第107話 サンダーボルト作戦
さあ第52階層である。
昨日顔を出して安心しきった理由は目の前に広がるオーシャンビュー。
青い空と青く澄み切った綺麗な海。
どうやらこの高台を降りれば海岸線に出るみたい。
一応、念の為上空に昇って上から見下ろして周囲の状況確認と下層への階段探しだが、初っ端から躓いた・・・。
何と、ここ海のフィールドの真っ只中に在る割と小さい孤島っぽい。
海辺の近くのフィールドかと思ったのに、まさか、周囲を海に囲まれているとは予想外であった。
勿論ザッと見渡し限り、階段なんて無い。
どうやらこの狭い島の中から・・・どう考えても杣の内部にはそんな気配も無くて、この島自体には無いと思う。
俺は一旦地上に戻って、波打ち際の砂浜にやって来て、ジックリ観察していると、砂浜の波打ち際の辺りに石畳が在る事に気付いてしまった。
どうやら、この石畳が正規のダンジョンのルートと言う事なのだろう。
海の中でも風魔法のシールド内に空気の清浄化を行ってやれば恐らく息をする事は可能だろう。
只、水中では思った様な動作も攻撃も出来ないだろうから、何時も以上に魔装を強化しよう。
剣等の海水に浸けるべきで無い装備を海岸で一旦収納して、海パンでは無く、この世界の標準的な男性用下着にブーツと言う、変態紳士に変身して、静々と波に揉まれつつ石畳の上を海中へと進むのであった。
海中を歩く・・・これは本当に酷く歩き辛いし波に押し戻されたり波に引かれたりして、ヨロヨロしてしまう。
こんな調子で襲って来る魔物と戦闘とか無理としか思えない。
魔装だけでなく身体強化も通常の2倍くらいの魔力で強化しているが、そもそも、この海底を歩くと言う発想が駄目なんじゃなかろうか?
以前使ったジェット水流を推進力に水中モーター的な感じに泳ぐと言うか魚雷に様に突き進めば良い気がして来た。
一旦おぼつかない歩みを止めて水中で手を前に伸ばして横にうつ伏せの体制になって風魔法のシールドではなく、魔装自体を魚雷の様なはまき型にして、足の裏(ブーツの底)からジェット水流を噴出するとこれまでのヨタヨロとは違いシュイーーンって勢いで石畳の上をトレースして行けた。
これは、良い!
もっと早くに気付けば良かったよ。
順調に素進み出した訳だが移動速度の上昇に伴って早速最初の魔物がソード・フィッシュというカジキマグロの様な長い槍の様な角を備えた魚の魔物である。
しかも魚群状態で俺に群がって突進して来る。
あの速度で突っ込まれたらザックリと魔装を貫通して串刺しになりそうだ。
一瞬逃げようかと考えたがあっちの速度の方が速いので追い付かれてしまって逆に背後から刺されそうで危ない。
そこで『鳥もち』の様な態と刺さる様な強度と粘着力のある強粘度無属性のブロックを作ってソード・フィッシュの魚群を迎え撃つ事にした。
簡単に言うと、『泥鰌鍋の豆腐』の役割をこの無属性のブロックにさせるのである。
ブスブスとソード・フィッシュの魚群が俺の前に作られた粘着ブロックに刺さって進む事も戻る事も出来ずにジタバタと発狂したかの様に暴れているが、それも俺が奴ら全体を包む様な電撃のネットで包むまでの話であった。
一瞬でビクンとなって動きを止めるソード・フィッシュの魚群。
正に大漁である。
『女神の英知』曰く美味い魚型の魔物と言う事なので、思わずニンマリとして、ゴッソリと回収するのであった。
某英国の有名なスパイ映画で海中戦をする作品があったが、異世界版のサンダーボルト作戦ってとろかな? と頭のなかで思って笑うのであった。
尤もこっちは映画の様に美女と海岸でイチャコラする事は無くて、むさ苦しいパン一姿なのだが・・・。
まあ誰かに見せる訳でも無いのでドンマイって事で。
クラーケンは以前に戦ったが、リバイアサンって言う蛸型の魔物が出て来てかなり鬱陶しく絡まれた・・・文字通り8本の足で。
吸盤が魔装に吸い付いて締め上げて来た。
パン一姿の男を触手で締め上げても誰も喜ばない絵柄だな・・・。と自嘲気味に笑って、無属性の高周波ブレードを魔装の外に装備してみた。
リバイアサンは全部の足をズタズタに切断されて、高音の鳴き声を水中に響かせ『手も足も出せず』に胴体の足の付け根にあった口にサクっと高周波ブレードグンと伸ばしつつを差し込んでトドメを刺してやったのだった。
蛸料理って、酢物とかたこ焼きぐらいしか思い付かないが、残念な事にたこ焼き用の鉄板が作れないので実現していない。
近い内になんとかしたい物だ。
水中戦は魔力の消費が大きい。呼吸から推進力まで全てが魔力頼みなのが原因だ。
最近では魔力が多くなり過ぎて昔の様に少々の事では枯渇状態に出来なくなっているぐらいなので、この消費レートであれば1~2時間ぐらいは保つだろう。
3時間まで行くと魔力の余裕面ではやや危ないかも。
その場合はゲートで緊急脱出する敷かないが・・・。
何で損な話をするかって? いやさ、海中に潜って早2時間が過ぎていて、そろそろ最悪の場合を考えるべきかな?って思ったからなのだけど、
もうちょっと前進する事に集中してもう少し辛抱してみるか!?と方針を決めて速度を上げて前へと進む。
更に30分程経過した頃、漸く海中に鳥居の様な石で作られた建造物が出て来てその先に海中洞窟を発見した。
どうやら、あれが下層への階段の入り口の様である。
一気にラストスパートで加速して、洞窟の入り口でジェット水流を停止して、普通に歩く体勢に戻った。
洞窟の中に入ると若干の上り坂となっていて、漸く空気の層が天井の方に現れた。
本当に漸くである。
魔装を解いて時前の空気清浄も解除して、空気の層に顔を突っ込んで息を吸ったのであった。
海水から完全に上がって『クリーン』で潮気を抜いて綺麗サッパリとする。服を着て変態紳士から、普段の好青年モードへと戻るのであった。
魔力はかなり減ったが、全体の70%を消費したぐらいだろう。
慣れない水中戦で精神的にも疲れたから本日はここまででマッシモに戻るのであった。
■■■
この日の夕食時にアランさんがソリアと一緒に帰って来た。
アランさんは俺の顔を見るとニッコリ笑って親指を立てて見せてきた。
俺がソリアの方を見ると顔を耳まで真っ赤にして、何か言おうとしている。
まあつまりそう言う事だ。
豆腐やシラタキ等の納品時に度々会うのでソリアを好きになったアランさんが俺に告白して良いかを先日相談されたと言う訳だ。
俺としても全く反対は無いし、遠く何処かへ行く訳でもないし、妹と一緒には暮らさないにしても会いたい時には何時でも会えるだろうし、ソフィアだって姉の幸せを祝福するだろう。
後でアリーシアから伝え聞いた所、ソリア自身も納品の度によく話掛けて来るアランさんの事難からず思っていたらしい。
2人には是非とも幸せになって欲しい。2人の結婚式や新居については俺の方で用意するか、支援するとしよう・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます