THING
久居 薙
第1話 THING
俺の名前は
小学生の頃から、ほぼ毎日一緒に遊んだり勉強したりしていた。中学に上がれば同じ部活動に入り、クラスが違えば休憩時間には毎日お互いのクラスに入り浸った。女の趣味も一緒だった。俺の初恋の相手はこいつの初恋の相手と一緒だった。二人とも彼女に告白して玉砕したのだが…。高校に入れば一緒によく授業をサボった。そんな気のおけない親友であり、約束を交わせば必ず破ることのなかった間柄だった。だいうのに、こいつは昨日初めて俺の約束を破った。なんてことない、しょうもない約束だった。
俺はその日何故か無性に苛立っていたのだ。
「おいチュン!お前さ、昨日俺の誕生日祝いにパーっと酒でも飲もうって約束したじゃねぇかよ!」
俺がそう叫ぶと、チュンは俺の目をじっと見つめて、立ち止まって、微動だにせず、
「あれ、そうだったっけ?ごめん忘れてた!今日やろうぜ!おおそうしよう!それしかないわね!そういえば誕生日プレゼントなにがいいかなぁ。あれだ!あれがいい!いやあれは駄目だ!俺のセンスが疑われる!はぁ?あんたのセンスって何よ。そんなことより、あそこのオス!あそこのオス最高にイケてるわ!ほら今すぐメスだ!メスを呼んでこい!おいそこのお前!こっちに来い!何?来ないのなら、俺から行ってやる。ハハッ。てめえ今どこに居るか分かるか?俺の手ん中だ。今から引き裂いてやる。あぁ駄目よ、そんな残酷なこと。・・サ・・・ユル・・・・ナイ・。ハ・・ホ・・ク・・ナカ・。・・・・・・・・・。オ・・ハダ・ダ?」
あれ、こいつ誰だっけ?名前が思い出せない。確かチュ……いやチ……?あれ俺はここで何してんだ?僕は学校が終わって家に帰ろうとしている!ママ!早くご飯作ってよ!お腹空いたぁの!あっ……おぎャ………………。
その日、地球上で一つの灰色の立方体が現れた。
その立方体を、人々はTHINGと呼んだ。
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