【記念SS集】え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?
下城米雪
コミックス1巻発売記念SS
「マンガの後ろにある原作小説の短編って邪魔ですよね」
「ゆりち、なんてこと言うの?」
「お姉さま、あれちゃんと読んだことあります?」
「あるよ。いつも読んでるよ」
「へー、暇なんですね」
「よし分かった。戦争だね。徹底的にやるよ」
「望むところです」
「ゆりちは小説の何が気に入らないのよさ」
「だってあれマンガの劣化版じゃないですか」
「くすぐり攻撃!」
「効かないです。無敵です」
「ゆりち。この世には言っちゃダメな言葉があるんだよ」
「どんな言葉ですか?」
「ひとつは特定の宗教をバカにすること。もうひとつは他人の身体的なコンプレックスを揶揄すること。そして、小説をマンガの劣化版と囀ること!」
「お姉さまの中でメッチャ罪深いことが分かりました」
「具体的に、何が劣化版なのかな?」
「まず絵が無いです」
「それから?」
「クソ長いセリフが多過ぎます」
「ふーん?」
「会話ってキャッチボールじゃないですか」
「そうだね」
「でも小説って一人で喋ってること多過ぎません?」
「それは作品に寄るよ。現実も同じ」
「いいえ小説はダメです。理論的にもそうです」
「理論」
「はい。マンガはコマ割りを考える必要があります」
「そうだね」
「台詞をコマに収める必要があります」
「まぁ、そうだね」
「しかも一目で頭に入らないとダメです」
「……そう、だね」
「つまり小説よりも台詞が洗練されているということです」
「ぐぬぬ、意外と理論的だった」
「私の勝ちですね」
「甘いよゆりち」
「逆にマンガは、長台詞を表現できない」
「そんなことないです」
「あるよ。マンガで延々とモノローグ描いてたら微妙な感じになるでしょう? 小説でいいじゃん、みたいな」
「そんなことないです」
「あるの! ぴょんぴょん読むとこ変わって疲れるもん!」
「幼児退行」
「そもそも、結局は文字を読むでしょう?」
「絵も見ます」
「私の調べによると読書時間の九割が文字を読む時間です」
「謎のデータやめてください」
「でも実際そうでしょう?」
「そんなことないです」
「えー、噓だ。絵をジッと見る人なんてレアだよ」
「……まぁ、ジッとは見ないかもしれないですね」
「でしょう?」
「絵だけで表現されるシーンもあります」
「それは小説の挿絵と何が違うのかな?」
「ぐっ」
「結局、楽しいのは物語。大事なのは文字なんだよ」
「異議あり!」
「何ィ!?」
「小説はその文字が多過ぎます!」
「いっぱい食べれてお得!」
「無駄な文章ばっかりじゃないですか」
「たとえば?」
「誰々は悲しくてまるでホゲホゲのような涙を流したみたいな文章、マンガなら泣いてる絵と一緒に『ごめんね』とか書いときゃ終わりなんですよ!」
「いーじゃん長くても! それが味になるの!」
「ならないです!」
「なるの!」
「仮になるとしても!」
「しても!?」
「同じ時間で考えた時、マンガの方が良いです!」
「出たなコスパおばけ! アニメを倍速で見るタイプ!」
「なんか文句ありますか!?」
「もっとひとつひとつの作品を大事に食べて!」
「うるさい! そんなことしてたら追い付かないんです!」
「まぁ確かに作品数が多過ぎるのはあるよね」
「急に冷静にならないでください」
「だからこそ、あの特典小説は大事なんだよ」
「話が見えないです」
「よくラノベでシリーズ累計十万部とか聞くでしょう?」
「そうですね」
「あれ、基本的に八割マンガなんだよ。下手したら九割」
「マンガの方が優れてるからですね」
「売上で見ればね? でも、だからこそ、普段は小説を読まないマンガ読者さんにアピールしたいんだよ」
「ふーん」
「原作が売れないとマンガも打ち切りになるよ」
「卑怯者! 人質を取るなんて!」
──というわけで。
「好きな原作は百冊買おうね、ゆりち」
「そんな話でしたっけ?」
「そんな話でした」
ーーーあとがき
フォロー、★評価などして頂けると喜びます。
コミックス1巻。
5月2日発売、予約受付中です。
是非、お手に取ってくださいませ。
■ 特典情報
https://pash-up.jp/information/oneope_1_0418
■ 公式サイト
https://www.shufu.co.jp/bookmook/detail/9784391159509/
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