第3話 初めての患者?

 宇宙空間のような所から森の中に移動した。


 辺りを見回すと、木!草!木!草!木!木!木!木!木!獣道すら見当たらない森の中!


 上を見ると木々の間から青空が見えてる辺り、日中なのは良いが森の中は結構暗かった。


 どうするかと思いつつも邪魔な木の枝や藪を切り払う為に、ホームセンターで買った鉈が欲しいなぁと思うと、手元に鉈が現れた。


 もしかして、アイテムボックスって思ったものが手元に現れるのかな?

 と思ったと同時に、各スキルの使い方を聞いてからこっちに来ればよかった!と激しく後悔した。


 手元にある鉈で、枝や草など邪魔なのを切りつつ周囲を見渡すが、どこに道がありますか……?


 町の近くの森と言っていたが町らしき物は見えませんよ!?


 いきなり遭難!?

 結婚することもなく死んだら創造神を祟ってやる!


 地図も買っておいたが役に立たないだろうな、ダメ元でスマホを出すと、15:36と表示されていた。


 ここに転移する前、占いの館に足を運んだのが19時だったはずだから、日本の時間というのは考えにくい、まさかユンワールドの今現在の時刻?


 日本と同等の1日だとしたらあと3時間以内に日が沈むじゃん!


 急ぎ街道を見つけなきゃ!スマホのロックは顔認証で解除されると思ったが解除されなかった。


 そりゃそうか35歳から15歳に若返ったから認証しないのは分かった。


 仕方なくパスコードを入力してロック解除した。


 時間を考えると地図アプリは使えますようにと願いつつ、地図アプリをタップした。すると日本じゃない地形が表示されていた。


 広域表示されている状態で中央に“プロズ王国”と表示されていて、自分の居る辺りを拡大していくと確か近くにイナンロという町があるのが分かった。


 が!右下に表示されている縮尺をみると1㎝が10kmとなっていた。自分の位置からイナンロの町まで、どう見ても2cm以上ある。


 まてまてまて!


 この地図アプリを信じると最寄りのイナンロの町まで20km以上あるじゃないか!


 街の近くの森じゃないぞ!おい!と思いながら、地図さらに拡大しみていると、現在地かから東側に行くと街道があるのが分かった。


 それが分かっただけでも良しとしよう、次に時計アプリを開くと、本来“東京 19:00”となっている所が、“プロズ王国15:46” と表示されていた。


 地図アプリ時計アプリが使えると判明した。


 他は、カレンダーアプリ、天気アプリ、メモアプリ、ボイスレコーダーアプリ、音楽アプリが使えたが、他のアプリは使えなかった。


 改めて整理すると、現在地イナンロ南の森、4月1日 15:56 日没予想時刻16:50ということが分かった。


 日没まで既に1時間きっているんだが!?


 急ぎ街道に出ようとすると、街道とは逆の方向から、「キュゥーン」高い声が聞こえた。


 まさかの魔物の鳴き声じゃないよね?と思っていると、再び「キュゥーン」という声が聞こえた。その声はどこか弱々しい感じがした。


 街道とは反対側を向き草木を鉈で切りながら進んで行くと、小さな水溜まりの近くに白い子狐が横たわっていてその左後ろ足には1本の矢が刺さり貫通していた。


 あぁなるほど、体長が10㎝位か、多分親狐に助けを求めていたんだろうな。手当をする為に近寄っていくと、子狐と目があった。


「キューッ!」


 と子狐が鳴くと、威嚇するように口を開けた。


「あ~、君を取って食べたりしないよ~傷を治してあげるから噛みつかないでね~」


 と言いつつ近寄っていくが。


「キューッ!キューッ!」


 子狐は威嚇を止めてくれなかった。


「まぁ、日本語なんて動物に通じないよね……」


 近くまで行きしゃがんでも威嚇を止めない子狐、このまま手を出したら絶対に咬まれるよな、とか思いながらアイテムボックスから防刃手袋を出し、左手だけに付けた。


「怖くないぞ~、君と敵対しないからおとなしくして~」


 そう思い、左手を出すと、案の定小狐は自分の手に噛みついてきた。


 防刃手袋万歳!咬まれても痛くない~!


 自分左手を噛んでいる隙に右手で子狐に触れると、皮膚と筋肉は傷付いていた、そして他にも子狐の血中に麻痺を促す成分がある事が分った。


 なるほどこの麻痺成分の為に逃げる事が出来なかったのか。


「矢に毒が塗られてたのかな?」


 麻痺しているなら丁度いい、子狐の足からそっと矢を抜いた。


 子狐の体内血液量を見ると、獣医じゃないから分からないが、人だったらそろそろ失血死とかになるんだがとか思いつつ、とりあえず今は傷口の消毒と、傷口を閉じなければそう思っていると、辺りがだんだん暗くなってきている事に気づいた。


 しかたない、アイテムボックスから小さい懐中電灯をだしスイッチをONにして口にくわえ傷口を照らし、アイテムボックスから消毒液をだした。


 消毒液を出したときに、思い出した。

 自分が、消毒とかって言った時に創造神ユスチナ様が、浄化でと言っていた。


 消毒液をかける前に、傷口の消毒をイメージしながら。


「ぎょーか(浄化)」


 と言ってみた。流石に懐中電灯を咥えたままだからちゃんと浄化と言えてなかったが、子狐の傷口付近が薄い緑色に光ったのを見逃さなかった。


 なんか光った気がしたけど、本当に消毒されているのかが不明だなと思いつつ、結局消毒液を子狐の傷口にかけた。


 そのころには既に子狐は咬むのを止めて自分の動きをじっと見ていた。


 次は傷口の縫合か、小さいからなぁ、※スキンステープラーで行けるかな?と思ったが、動物用じゃなく人間用だし、使っていいものか分からない、おとなしく糸を使って縫合するか、アイテムボックスから縫合用のピンセットと針と糸を取り出し、子狐の傷口を2カ所縫った。

 

 最後に市販の傷薬を塗った。塗った瞬間傷口が塞がった感触があった気がするが、辺りは暗いし気のせいだと思い後片付けをした。


 後片付けを終えて立ち上がり、子狐をどうするかなぁと思っていると、子狐が麻痺毒が残っているせいかよたよたといった感じで自分の足元まで来て裾を噛み引っ張っている?


 まるでこっちに来いと言っているようだった。


「ん?どうした?まだ何かあるのか?」


 と言いつつ、しゃがみ、子狐を抱き上げると今度は森の奥の一点をジーっとみたり、自分の顔を見たりとしていた。


「森の奥になにかあるのか?」

「キュィ~」


 もう真っ暗だし、街道に出たいんだがなぁと思いつつ、スマホがあればなんとかなるだろうと信じて、子狐が行ってほしそうにしている森の奥へと向かった。





 ※スキンステープラー又は医療用ホッチキスと呼ばれ、ホッチキスの様なもので縫合時に使用する医療機器。

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