カレーライス

和田いの

ショートショート

カレーの香りがする。私の大好物の日だ。

「直子さん、ご飯できましたよー」

私は布団から起き上がり、ゆっくりと居間に向かった。

自分の席に座ると、みんながご飯を食べ始める。

「いただきます」

ここの施設では、自分の部屋でご飯を食べるか、居間で一緒にご飯を食べるかを選ぶことができる。私は、みんなと食べるご飯が好きだ。

介護士さんの助けを借りながら、カレーを食べた。


私はここの老人ホームで、毎日楽しく暮らしている。昔からゆっくりとしか動くことのできない私にとって、とても居心地がよかった。私がゆっくり歩いていても、だれも邪魔だと思う人はいない。

今日は、カレーに隠し味で何か入れたらしく、それが何かという話で盛り上がった。

いつもと味の違いが全然わからなかった私は、きいてみた。

「もしかして、隠し味はなにも入れてないんじゃない?」

「...それは無いんでねぇか?」

「えー、もしそうだったら、しょうゆとか答えてた自分が恥ずかしい!」

「ごめんなさい。実は...何もいれてませんでした!さすが直子さん、好物なだけありますねー」

それをきいて、みんなで笑った。

目が見えない私にも、みんなの笑顔がみえた。

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カレーライス 和田いの @youth4432

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