第7話 猫とゲーム
昨晩の猫、人化から約12時間が経過した今、午前9時。
「おい、まてまてこっち誘導するな!!」
「ぬわっははーっ!そちらが先に仕掛けた事!!卑怯とはゆうまいなあああ!?」
俺達は朝からゲーム、モンスター狩人をプレイしていた。
「お前、うそだろ......全滅しちまっただろ。これそーいうゲームじゃねえから。協力してモンスター倒すゲームだから」
そういうと猫はぷいっと明後日の方へ顔をそむけた。
「そんなん知らんもーん。やられっぱなしになるくらいなら、全滅して負けるとしても殺る!」
「なんて殺意の高い猫だ......」
猫は、プライステージョンをプレイしている。つまりは人のままだった。6時間経過で元の猫に戻ると思われていたが、余裕で9時間が経過している。
相変わらずTシャツ一枚の姿で、あれなら服買いに行こうかと思ったが、街中で突然猫に戻ったらやばそうなので様子見している。てか、ネットで買うか?着れなきゃ返却するかんじで。
「猫よ」
「あい」
「服をネットで買うか」
「......服、ですか」
「え、なに......もしかして、そのシャツ姿気に入ってるの?」
「いや、なわけないでしょ!......なんというか、あなたに無駄な出費をさせたくない、みたいな」
ああ、俺の懐を気にしているのか。
「俺はさ、お前が来るまでは見ての通りなんの趣味もなく、強いて言えば酒を毎日一缶飲むくらいの男だ。このプライステージョンも遥か昔にやっていたものだしな」
「?」
「......お前の服を買うくらいの金はあるさ。べつに負担でもない」
「......で、でも」
なかなか折れないな。まあこいつの性格からしてわかってはいたけども。この一週間ちょっとで感じた猫の印象は、礼儀正しく優しい子、だ。歯を磨かせたり図太い一面はあるが、実はこちらの反応を見ていて気を遣っているような動きや発言をする。
(猫なら、気ままに気楽に、やると言われたものは素直に受け取れば良いのにな......)
......まあ、それなら、違う言い方で。
「あのさ、猫」
「はい」
「ぶっちゃけて良いか」
「え、なんです......ぶっちゃける?なにを?」
「お前のその格好は目に毒だ。俺はドーテーだぞ......わかるよな?」
「......あ」
「うん。だからさ、何か服を」
「えっと、は、はい......どーぞ?」
バッと両手をこちらへ向ける。
「何が!?」
目を瞑っている猫。ちらりと薄めでこちらを伺う。
「いやあの、これ......服選んで?どーぞって、俺えらべないよ」
「......あ、ああ、そーいう」
「?、いや、ん?なにが?」
「な、な、なんでもないです。え、えーとどれにしよっかなあ、あはは」
キョドり過ぎだろ。どーしたこいつ。情緒不安定猫。彼女はスマホを使い洋服を選びだした。細い指先でスイスイと進めるネット通販アマゾネスのページ。
「あー、これ可愛いですね。これ」
「ん。あー、パーカー」
「フードの猫耳が可愛くないですか!?」
「ああ、かもな」
「......」
ジト目で睨んでくる猫。あれ、どーした?
「な、なに?」
「いいえ、なんでもないですー」
「?」
選んだ黒のパーカーやその他にも歯ブラシやコップなど生活用品を色々と選び、猫は買い物かごへポチっと突っ込む。
「あ......そうだ。下着も買っといたほうが、いい......よな......?」
「あー......ですね。はい......」
恥じらいを見せる猫。いや仕方ないだろ。下着ないと不便でしょ。って何を買うか見られるのが恥ずかしいのか。
「えっと、ここで履歴消せるぞ。あとは下着を選んでカートに入れたら購入でオッケーだから、終わったら履歴消せば大丈夫だ」
「りょ、了解です......すみません、気を遣わせてしまって」
「いや気を遣うってほどでもないさ」
そうしてあとはアマゾネスから注文した品が届くまで待つのみとなった。
「さて、これでとりあえずはオーケーだな」
「はい!ありがとうございます」
「それじゃあ第二ラウンドだ」
「?、第二ラウンド?」
ゲームの起動ボタンを押す。
「!」
「猫、お前は格ゲーはプレイしたことあるか?」
「格ゲー......記憶がないのでわかりませんが、やってみます」
「よし。少し揉んでやろうか」
猫は目を見開きサッと体を守るように身を引いた。
「あ、そういうことでは無いです」
「あはは」
冗談だったようで彼女は笑っていた。こんなイタイケなドーテーいじるのやめて?
対戦モードに移行し、キャラクター選択を終えた。猫のキャラは猫耳褐色の女性キャラ。俺は筋骨隆々のゴツいオッサンキャラ。絵面やばくね。
「とりま色々操作してみ」
「はい!」
カチカチと色々なところを押してみる猫。画面に集中している彼女は口をぽかーんと開けていて、ちょっと可愛い。時折漏れ出る「......ほぇ......」という囁き声。
冷静に考えるとすげえ状況だよな。これまでの三十年、部屋に女性が居たことなんて、家族を除けば一度たりとも無かった。
それが急に......しかも、これほどの。どう見ても芸能人、モデルレベルの美人さん。
「ちょっと飲み物とってくるわ」
「あ、はい......」
「何飲む?牛乳、お茶、カツゲン、コーラ......コーヒーか紅茶」
「あ、ではカツゲンで」
「りょーかい」
予想外のがきたな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます