第155話 王国全土スカウト・キャラバン

広がるゲート網の恩恵で王国も帝国も景気は鰻登りらしい。


今までよりもマッシモに来易くなった事もあって王国全土から人々が訪れる様になった。


勿論マッシモの目玉である魔法学校の見学や魔法学校に通う子供に会いに来る親や親類であったりと、様々であるが、

マッシモを訪れた者は決まって俺の所のアンテナショップで食事をして唸り、懐に余裕のある者は焼肉屋に行って絶叫し、滞在を延長して日を変えて焼肉だけで無くすき焼きやしゃぶしゃぶまで堪能して行くのだ。


そしてそんなお客の中には勿論他の領の領主様も含まれており、是非とも我が領にも支店を!と懇願して来るまでが一連の定番セットとなっている。


まあ俺としては人物的に悪く無い領主の下であれば支店を出すのも吝かでは無いのだが、如何せんスタート時よりは人員が増えたとは言え、まだまだ余所に支店を出す程の余力がないので、無理な相談である。


ゲート網開通以降そんな日々が続いていたのだが、マッシュら一期生から引き継いでアンテナショップを任されている第二期生のラクートとパトリシアから珍しく提案を受けたのだった。


現在も尚来店するお客さんからの他領での支店開店の要望が多いらしい。


すると、その話題にジェキンス達焼肉屋組が乗っかって来て、彼らのとこでも同じ様に日々要望されるらしく、「オーナーに伝えて置きます。」と躱しては居るが、やい客数の増えた最近ではそのやり取りさえ面倒になりつつあるらしい。


まあ焼肉屋に関しては客層がかなりの富裕層に絞り込まれるので、果たして地方都市レベルの集客数でペイ出来るかが怪しいと思っている。

やはり支店を出すからには数ヶ月で赤字閉店とか格好悪いし、避けるべきだよね。


まあ支店展開するとすれば、アンテナショップの方だろうね。

あっちは焼肉屋程のボッタクリ価格帯じゃないし、非常に良心的な価格設定にしてあるからね。


まだ誰にも言っては居ないけど、実は他にも出したい店もあるんだけど、人手不足で未着手なだけなんだよね。


毎年マッシモの孤児院の卒園生は全部我が商会が頂いているんだけど、それだって、、未来永劫に安定供給って言うと聞こえ悪いけど無尽蔵に卒園生がいる訳じゃ無いんだよね。


幸か不幸か、マッシモの孤児院の年間の新入孤児数はやや減少方向で、後数年すると卒園生が居ない年がやってきそうなんだよね。


いや、両親が居なくて不幸な子供が減るのは良いんだけど、人員増強が出来ないと『オオサワ』商会としては大問題なんすよ!


「提案は判るけど、今でさえ人手不足だからなぁ~。他領に出す店の分まで人員確保は難しいんじゃないか? まあ領の規模にもよるけど、やるとしたら、『アンテナショップ(オオサワ・レシピの店)トージ飯』の方のみだろうな。王都ぐらいなら焼肉屋でも集客出来るかも知れないけど地方だとあの値段じゃ払えないだろう?それに肉の供給量の問題もあるから、焼肉屋は無理だな。」と俺が答えると、第二期生の方から手が上がった。


「どうした? 遠慮無く発言して良いんだぞ?」と言うと普段引っ込み思案なヨハンが怖ず怖ずと喋り出した。


要は他領でもその領に支店出す出さない関係無く、可能であれば孤児院の子にチャンスを与えて欲しいと言う事だった。

マッシモ以外の孤児院がどうなのかは知らないけど、


ヨハン曰く「僕らは本当に一生分の運を使い果たしたと言われても納得してしまう程に恵まれて居り運が良い。だけど、それが非常に幸せ過ぎて他で苦労して居る孤児院の子が居るならと心苦しく感じる事がある。今が幸せなだけに。」と言い切るヨハンの意見大きく頷く子供達。


