カレーライス
和田いの
ショートショート
カレーの香りがする。私の大好物の日だ。
「直子さん、ご飯できましたよー」
私は布団から起き上がり、ゆっくりと居間に向かった。
自分の席に座ると、みんながご飯を食べ始める。
「いただきます」
ここの施設では、自分の部屋でご飯を食べるか、居間で一緒にご飯を食べるかを選ぶことができる。私は、みんなと食べるご飯が好きだ。
介護士さんの助けを借りながら、カレーを食べた。
私はここの老人ホームで、毎日楽しく暮らしている。昔からゆっくりとしか動くことのできない私にとって、とても居心地がよかった。私がゆっくり歩いていても、だれも邪魔だと思う人はいない。
今日は、カレーに隠し味で何か入れたらしく、それが何かという話で盛り上がった。
いつもと味の違いが全然わからなかった私は、きいてみた。
「もしかして、隠し味はなにも入れてないんじゃない?」
「...それは無いんでねぇか?」
「えー、もしそうだったら、しょうゆとか答えてた自分が恥ずかしい!」
「ごめんなさい。実は...何もいれてませんでした!さすが直子さん、好物なだけありますねー」
それをきいて、みんなで笑った。
目が見えない私にも、みんなの笑顔がみえた。
カレーライス 和田いの @youth4432
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます