければ、4回に1回の勝ちくらいだが、身体強化を使うと、ほぼ五分で、良い勝負となる。
ランクアップ試験は殺さず障害の残る怪我をさせないって言うルール以外は何でも有りなので、そうなると、パパンも油断してると、大勢の観衆の前で無様に11歳の息子に負けて仕舞うと言う恥を晒してしまう事になるのだ。
かと言って、俺も手を抜け無い大事な試験なのでどうしようかと悩んでいたのだった。
そうそう、その隣町から来るBランクの冒険者はこっちに来る序でにAランクのランクアップ試験をパパンから受ける事になっているらしい。
つまり、行き掛けの駄賃では無いが、持ちつ持たれつって両方の街のギルド間で話が着いているらしい。
ちみに、ガガの街のBランクの冒険者は居るには居るのだが、王都までの長期護衛依頼で現在不在なので今はAランク冒険者を除くとCランクしか残って居ないのだ。
王都かぁ~。一度は見に行って見たいけど、やっぱ王都なら、まだこの街で見かけない米や醤油や味噌なんかにお目に掛かれるだろうって思うんだよね。
早くCランクまでになって王都に行くぞーー!と心の中で拳をウォーと突き上げる俺であった。
と言うのも、まだまだ在庫はある物のこのままコッソリ街の外で今の在庫を食い尽くしてしまうと、俺の食生活が死んでしまうからである。
そうそう、アリーシアの作ってくれたお弁当は大事に残して置いてここぞと言う場面で食べるつもりで取ってあるのだ。
■■■
さあ、いよいよ、ランクアップ試験の当日である。
一昨日に隣町のヤールンから、Bランクの冒険者のドリーラムさんがやって来た。
ドリーラムさんはなかなかのイケメンで、年の頃は25歳前後だろうか?結構な使い手に見える。
昨日はまず、ドリーラムさんvsパパンのドリーラムさんのAランクアップ試験が行われる。
勿論面白そうなので野次馬根性丸出しで見に行ったんだけど、パパンと違う流派なんだろうけど、それでもなかなかに強く、結局決着着かない内にAランクの実力ありって事で判定が出て引き分けのままに終わってしまったが、終わり掛けにパパンがドリーラムさんと握手しながら、
「そうだ、ドリーラム、明日は家の息子のDランクのランクアップ試験を担当して貰えるらしいが、一応忠告させて貰うと、11歳のEランク相手と思って手加減なんて考え無い方が良いぞ。正直、実の息子のランクアップ試験と言う事で相手をせずに済んでホッとしているのだからな。
ウカウカしなくても、全力でヤラないと、俺も5回に1,2回は負けて仕舞うから気を抜かないでくれ!」と真剣な様子でコソッと耳打ちして居た。
おいおい、パパン、それはないぜ! 明日の折角のビックリイベントを潰すなんて・・・。と心の中で突っ込む俺であった。
そう言えば、最近メッキリ俺との模擬試合をしなくなったのは、もしかしてそう言う事なのか?
言われて見れば妙に鍛錬時の模擬戦を何だかんだと断られて居る様な気がする俺だった。
確かに俺もコータにボロ負けしちゃうと、ちょっと辛いかも知れないな・・・。
確かにきもちが判るだけに今度から少し模擬戦を強請るのを止めようと心に誓うのであったが、もう既にトラウマになって居るかも知れないな。
翌日になって、気分も体調も絶好調で早朝から裏庭で、うウォーミングアップを行って初心に戻って型と素振りの日課を熟した後、朝食を取って意気揚々と冒険者ギルドまで出向いて行くと、
何時もの様に今日はギルド裏の訓練場にガガの街の冒険者が集まって居り、俺がランクアップするかしないかで賭けを始めていた。
まあ賭けをして居る見物人の冒険者の大半は顔見知りで俺がAランク冒険者のラージの息子って知って居て『合格する』に賭けてくれて居るのだが、全員が全員そう言う好意的な目で見る者ばかりでは無く、
所謂俺のバックボーンへの妬みから来るアンチが存在し、そう言う者達は嫌らしい下卑た笑みを浮かべて『不合格』に賭けて居る様だ。愚かな奴らめ。
ハッキリ言って、ギルド貢献度が足りて居てこれが例えCランクのランクアップ試験であったとしても合格する自信は密かにあったりする。
普通なら友達が応援に駆けつけてくれたりするんだろうけど、ライダン君もお下げ髪の可愛いエナちゃんもそう言う冒険者関連の様な野蛮な事は嫌いな感じで小さい頃こそ、一緒になって石を的に投げて投擲スキルゲットを目指して居ると思ったんだけど、所謂『音楽性の違い?』って感じに進む道の方向性の違いでいつの間にか離れて行った感じなんだよね。
そんな訳でやはり同じ道に進む同世代の友達は居なくてボッチのままと言う塩っぱい状態なのである。
別にライダン君、エナちゃんが俺抜きで兆ラブラブとかでも悔しくなんか無いんだからね。
精神年齢は前世入れると37歳位?前々世まで入れると、もうアラフィフじゃん。ガキンチョ同士の好いた惚れた等等に卒業よ。
まあ、ガキンチョ相手に真剣に恋を語った時点でヤバイ奴認定で通報待った無しだけどな。
朝食後、パパンと一緒に冒険者ギルドギルドへと歩いて行く。
「ああ、なんだ・・・まあ流石のトージでも緊張してるかも知れないが、いつも俺との模擬戦通りにやれば合格は間違い無い。寧ろ、怪我だけは『させるな』よ!!」と俺に注意とも忠告とも取れない微妙なアドバイスをくれたのだった。
「だって相手はなりたてとは言えAランクでしょ?そうそう簡単に怪我なんてしないでしょ?」と俺が言うと、そんな俺の内心を見透かした様に
「だってお前、今日勝つ気満々じゃん。相手は折角なったAランクなんだから、華を持たせてやれよ!大人げないだろ?」と子共の俺に暗に勝つなと言うのであった。
「まあ、余裕あったら考えとくよ。俺もお父さん以外と模擬戦スルの始めてだし、加減が判らないからなぁ~昨日の試合見た感じならソコソコまでは大丈夫だと思っているんだけど、頑張って加減してみるよ。」と返すのと冒険者ギルドギルドに到着するのがほぼ同時であった。
「お!来たなトージよ。裏の訓練場で直ぐにランクアップ試験始めるぞ!」とガラコさんがニッと笑って居た。
「どうもです。今日は宜しくお願いします。」と挨拶をして、パパンと別れ俺1人で裏の訓練場へと足を運ぶ。
もう既にスタンバって居た、ドリーラムさんに、
「おはようございます。お待たせした様で申し訳ありません。」と言って頭を下げた。
「ああいや、俺が早く来過ぎただけだ、気にする事はないぞ、」と何でも無いと言う様に顔の前でての平を振った。
遅れてパパンとガラコさんがやって来て、
「ではこれからトージのDランクのランクアップ試験を執り行う。判っていると思うが木剣を使って行う。相手に障害の残る様な怪我や死亡させる様な事があると冒険者■が剥奪となる可能性があるので故意に大怪我をさせる様な攻撃は控える様に。それと、大怪我にならない様な魔法は使っても構わない。良いか?」と言う注意事項が告げられて、手に持った木剣を片手にに開始の号令を待った。
「始め!」と言うガラコさんの号令と共に、身体強化を使ってフル加速して、木剣にもフォース・フィールドを纏わせて思いっきり横になぎ払うとバキンと鳴って一撃でドリーラムさんの持つ木剣が中腹から折れ飛んだのだった。
「待て!」と素早く止めの号令が入り呆気なく俺のランクアップ試験は『合格』で幕を閉じたのだった。
ドリーラムさんは折れてしまった木剣を唖然として見て苦笑いをして居たのだった。
「ドリーラムさん、試験ありがとうございました。」と頭を下げてお礼を言うと、
「トージ君だったね、君本当にお父さんの言う通り強いね。ビックリしたよ。これでEランクとか・・・いやDランクでさえランク詐欺だな、直ぐに上に上がって来るんだろうな?待ってるぞ。」と言って握手をして別れたのであった。
その後俺は新しくDランクに更新された銅製の冒険者ギルドカードを貰ってご満悦。
家までの道中、パパンから
「お前えげつない事をするなぁ~。
怪我をさせるなとは言ったが、まさか全く試合すらさせないとは・・・我が子ながら末恐ろしいよ。ガハハハ。」と
お褒めの言葉とも何とも言えないお言葉を頂き、バカ笑いされたのであった。
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