第194話 明日の為の基礎技術開発と改良 その3
さあこの通信機を携帯電話として普及させるに於いての問題は如何にして電話番号と特定亜空間と関連付けるか?である。
大掛かりにしても良いのなら、交換機ならぬ亜空間コールセンター的な問い合わせサーバーみたいな物を設置出来るけど、それを維持するのはもっと大変だ。
もっと別の手段か・・・何気にさ、亜空間を通した糸電話って考えて魔力線で音声を相手側の携帯に届ける? いや、だから、それだと上手く相手の携帯を特定出来ないし、着信を知らせるイベントが無いのか。
う~ん難しいのぉ~。何気に元の世界のあの携帯ってシステムは良く出来ていたんだな。 流石にバカ高い料金を取っていただけはあるな。
そもそもだが、このイヤリング型のアーティファクトだが、一体どれ位の距離まで届くのだろうか?
これ自体は微々たる魔力の魔石ベースだから1分の通話1度キリだが、付与すべき魔方陣が判った今、コピー品を作って飛距離テストは可能である。
今回のこの携帯プロジェクトの開発方針を固める前に、コピー品でどの程度の距離まで通信出来るのかも含め検証してから、コールセンター方式にするのか、簡素な直通方式を採用するのかを決める方が無難だな。と言う事に気付いたのだった。
早速、イヤリング型のアーティファクトからコピーした魔方陣を使って携帯擬きを数セット作り、裏面に1から順に番号を刻んで行った。
中の魔石自体はゴブリンの物に換えて居るので、
そんな訳で準備を済ませた翌日、俺は朝から旅に出る。
勿論、毎日帰って来るから、基本日帰りなわけだが、帝国に行って一番王国から離れた都市に移動後、自力で飛んで距離を伸ばしてテストの予定だ。
まあ、さいしょに王都に行って、次に帝都・・・行く先々で都度通話テストするのだが、マッシモ王都間で通話出来ないと、このテスト自体全てご破算である。
よもや、マッシモ王都間ぐらいの距離さえ駄目って事はないだろうと高を括って居るが、いざとなると、異様にドキドキする物だ。
折角だから通話テストで話す相手は、アリーシアにお願いする事にした。
まずは、部屋の外から俺の作ったコピー品を起動して、
「もしもし!アリーシアと話し掛ける」と、携帯の向こうから、聞き慣れた綺麗なアリーシアの声で「はい、トージさん、貴方のアリーシアです!」と可愛い返しが聞こえて来た。
「ああ、聞こえたよ!良いなこれ!傍に居るみたいで、寂しくないよ! じゃあこのまま王都にいったん移動するのでそのままね!」と言ってゲートで王都の自宅へと移動してみた。
「今王都の自宅に移動したけど、大丈夫かな?」と聞くと、
「はい、先程変わらずに良く聞こえてますよ!」と応えるアリーシア。
そして今度は帝都までゲートで移動して、帝都上空に展開したフォース・フィールドの足場の上でアリーシアに声を掛ける。
「今帝都上空だよ。どうだい?さっきと変わらないかんじかな?」と聞いてみたが、全く問題も無く音声も変わらぬままとの事だった。
「よし、了解。ちょっと、帝国内の一番遠くに移動してみるよ。一旦『魔王』に
王都の自宅に戻って魔王にチェンジして久々に予定に無い皇城詣でをすると、俺を発見した近衛騎士が驚きつつも、ヘンリー君達を呼んで来てくれたのだった。
「これは魔王様!今日は如何されましたか?もしや、我々の願いを察知してくれたのですか?」と良く判らない事を言い出すヘンリー君。焦臭い匂いがプンプンする。
「あ、いや、ちょっと尋ねたくて来たのじゃ。別にお主らの面倒事の解決に来た訳じゃないぞ。」と俺が先制を打って征するとあから様にガックリと項垂れるヘンリー君。
「して、ご質問とは何でございましょう? 我々で判る事であれば、何なりと。」と言ってピシッと姿勢を正して聞く態勢を取るヘンリー君。
「いやのぉ~。先日お主達から貰ったアイテムを我の知り合いの錬金術師に渡しての。調べてもろうて居ったんじゃ。それで、そやつからテストに狭量して欲しいと言われてのぉ~。出来るだけ王都から離れた場所・・・出来ればこの大陸の海岸線ぐらいまで行けると良いのじゃがな。そんな訳で、王国以外の周辺酷の情報や王都から一番離れた帝国の都市の名を教えて欲しいのじゃ。」と聞いて見た。
