黒川探偵の場合

羽弦トリス

第1話牛巻伝説殺人事件

4人もの犠牲者を出した、牛巻うしまき伝説殺人事件。

牛巻伝説とは、沼に大蛇が現れ牛に巻き付き引き摺り込む話しだが、4人が水死した。

しかし、溺死は1人。

3人は、撲殺、刺殺、銃殺ではあったが同じ沼で発見された。

たまたま、牛巻山荘に滞在していた私立探偵の黒川明は一連の事件に遭遇し、愛知県警捜査一課の植木警部と合同捜査で真相を紐解いてきた。

「黒川さん、当事件の関係者8人を山荘の部屋に集めました」

植木警部は黒川探偵の東京での活躍を日頃、耳にしていた。

彼は等に、真犯人を知っている。

後は、真犯人の自白を待つばかりだ。


関係者は皆、2階の大広間に集められた。

黒川は、自信満々に関係者の顔色を確かめる様に語り始めた。

「今回の事件は、猫神家の遺産に関係する人間を殺害した連続殺人事件です。4人は、先日病死した猫神権蔵さんの血縁者でした。そう、犯人は……」

黒川は息を思い切り吸い、

「犯人は、この中にいるっっっ!」

黒川はニヤリとして、植木警部に耳打ちした。

「警部、ほらっ、真犯人に手錠掛けて下さいな」

植木警部は驚き、

「く、黒川さん。早く真犯人を指差して下さいよ!」

「あのね、お手伝いのミキか?まだ、高校生の孫の幸子のどちらかなんだよね」

「じ、自信満々で関係者を集めろって言ったの黒川さんですよ」


「あのう」

と、男の声が聞こえた。

外人だった。

「日本の刑事の方と、探偵さん?私は、ロサンゼルス市警の者ですが、あたしゃ、真犯人は孫の幸子が犯人と踏んでおります。うちのカミさんがねぇ、面白い事言いましてね。推理モノの一番犯人らしい人物がフェイクにみせかて、やっぱり犯人だった!てのが流行ってまして、幸子さん、夏なのに長袖着てるでしょ?4人の犠牲者のうちの誰かに引っかかれてキズがあるのを隠してるんです。確かめませんか?」

と、刑事を名乗る男の声に耳を傾けた黒川は、

「犯人は、猫神幸子!お前だ!」

黒川探偵は、幸子を自信満々に指した。

幸子は笑いだした。

「な、何が面白い?」

「探偵さん、どうしてわたしが犯人なの?証拠は?」

「笑っていられるのも、今のうちだ。君には防御傷がある。猫神達也さんを殺害するときに、君は腕を引っかかれてそのキズを隠す為に、夏なのに長袖を着てるんだ」

黒川は力強い言葉で詰めよった。

警部が合図すると、警官が幸子の長袖を捲った。

キズはない。

「ほらね。わたしは犯人じゃないよ!」

「あっらぁ~、おかしいね」

さっきの外人は、窓際で葉巻を吸っていた。

「植木警部、どうしよう?」

「もう片方は?」

「は、犯人はミキさん、あんただね!」

ミキは、その場に崩れた。


植木警部はホッとした。黒川探偵、おしかったなぁ~。ま、真犯人が逮捕出来て良かったけど。

それにしても、あの外人刑事は何の関係者だったんだろうか?


かくして、黒川探偵の迷走は続く。

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