第61話 ちょっとした意趣返し意趣返し その2
一晩明けた翌朝、王都の自宅に単身で移動した俺はリビングのソファーで静かに時を待って居た。
師匠には本日は来られない事をちゃんと報告しているので大丈夫である。
そして9つの鐘の少し前になると、自宅の表がやや騒がしくなったので、家の外に出て扉をロックして、門の方へと歩いて行くと昨日と同じ構成で竜車2台とロンデウムさんを先頭にズラリと並んだ戦闘メイドが待って居た。
「トージ様、おはようございます。お約束の時刻にはやや早いですが、お迎えに上がりました。」と頭を下げていた。
「はい、お迎えありがとうございます。」と言いつつ案内されるがままに竜車に乗り込んだのであった。
王城に到着すると、ロンデウムさんの案内で以前訪れた王の執務室へと通されたのだった。
久々に見る国王陛下はやや窶れ、苦悩の跡が見えた。
入室し、取りあえず跪こうとしたところを慌てて止められて、国王陛下が言葉を発した。
「久しいな。トージ・・・いやトージ様それとも『御使い様』とお呼びすべきか?」と切り出す国王陛下。
「えっと『御使い様』とは?」と聞き慣れない単語を尋ねると、説明をしてくれた。
要はこの世界で『手駒』となって転生した者を女神の『御使い』と呼んでいるらしい。
「なるほど、『御使い』ですか・・・。若干意味合いは違いますが、大きく違うとも説明し辛いですね。普通にトージと呼んで頂いて結構です。」と肯定も否定とも取れないような返事を返した。
「ふむ、では以降トージ殿と呼ばせて頂く。 して、先日の話に戻るがトージ殿への詫びと言うか褒美と言うのも烏滸がましいが、望みは御自身やその周囲の者の平穏の維持と『何者にも権力や地位や武力によって強制されない、害されない』と言う事で合っておるだろうか? 儂のお触れを出せば王侯貴族や兵に関しては規制も出来るのだが、民間の盗賊や無頼者ににまではその効力がないのが現状じゃ。
よって、その様なトージ殿やその周囲に害を為す者共がおれば、身分関係なく武力行使しても不問と致す。 これでどうじゃろう?」とこちらを伺う様な視線で聞いて来たのだった。
「ええ、結構です。余計な敵対行動や付き纏いが無いのは素晴らしいですね。まあチンピラや盗賊共は仕方無いですし。権力や地位を嵩に強制されないのは非常にありがたいですね。 で、これでもう王都に軟禁されるのは解除されたのでしょうか? ラルゴさんや一緒にやって来た冒険者達に相当な迷惑掛かってたのはご存知ですよね? 私自身それ程悠長な性格ではないので、こう言っては不敬に当たるとは思いますが、何度こちらにねじ込もうと思った事か・・・。」と俺が当時の怒りを少し滲ませると、少し青い顔になって居た。
「そ、それは対応が非常に遅くなってしまって申し訳無い。こちらのカードを作ってそれを各貴族へ伝達徹底するのに時間が掛かっておったのじゃ。ラルゴ達へは別途保証を致す故、どうか容赦して欲しい。」と言いつつ、銀色の王家の紋章入りの1枚のカードを手渡されたのであった。
どうやらこの銀色のカードが、所謂印籠代わりと言う事らしい。
俺が素直にカードを受け取ったのを見てホッと溜息を漏らした国王に「国王陛下、少々お願いと言うかお尋ねしたい事が。宜しいでしょうか?」と切り出すと、「何かあれば遠慮無く申して欲しい。」と許可が出たので聞いてみた。
「王都の『廃棄街』と呼ばれる地区の住民ですが、マッシモで現在大規模な開拓と事業を開始しておりまして、そこの人手が足りないので『廃棄街』で募集を掛けようと思っております。希望する住民をマッシモに連れて行って宜しいでしょうか?」と聞いてみた。
特に書類上は正式な王都民とカウントされていないので問題無いらしい。
「事前に言って置くと、一応ちゃんと働く人物を厳選致しますので、ご了承下さい。(つまり残った人物は・・・)」と言う意味を込めて一応警告を発して置いた。
言質は取ったし、これでもう俺の用事はなくなった。
「では、本日はありがとうございました。」と言ってお暇しようとすると、王様が慌てて、尋ねて来た。
「と、トージ殿! これで、我が国、いや王家もお許し頂けたと考えて良いのじゃろうか?」と。
「ええ、私自身の怒りはもう水に流しました。」と俺が答えるとホッと緊張が抜けた様な顔を見せて、ハッと思い出した様にお願いして来た。
申し訳無いが、庭園に作ったドームと湯船を撤去して欲しいと。
何やら宮廷魔魔法師だか何だかのこの国一番の魔法使いではビクともしなかったとか。
しょうがないので、承諾して、庭園のドームと湯船を消し去ると、着いて来ていた王様と魔法何チャラの役職の偉い人が驚いて居たのだった。
「トージ殿、また是非、王宮に遊びに来て下され! あと、何事か問題が合った場合、『大きな問題』になる前に一報頂けるとこちらも出来る限り早急に動く故に、言って頂けるとたすかるのじゃが!・・・是非、これからは、我が国とおうけともより良き関係を・・・」と後半縋る様に追加で言われたが、愛想笑いで誤魔化して帰って来たのであった・・・。
ふぅ~。解決まで思った以上に長い時間掛かったが、漸くケリが付いてホッとしたよ。
このカードがあれば『トラブルフリー』になると思いたい!
だが、悲しい事に俺の本能がそれは甘いと告げている。こう言う余計な予感って当たるんだよね・・・。
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