愛のカタチ

木ノ葉丸

永遠の愛、約束の本屋


ある晴れた日、村の小さな本屋で働く明美と偶然出会った大学生の雄一。彼は彼女の知識豊かで素直な笑顔に惹かれ、彼女もまた雄一の優しさに心を奪われた。二人の恋は、それから急速に進んでいった。


村の祭りの夜、華やかな浴衣姿の明美と雄一は、その恋を誓い合った。しかし、祭りの後、雄一は遠くの都会で就職が決まる。二人は、遠距離恋愛を決意する。


手紙や電話で繋がり、時折、雄一が里帰りするたびに、恋愛は深まっていった。ある日、明美は雄一に告白した。「雄一さん、私、あなたと一緒に都会で暮らしたいです。」雄一は喜んで、都会での生活を始める準備を進めた。


そして、引っ越しの日。明美は村の皆に別れを告げ、雄一とともに新しい生活を楽しみにしていた。だが、その夜、明美は突然体調を崩し、入院することになった。


検査の結果、明美には余命わずかな病気が見つかった。雄一は悲しみにくれながらも、彼女の最期の日々を精一杯サポートしようと決意した。


明美は、彼女の大好きな本を読む雄一の横で、穏やかな笑顔で最後の言葉をつぶやいた。「ありがとう、雄一さん。あなたと過ごせた時間が、私の一番幸せな時間でした。」


涙を流しながら、雄一は答えた。「明美、君と出会えたことが、僕の人生最大の幸せだ。どこにいても、ずっと君を愛している。」


明美の最期は、その後間もなく訪れた。そして、彼女の遺灰を村に連れて帰り、大切に眠らせることにした。その場所には、彼女が愛した花が咲き乱れる。


雄一は、明美との約束を胸に、村の本屋を継ぎ、二人の思い出を大切に生きることを決意した。そして、彼は心に誓った。明美と共に過ごした愛と勇気を、これからも胸に抱き続けることを。


季節は巡り、村の本屋では今も雄一が優しく微笑んで本を並べている。彼は、明美が生きている間に教えてくれた素晴らしい本の数々を、村の人々に広めていく。


村の子供たちが集まる読書会も始めた雄一。子供たちの笑顔が、明美の存在を彷彿とさせる。彼女が今も、どこかで見守ってくれていると信じている。


彼は時折、明美と過ごした幸せな時間を思い出し、涙を流すこともあった。だが、そんな時でも彼は立ち止まらなかった。明美がくれた愛を、村の人々に伝えていくことで、彼女との思い出がいつまでも生き続けると信じていた。


ある晴れた日、本屋に小さな女の子が入ってきた。彼女は明美によく似た瞳で、雄一を見つめて言った。「おじさん、私も本が大好きなんだ。いつか、私もみんなに素敵な本を教える人になりたい!」


その言葉に、雄一は明美の姿を重ねてみた。彼は微笑みながら答えた。「君には、きっとなれるよ。そして、その時は、僕も君を応援するからね。」


時が流れるごとに、村の本屋は愛と思い出で溢れていく。雄一は明美と共に歩んだ道を、誇りとともに胸に刻んでいた。そして、明美の愛が、彼と村の人々の心に永遠に残り続けることを確信していた。

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