第72話 マッシモ東ダンジョン その1
ちなみに、ダンジョンに潜るにはDランク以上でないといけない。パーティーの場合、D以上でCランクが最低1人は必要となる。
俺の場合、BランクだったがAランクの依頼を3つ熟して晴れてAランクに昇格済みだったりする。
よって、ソロでダンジョンに潜る資格があるのだ。
まあ、例え資格があったとしても、ソロで潜る事は推奨して居らず、ゲンダさんから、何度もパーティーを組んで潜れと口酸っぱくお小言を頂く事になるのだが・・・。
聞く訳も無く、お金を払ってギルドで購入出来る階層の地図を購入し、颯爽とダンジョンへ道の上空をウィングスーツで滑空して行くのであった。
なんてったって、この世界で初めてダンジョンに行くんだぜ!? ウキウキするな!って言う方が無茶って物だ。
俺は自慢じゃないけど、ヤリ込み系のゲームは地道に周回してコツコツじっくりレベルを上げるタイプだったりする。
そんな俺がリアルなダンジョンに滾らない訳が無い!
フンフン♪と鼻歌交じりにドンドン速度を上げて行き、マッシモからダンジョンへ続く道・・・通称ダンジョン街道の終点まで約30分のフライトでダンジョン門前街に到着したのであった。
まあ、街と言ってもほぼ集落といったレベルで、数軒の宿や食堂に冒険者グッズから、日用雑貨まで売っている何でも屋と衛兵の詰め所と定期便の竜車の休憩小屋がある程度である。
この集落に住んでいるのは恐らく、宿屋や食堂、それに何でも屋の従業員ぐらいで、普通に民家が無いので普通の住民は居ない感じである。
そんな訳だから、屋台や露店を開いている者も居らず、西部劇に出て来るゴーストタウンの様な乾いた寂れ感が漂って居る。
特に城門や検問の衛兵が居る訳でも無いので、地面に着地すると、この街の短いメインストリートを奥へと歩いて行く。
竜車の定期便の到着時刻でもないのに、やって来た俺を見て、不思議そうに見る視線は感じるが、特に悪意や害意も感じ無いので問題ない。
「さあ、気分を変えて、初めてのダンジョンを楽しむとしよう!」と呟いて、石造りのアーチで出来ている坑道の様なダンジョンの入り口へと早歩きで向かうのであった。
一歩足を踏み入れると、正に外と違う何かの境界を越えた様な感覚で、ここからは異空間と言う感じがするのだ。
それに『魔の森』とはまた違うが、周囲の壁からも非常に濃い魔力を感じる。
坑道と言うか、洞窟と言うか、ゴツゴツと削り取られたような頭とかを不用意にぶつけると痛いと言うより血だらけになりそうな表面である。
しかも面白いのはその表面が薄ら発光していて、身体強化で暗視能力を上げなくても、5m圏内ぐらいの視界が確保されている事だ。
当初、『ライト』を発動しつつ探索する必要を覚悟していたのだが、これなら魔装を纏う方に魔力と意識を回しても大丈夫そうである。
冒険者ギルドで仕入れた地図と情報では、第1階層にはスライム、ホーンラビットぐらいしか出ないとの事だったので、何かあっても魔装で弾く事が可能だろう。
情報を信じるならば、第1階層にトラップは無いとの事だったが、これも鵜呑みにせず、自らで判断した方が得策だろう。
寧ろ、安全なこの第1階層で気配察知や罠関知的な技術の訓練をすべきかもしれない。
ダンジョンに入り5分が経過した頃、漸く最初の魔物であるスライムと遭遇し魔弾1発で瞬殺したのであった。
その後もちょいちょい出て来るスライムを魔弾で撃ち抜きつつ進んで行くと漸くホーンラビット1が通路の曲がり角から角を出して居るのを発見。
こちらを認識した様で、角をこちらに向けて発達した後ろ足で地面を蹴ってミサイルの様に突っ込んで来た。
眉間を魔弾で撃ち抜いて仕留めてm血抜きを済ませて収納して先へと進む。我が家には食い盛りも含め食べる大好きな者が多いので肉は大歓迎である。
それに孤児院にもお裾分けできるしな。
「ヘイ、お肉カモン!」と言う感じである。
但し、ゴブリンは食えないので要らない。魔石と討伐証明部位の耳以外は本当に要らない・・・しかも臭いし。
地図によるとここ第1階層にはトラップもモンスターハウスも存在しないとなっているので、部屋一杯のホーンラビットウマーな展開は無い。
1時間ぐらい第1階層を廻ったところで、第2階層への階段を発見した。
さあ、階段を降りた先の第2階層の魔物はゴブリンである。勿論全然嬉しくない。
第1階層と同じ坑道の様な洞窟ステージではあるが、ゴブリンがメインの階層だけに、なんか空気が淀んでいる様な、臭い様な気がしてならない。
第2階層を進み始めると、早速緑の肌で見るからに不潔そうな悪臭の元が俺を見つけてグギャ!と叫びながら、棍棒を片手に走り寄って来るが、スパンとヘッドショットで沈黙させた。
うーーん、触れたくないなぁ~。 魔石要る? ここで無理にゴブリンの身体弄らなくても良くね?って一回思っちゃったら、「ま、良いか!」っとスパっと吹っ切れて取りあえずスルーする事にしたのだった。
これがオークなら喜んで回収するけどな!
そんな訳で、ズイズイと進む訳だが、やっぱりこの魔弾は本当に使える魔法である。3mより以内に接近を許す事無く、問答無用で倒せるので、只の散歩に等しいのだ。
ああ、ゴブリンの亡骸放置して良いのか?って? 大丈夫なんだよ、地上と違ってここダンジョンでは、放置していると一定時間でダンジョンに綺麗サッパリ吸収されるからね。
それは、生きてる物は別だけど、人間の遺体も同じ・・・。だから行方不明の白骨死体なんて物は出て来ない。もし俺がここで死んでも人知れず消えるだけである。
なので、スパンスパンとゲーセンの射撃ゲーム宜しく撃ちまくりの放置しまくりで良いのだ。
ゲーセンかぁ~、懐かしいなぁ。昔(高校生の頃)よく、テロリストを撃退する特殊部隊の射撃系ゲームやったなぁ~。
魔弾の場合、ゲームの様にリロードのタイムラグ無く速射OKだから、実質無双ゲーだな!
そんな感じで60匹程のゴブリンを撃ち倒し順当に第3階層への階段を降りるのであった。
いやぁ~、順調順調!
そして降り立った第3階層は、森林ステージであった。
『魔の森』で生活していた俺に取っては、お気楽なステージである。
久々の森林に勝手知ったる『魔の森』と同じ様な感覚で探索を開始する。
まずはグリーン・スパイダーからご挨拶代わりの毒液攻撃や糸による絡め取り攻撃に合うものの、躱しつつサクっと魔弾で頭を射貫いてサクっと収納した。
その後はフォレスト・サーペントが前方の木の上から飛び掛かって来たが、無属性の高周波ブレイドでサクっと首を刎ねて血抜きをしてから収納した。
スローイング・エイプの投石攻撃を魔装による防御で力技で跳ね返し、自分らの投石が無力化される事に怒って騒ぐ26匹のエテ公を魔弾で撃って仕留めてやった。
撃ち合いで俺に勝とうなんざ、3万年早いんだよ!ざまぁー!と心の中でドヤりつつ先へと進んで行く。
すると、前方から、周囲の木々をなぎ倒しつつ現れたるはヒュージ・ボア。これも美味しいお肉シリーズである。ベーコンやハムにしても良いし、単に焼肉にしても美味しい。
真正面から突っ込んで来るボアの眉間に一発ぶっ込んで首を高周波ブレイドで跳ねて血抜きを行って、収納する。
大物のヒュージ・ボアを仕舞って10分もしない内に今度はウルフ系の群に遭遇と言うより取り囲まれていた。
感知範囲のギリギリ外から、追い込む様に遠吠えを合図に俺に向かって集まって来る感じである。小癪にも逃げ道を全方位に塞ぐつもりらしい。
馬鹿め!! 俺には空と言う逃げ道があるんだよ!とほくそ笑んで、飛び掛かられるギリギリにゲートで上空に逃げてウィングスーツで滑空死奴らの包囲網を飛び越えつつ、ちょっと癪だったので、上空から、炸裂させる魔弾で滅多撃ちにしてやった。
「キャインキャン」と断末魔の鳴き声がして居るが、俺を
全滅前にボスウルフの一鳴きで残存するウルフ達が一斉に退却して行った。俺は虐殺現場の様な地上に降り立って、比較的綺麗なウルフの亡骸を回収していったのであった。
しかし、『魔の森』に比べて1匹1匹は大して強くないが、数や接敵頻度は、なかなかどうして、侮れないな・・・。
どんなに弱い魔物相手でも休む間無くたたみ掛けられると、どんな強者でも疲れから来るちょっとしたミスが元で命取りにならないとも限らないのだ。
この先もこのペースなら、十分に注意しないと拙いかも知れない。
温かいカフ茶を1杯取り出して、気分転換に飲みながら少し休憩を取って、気合いを入れ直す。
そんな俺を待って居たかの様に上空から、ハンター・イーグルが急降下で俺を狙って来た。
「全く面倒な!」と愚痴りつつ、高周波ブレードでタイミングを計って羽を切断し、地面に墜落した所で首を刎ねた。
これも血抜きをしてから収納し、地図で目指す階段の方向を再確認して進んで行った。
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