13p
彼が家に来て4日が経った。
彼を家に連れて来た時、母は少し驚いてはいたけど、何も聞かずに彼を受け入れてくれた。
父が帰ってきたら、それとなく2人に事情を話した。最初は難しい顔をしていたが、2週間という期限と条件付きで宿泊許可を勝ち取った。
学校には欠かさず行った。それが条件のひとつだったからだ。そのおかげで最悪なことが分かった。彼の欠席について、先生は体調不良と聞かされているようだった。つまるところ、彼の母は、息子が4日も失踪しているのに心配をするどころか、そのまま放ったままで、嘘をつき続けているのだ。
彼は学校には来ず、ただ一日を物置のベッドで過ごしていた。もとは父が使っていたものだが、先月新しいものに買い替えたので、それを彼に使わせていたのだ。
学校に行かない彼に対して父も母も文句は言わなかった。というか、文句なんて言いようがなかった。彼は食事はきちんと摂っているのに、日に日にやせ細っていくように見えた。隈は濃くなり、顔は青白く変色していた。
彼は家で必要最低限のことしか喋らなかった。彼の口から発せられる言葉は、「ありがとうございます」と「すみません」と「美味しかったです」の3つだけだった。
何か楽しい会話をしようとしても上手く行かなかった。ただ、一度だけ海の話題を出した時だけ、彼は反応を示してくれた。
今年の夏休み、家族で海にでも行こうかという話が出ているという、何の変哲もない話だった。
「海……青……晴天……砂浜……」
彼は恐らくそう呟いていた。声が小さかったし、聞き返しても答えてくれなかったから、自信は無かった。
【追記】
欠席連絡について母に話したところ、流石にこのままじゃだめだと思ったらしく、裏で連絡は取っているようだ。
でも、受話器を持ってる母の手は震えていて、偶に階上の私の部屋まで怒鳴り声が聞こえてきていた。母のあんな声は初めて聴いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます