第196話 明日の為の実証実験旅行 その1
さて、幾ら光学迷彩で見えない状況だとは言っても、まだベッテルン上空である。
既に俺が発端のゲートセンター辺りの騒ぎは収まって居り平穏な運行が行われている。
俺もこうしちゃ居れんと気を引き締め直し、直ぐに東を目指し滑空に入るのであった。
眼下には長く伸びる余り整備されて居ない街道が在り、そこそこの往来はある。
よくよく考えると、件のテロの報復で頭に血が登っている時に帝都を目指し飛んだだけで、今の様に冷静な旅行モードで飛んだ事が無かった事に今気付いたのだが。、こうして見ると街道の路面状況はしょうがないとしても、治安はそんなに悪く無い事に気が付いた。
一応商会等の竜車には護衛の冒険者が付随して居る様だが、戦闘状態になっているのを全然見かけないのだ。
盗賊が少ないと言う事は善政を行って居ると言う事のある種のバロメーターであろう。
なんせ、この世界、盗賊の大半は食い詰めた農民上がりが多かったりするのだ。そして其奴らを率いるのは大抵が冒険者崩れである。
つまり、農民が食い詰めない様な司政を行っていると言う事で、下っ端の兵隊がいないと冒険者崩れも盗賊として勝負に出難いと言う事で徐々に流れるか単騎でヤって返り討ちに遭うかだ。
冒険者崩れに単騎で盗賊やれる程の実力があれば、あそもそも『冒険者崩れ』に堕ちて無いって事だ。
だから、何が言いたいのかと言うとだ、「ヤルじゃんヘンリー君!!」って事だ。
この時の俺は知らなかったが後日ヒョコッとマッシモの自宅に現れたジェシカにそれとなくヘンリー君の司政を褒めたのだが、意外にヘンリー君の強かさを知って愕然としたのであった。
何を下かと言うと、ヘンリー君は『魔王』を全面に打ちだして、禄でも無い行政をしていた貴族を黙らせて粛正しまくった。
つまり『
お取り潰しや降爵をチラつかせ、世代交代や分家と本家の入れ替え等で、
『・だ・か・ら』あのベッテルン伯爵が土下座の勢いだったって事も在る訳だ。
もう、勘弁してぇ~!!!
酷い風評被害である。断固棄損された名誉を責任持って回復して欲しい。
ジェシカに婚約者へのクレームを付けると、
「でも師匠、そんな家系だけの愚者ってお嫌いでしょう? どうせ居ない方が民が幸せになるなら、ここは真にお優しい魔王として望む処なんでは?」と切り返して来てぐぬぬと唸って結局有耶無耶に。
◇◇◇◇
1時間半の飛行で何事も無く国境上空に到達し、一瞬どうしようか?と迷ったが自分の格好を思い出し、面倒事の匂いしかしないのでそのまま領空侵犯して蕪辞に不法入国。こう言う時の脳内BGMってやっぱり、
そう言えば地球では結局1回も海外旅行行かず仕舞いだった・・・。
まさか初海外旅行が異世界だったとは本当に驚きだよな!
しかも、今回は
さあもうここはグランデ王国だ!帝国上では魔王で居るべきだが全くしらないここグランデ王国では普通に冒険者トージで良いんじゃ無いかって。
その方が気軽に飲み食い出来るし。早くも先の方に最初のグランデ王国の割と小さい都市が見えて来たし、一旦着替えようと魔の森の小屋にゲートで移動して着替えてホッと一息付いて休憩を取ったのだった。
そして、一旦アリーシアに状況報告の連絡を入れて、先の都市に入った後にちょっと散策してから今日は帰るよと『帰るコール』予約をしてから、街道上空に戻って滑空を再開したのだった。
小さい都市って言ってるが、最近俺の中の都市の大小の比較基準がバグってしまっているのでアレだが、そうだな、旧マッシモの半分程度のサイズと言えば判り易いか? そうだねぇ~・・・旧マッシモって渋谷区ぐらいじゃないかな? 詳しくは知らんけど。
城門が近くなる前に、地上に降り立ち、普通に歩いて城門へと向かうと衛兵から身分証の提示を要求された。
冒険者ギルドのSランクのカードを見せると驚かれてしまって、珍しいのか他の衛兵まで呼ばれてワイワイと取り囲まれてしまった。
これってパッと見、心証悪いよね? 何か問題あって取り押さえる為に取り囲まれてるって思われるんじゃなかろうか?
「おっと、引き留めちまって申し訳ねぇ~、すまんな。Sランクの冒険者カードなんて滅多にお目に掛かれる物じゃねぇ~からよ。」と最初に声を掛けて来た衛兵のお兄さんが謝り筒カードを返してくれて、
「ようこそ、ガルゲートの街へ」と言って場内へと手で誘導してくれたのだった。
ふぅ~。焦らせるんじゃないよ・・・。と掻いてもいない額の汗を拭う仕草をしつつ、キョロキョロとグランデ王国初の街を見回す。
初めて訪れた時のマッシモより綺麗ではある。 しかも結構活気があって、出店や屋台も多い。
何が楽しいって祭りや正月の初詣時の屋台や出店程ワクワクする物はない。
例えるなら、高速道路で立ち寄ったサービスエリアってかんじだろうか? ここの場合、街一つがSAなのだ。
この世界で屋台と言えば肉串は定番と言う事で、挨拶代わりに1本行っとく。
「オジサン1本頂戴!」って声を掛けると、「あいよー!1本銅貨5枚だ。」と言われ、ハッとした。
「あ、お金、在るけど、帝国の銅貨でも良いかな?」と聞くとニヤッと笑って「おお、それは嬉しいな!良いぞ」と喜ばれてしまった。
肉串の味は、可も無く不可も無くで、実に普通の塩のみの味付けのホーンラビットだった。
そして気を良くした屋台のオヤジが少し良心が咎めたのか先程喜んだ理由を教えてくれた。
まあ聞かなくとも多少は推測して居たが、予想通りに通貨価値の優劣で実際のレートに差が在るらしい。
2倍とまで言わないが帝国の銅貨5枚はグランデ王国の銅貨7枚近い価値が在るのだそうだ。
米国のドルが発展途上国で重宝がられるのと同じか?
「兄ちゃん、悪いからお釣り変えそうか?」と進言して来たので、
「いやいや、構わないよ。逆に良い事教えてくれたんで、その礼と思っててくれ。」と笑顔で返すと「ありがとよ!」と良い笑顔で言ってくれたのであった。
って事は1.4倍くらいの価値って事か?
ちなみに、ローデル王国とバッケルガー帝国の貨幣価値のレートは1:1である。
これはヘンリー君の代以前からであるが特にヘンリー君の代で完全に
お陰で俺は帝国でも王国の貨幣を両替する事無く使え非常に重宝して居るのだがな。
ここでは、多少俺が損をする事になるが、言う程では無いし、特に両替して余計な貨幣を増やしちゃうと、邪魔だし良いかな。
さあ、みんなへのお土産を見て廻ろう・・・と意欲的に散策を始めるのであった。
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