第16話

吾輩の胸は張り裂けそうなほど苦しくなった。

辛い、苦しい、悲しい。

ご主人、お願いだから捨てないで! 吾輩は泣き叫びながら訴えた。

だが、そんな吾輩の想いとは裏腹に、ご主人は無情にも吾輩を捨てようとする。

嫌だ! 絶対に離れたくない! 吾輩は必死にしがみついた。

だが、抵抗虚しく引き離されてしまった。……どうして? どうしてなんだ? もう、吾輩のことなどどうでも良くなってしまったのだろうか? そんなことを考えているうちに、ついに別れの時が訪れた。

――待って!行かないで! 吾輩は夢中で叫んだが、それが届くことはなかった。そうしている間にも、ご主人を乗せた車はどんどん遠ざかっていく。……このままでは見失ってしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る