第11話 王都マバダザ
船を降りると、アイロスは石やレンガを建築素材にしていたが、王都マバダザは木造建築が多かった。
「建築様式がアイロスとはまた違いますね」
「そりゃな、あっちは水没前提だから基本石やレンガなんだが、こっちはあまり水没被害にはあわないから木造が多いな」
環境によってそうなったって事ね。
その後、ザックの後について王都内の主要となる場所を教えてもらいながらザックの自宅へ向かった。
「学校って何を教えてるんですか?」
「そうだな、商業科、騎士科、錬金科なんかがあるぞ、お前さん位の年齢だと高等部にはいれるぞ」
今更学校はいいかな、商業科は商売についてだろう、騎士科は名前通り騎士の養成、錬金科ってなんだろ?
「いやいいです。錬金科って何を教わるんです?」
「人体についてだな、あとはポーションなんかの薬品の作り方だろうが、お前さんの知識と比べたら役に立たん事を教えている場所だな」
なるほど、一応人体について教えている場所はあるのか、ザックが役に立たん事というならそういう事なんだろう。
「そうなんですね」
「あぁミルが錬金科にいるんだがな」
「ミルって、火傷した子ですか?」
「そうだ」
錬金科に居るって知っているって事は近い関係なのかな?
「知り合いなんですか?」
「あぁ、姪だ」
身内だったのか。
「ザックさん、良い人紹介してくださいよ~」
「良い人か、ん~お前さんに合いそうなやつは知らんな」
「自分にあいそうな人って?」
「そうだな、お前さんの知識はこの世界のものではないからな、理解してくれるやつはおらんだろう、それに好みの種族は何だ?」
「好みの種族?」
「あぁ、エルフやドワーフ、リンクル、獣人、そして人、この町には少なくとも5種族いるからな」
エルフや獣人、リンクルは見たことないな。
「自分ってエルフや獣人、リンクルは見たことないですよね?」
「アイロスの冒険者ギルドの受付がリンクル族だったと思うが」
思い出してみる、受付の人って背丈の低い子どものような女性だった気がする。
「子どものような人ですか?」
「そうだ、リンクル族は人族の5~6歳で見た目が停まるからな」
ロリコン、ショタコン万歳だな!
「はぁ、子どもには興味ないですね、出来たら女性として魅力を感じる方がいいです」
「スタイルか?」
「ん~スタイルよりも雰囲気的なものが……」
「なるほどな、妖艶な女性がいいのか、エルフは外れそうだな」
「何でです?」
「エルフはな、胸あまりないんだよ、だからお前さんのいう妖艶とは外れそうだな」
ようは貧乳って事ね……。
「まぁ雰囲気ですから」
「そうか、妖艶というなら人族か獣人族だろうな」
ドワーフ族はどこ行ったんだ?
「ドワーフ族は?」
「ワシらの女はな、女性らしさよりも男性らしさの方があるからな、気さくで友達みたいな付き合いになりがちだ」
それはそれで悪くない気がするけどな。
「そうなんですね、一応ドワーフの方も追加しておいてください」
「人族、獣人族、同胞で良い奴が居たら声をかけておこう」
「お願いします!」
「なんなら娼婦館にいくか?妖艶な女はいっぱいいると思うぞ?」
娼婦ね日本風に言うなら風俗とかそういう意味だろう。
「そういう人はいいです……」
「そうか」
そんなやり取りをしていると1軒の家の前でザックが立ち止まった。
「ここがワシの家だ、工房に炉があるから何か作るならそこで作ろうか」
「ほい」
ザックの後について中に入って行くが、人の気配が全くなかった。
「ひとり身なんです?」
「そうだな、3年前に妻に先立たれて、昨年息子も1人立ちしたからな」
「あ~すいませんでした」
聞いちゃいけない事を聞いてしまった。
「いやいい、とりあえず炉に火を入れてくるからお前さんはそっちで好きな所に座ってろ」
好きな所か、とりあえずソファーに座り、ユキを膝の上に乗せた。
今日はおとなしいなと思いながらユキの頭を撫でたり背中を撫でたりしていると。
「待たせたな、何か飲むか?」
「いやいいですよ、炉の方に行ってっていいですか?」
「あぁ構わん、突き当りを右に行けば鍜治場がある。ワシは少しギルドに顔を出してくる。直ぐに戻るが家の中の物は好きに使ってってくれ」
ん、家主が居なくなるのに居てても良いのか?
自分が悪人だったらどうするんだろう……。と思っている間に家を出て行ってしまった。
仕方なく、炉のある部屋まで移動し炉の前でザックの患部の骨に成形したセラミックスを炉の入口近くに置いた。
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