第16話 手術の準備

「そうと決まれば、自分と一緒にザックさんの家まで来てもらっても良いですか?」

「えぇ、大丈夫です」


 その後話し合いの結果、ユミルとハンナが孤児院のヘルプとして残り、シアとサラがザック宅に行くことになった。


 道具はなんとかなるだろうが、1人でこの手術をやるとなると大変だ、今ある物を考えても止血の為には熱した鉄で対処するとして、その対応も自分でやらなきゃならない、もう一人自分が欲しい……、せめてそっちに手を割かなくても良いようにならないかな?例えばライトボールみたいに自由に動かせるものが止血できるレベルの熱を持ってくれれば……、それだ!


 戻ったら実験しなければ!肉を焼ける熱があればもっと効率よく動ける!


 その後、シアとサラの会話はスルーしつつ、抱っこしているユキを撫でながら先ほど見たシアの状態を頭に思い浮かべ手術シュミレーションしながらザックの家に戻った。


 ザックの家に戻るなり、ザックを捕まえた。


「ザックさん、ちょっと2週間位彼女たちを泊めてもらえないかな?」

「あ?シアとサラじゃねぇーか構わないぞ」

「あら、ザックと言ってたけど、あなただったのね」

「そか、ここザックの家だったのか……」


 ん?皆知り合いなのかな?


「皆さん顔見知りなんです?」

「そりゃな、鍛冶ギルドに修理依頼とか出してくるからな、孤児院からあまり金はとりたくないからワシが直々に出向いとる」

「なるほど、それで昔から2人を知っていると」

「あぁ、ハンナとユミルはどうした?おまえさんらいつも一緒だったろ」

「2人は、お留守番……」

「何があった?」


 その後、シアの病状の事、開頭手術の事、そしてその際に使う道具を作ってほしいと依頼した。


「なるほどな、泊るのも構わんし道具の件も了解だ。誠明よ1つ条件がある」


 人の命がかかってるのに条件出してくるとか……。


「なんです?さすがに人の命がかかってるからあまり無理な要求は無理ですよ?」

「いや、そんなに難しい条件じゃない、ワシとミルにも見学させてくれ」

「なんだ、それ位なら、人工呼吸をやってくれる人が必要だしシアさんの許可が貰えるなら良いですよ」

「ミルちゃんも知っていますから構いませんよ」


 シアさんがミルちゃんを知っているのは錬金科の先輩後輩だからなのか?


「なら作ってこよう、設計図やら用途なんかを詳しく説明してくれ」


 チタン製のタンブラーとメモ帳を取り出し、実物大の頭皮切開時の止血用クリップと動脈瘤の根の部分を挟むクリップを説明しながら図を描いた。


「なるほどな、直ぐに試作品を作るからまっとれ」


 話をして直ぐに行動に移ってくれるとか頼もしいな。


「私たちは何をすればいいですか?」

「空いている部屋に案内しますのでシアさんは今日はゆっくり休んでください、サラさんも同様に休んでもらって構わないです」

「そう、わかったわ」

「わかった……」


 その後、2人を空き部屋に案内し寝床を用意した。


 2人の案内が終わった後、鶏の胸肉をだした。これからやるのは、ライトボールの熱で止血できるかの実験だ。


 ライトボールの熱が100℃と2cm程のヘラ型をイメージしながら。


「ライトボール、ライトボール」


 と唱えると、思い通りのヘラ型の光が現れた。


 ライトヘラ!でいいんじゃない?とか思いつつも、鶏肉に押し当てるイメージをしてヘラ型の光を移動させた。


 “ジュー”という音と共にちょっと焼けた臭いが少しした。ヘラ型の光を鶏肉から離してみると、ちゃんと焼けていた。


 これなら大丈夫かな、場所も把握しているし、頭部に最小限の穴をあけて対応しよう、今回も周囲の神経細胞を損傷させないように対応しなければと思いながら、動き等をシュミレーションしていると。


「遅くなってすまん、出来たぞ、これでいいか確かめてくれ」


 気づいたらザックが近くに居た。彼が持ってきた道具の形状を見るとこちらが注文した通りの形状をしていた。あとは性能だ。


 鶏肉の血管を使いながら色々試していると、性能も申し分ない状態だった。


「これで大丈夫です」

「そうか、お代は、残った金属と何か酒をくれ」


 そうですよね、ただじゃないですよね~とか思いながら、お酒を出したところでこちらの懐は痛まないので素直に、純米吟醸の日本酒1升出した。


「これでいいです?」

「あぁ!もちろんだ!」


 日本酒を受け取ったら颯爽と自分の部屋から出て行った。


 もしやこれから飲むのかなとか思いつつ再び、手術のシュミレーションを行ったのち、鶏肉はユキにあげて、ユキと共に布団に入り寝た。



 翌朝


 ザック、シア、サラ、ユキたちと朝食を取りながら改めて今日行う手術の内容とサラとザックの役割についても話した。


 サラとミルはレサシテーターで人工呼吸器の管理をやってもらおう、ザックには、動脈瘤が破裂していた時に出血した血の吸引を頼んだ。


 朝食後


 手術の準備をしていると、ミルが来た。


「お久しぶりですね」

「あぁそうだね、ってかその服は?」


 なんというか、上はクリーム色下のスカートは濃い青い色のブレザータイプの制服のようなものを着ていた。


「学園の制服ですね」

「へぇ、結構かわいい制服ですね」

「ん~、そうですよね~」


 ミルはなんか微妙そうな表情を浮かべていた。


「ん?なんかあった?」

「いえ、なにも」


 ん?なんだろ?


「ちょっと説明はザックさんかサラちゃんに聞いてもらってもいいですか?」

「はい」


 それだけ言うと部屋から出て行った。


 急ぎ手術の準備を整えた。

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