「なる程、そう言う事でしたか。でしたら、都市ベッテルンが帝国最東の都市となり、さらにその向こうがグランデ王国と言う国でして東に行くと階段線がございまして、一応我が国とは一応交易がございます。」と地図を見せてくれて教えてくれた。
帝国自体も北に登って行くと海があるが、王都とはそんなに離れる方向では無いので今回はパスと言う判断だ。
「なる程、ありがとう。感謝するぞ! して、何か困り事でもあったのか?」と止めときゃ良いのに思わず親切に教えて貰った代わりにポロッと聞居てしまう迂闊な俺。
すると、「ああ、聞くだけでも構わないですが、ご相談させて頂けると大変にありがたいです。」と嬉し気に振る尻尾が見えそうな勢いのヘンリー君。
聞くだけ聞いたが、やはり聞かなきゃ良かった・・・。
何の事はない、綺麗になった城壁に合わせ場内の道路や下水等のインフラ工事を行いたいって事らしい。
何でも、先日見た王都の場外の拡張エリアの道路等の美しさに心を奪われたとか・・・危ない危ない。作品を褒めてくれるのは正直嬉しいのだが、あれと同じレベルをここでもやれと言われると厳しい。
ってあれが俺の仕業とはバレて無いようなのでちょっとホッとしたけどさ、ここ帝都も結構広いから、滅茶滅茶時間掛かりそうだし、しかも、既存の建物あるから拡張エリアの様に真っ新な所を好き勝手にやるのとは訳が違うのだ。
なのでピコーンと言い訳が思い付いた俺は、
「済まないが、既存の建物等が在って入り乱れている部分の道路工事はとてもじゃないが非効率的なので俺には出来ないし、例え建物が無いにしても、今はそれ処じゃ無く忙しい故に無理じゃな。来て居に添えなくてすまぬな。」とキッパリと断ったのであった。
やはり、断られるのは判って居たようだが、捨てられた子犬の様にショボーンと萎れたヘンリー君がちょっと可哀想に思えるのであった。
イヤイヤ、ヤラ無いよ!!! 幾らショボーンとしてても、それとこれは別。
そんな何ヶ月も『また』この格好で帝都工事とかシャレにもならんし。
それに!! もうそろそろ、第二子の出産時期なんだよね。
やっぱりさ、男の俺には何もしてあげられないけど、それでもアリーシアの傍に居たいし居てやりたい訳さ。 気は心って奴だよ。
と心の中で色々思っていると、いつの間にか持ち直したヘンリー君に
「了解いたしました。そりゃあ、お忙しいですよね。ではまたお聴きしたいことが出来たらご助言頂けると助かりますので宜しくお願い致します。」と意外に拍子抜けする程にアッサリ引き下がってくれたのだった。
と言う事で、欲しい情報も得られた上に先方の無理難題も諦めさせられた事で、心の中で盛大にホッと息を吐いたのは言うまでも無い。
そして、俺は、教えられた通りに帝都のゲートセンターから、帝国最東の都市ベッテルンへのゲートを潜って、ベッテルンに足を踏み入れるのであったが・・・。
この魔王コスである・・・知らないベッテルンのゲートセンターの衛兵から槍を構えて周囲を取り囲まれて、ヘンリー君から貰った件のメダルを見せて解放と言うか警戒を解かれるまでに30分以上を有し、
更に騒ぎを聞き付けて駆けつけて来たベッテルン伯爵が土下座を線ばかりの勢いで頭を下げられて、一触即発とは真逆の意味で修羅場っぽくなっていた(無駄に時間を取られた)のだった。
屋敷でお詫びも兼ねて持てなそうとするベッテルン伯爵を宥めてヤンワリと断って、グランデ王国の方向と道を聞いた後は「ではこれにて!」と言い残して、光学迷彩で姿を消した後に空へと移動してから、フォース・フィールドの足場の上で
アリーシアに電話を掛けるのであった。
魔石をゴブリンの物に換えただけで、1分処か、既にトータルで10分以上、通話出来て居るのだ。
まるで初カノを作った高校生の様にホクホクしながら電話するという初体験を遅まきながら味わう俺。フフフと思わず笑みが漏れるのであった。
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