なる程、本当に心優しい子らである・・・。


「そうか、余所の領の孤児院からも募集すれば良いのか。 それはアリだな。 うん、可能だぞ。まあお前達も含み、無条件じゃなく、性格のねじ曲がった奴や真面目に働く気の無い奴は雇わないがそれは理解してくれよ。」と答えて前向きに他領の孤児院にも求人のアプローチを掛ける事を決心したのだった。



ほら、先日商人ギルド経由で王国全土の孤児院に資金援助の寄付をする事にしたからね、結構タイミングが良い訳だ。


今なら、各地の孤児院の院長?司祭様にも寄付をした真っ当な『オオサワ』商会って名前が売れてる可能性大だしね。


そんな訳で『王国全土スカウト・キャラバン』と言うどこぞで聞いた事在る様なプロジェクトを立ち上げて、第一期生のクリスとアーニーの男女コンビで『オオサワ』商会のリクルーターとして廻って貰う事になったのであった。


一応2人には商会長である俺の親書とマッシモの孤児院の司祭様から書いて頂いた紹介状を持参して現地の孤児院の院長?司祭様の信頼を確保する予定である。


必要があれば、俺も挨拶に出向くと先の親書に書いてある。


まあ、何処で店を出すにしても、一度ここマッシモで、色々と修行と言うか覚えて貰う必要があるので暫くは研修漬けである。


勿論、研修中も給料は払うし、新築の宿舎も空き部屋だらけなので大丈夫だ。



俺が快諾して動きも早かった事で不安気に提案した二期生も他の子らも心の支えが取れた様にホッとした表情をしていた。


その後の夕食では、嬉し気に普段より良く食べていたよ。



リクルーターとなったクリスとアーニーは、魔法も使えるし、身体強化も魔装も使えるので、其処らの大人や冒険者よりも確実に強いが、万が一と言う事もあるので護衛を付けないと言う選択子はなく、念の為冒険者ギルドに依頼を出しCランクの男女混成の4人組パーティー『草原の猫』を護衛として雇ったのだった。


クリスとアーニーは「そんな心配してくれなくても大丈夫だよ! もうトージ兄ちゃんは過保護なんだから・・・。」と照れ臭そうに口ではボヤいていたが、実際には過保護にされるのも、満更ではないみたいだった。



幾らシッカリしているたって、まだ日本で言う所の中学生位だからな。そりゃあ、過保護にもなるさ!


さて、出発の朝、マッシモのゲートから、護衛の『草原の猫』と子供らと一緒に念の為に王都のゲートステーションまで見送り序でに同伴する。


子供らは俺のゲートや新旧の自宅のゲートの魔動具を使った日々の通勤で慣れては居るが、『草原の猫』はこれが初めての初ゲートである。『借りてきた猫』状態になられても困るので念の為に付き添っているのだ。


余談だが、この『草原の猫』のパーティー名の由来は恐らく、このパーティーメンバーの中核を担う猫獣人の弟妹が由来だと思われる。

俺はこの『草原の猫』の兄妹を見てこちらの世界で初めて獣人に出会った。


最初に冒険者ギルドで引き合わされた際、ピコピコ動く耳を思わずガン見してしまい、更に思わず尻尾は?と不穏な挙動不審で兄の方の顔がやや引き攣っていたのはドンマイである。

一応、「申し訳無い、獣人の方に会ったのが初めてで。悪意は無いのでご容赦を。」と直ぐに謝罪して置いたし・・・セーフである。


今回この『王国全土スカウト・キャラバン』では、全ゲート網を利用する可能性が高いので、人数分のフリーパスを購入してある。


このフリーパス、俺がジェシカ経由で提案したこの世界初のフリーパスで、期間中は何度使っても無料になると言う物であるが、それなりに良い値段がするので、余程の富裕層や商会でなければ購入しないと思われる。


更にこのフリーパスは、盗んだ物を他人が使おうとしても登録魔力と違うと無効なので使えないのでセキュリティも万全である。


つまり他人フリーパスが使えないので使い回しは出来ないのでちゃんと収益を取り損ねない様になっているという事だ。


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