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 彼が家に来て4日が経った。

 彼を家に連れて来た時、母は少し驚いてはいたけど、何も聞かずに彼を受け入れてくれた。

 父が帰ってきたら、それとなく2人に事情を話した。最初は難しい顔をしていたが、2週間という期限と条件付きで宿泊許可を勝ち取った。


 学校には欠かさず行った。それが条件のひとつだったからだ。そのおかげで最悪なことが分かった。彼の欠席について、先生は体調不良と聞かされているようだった。つまるところ、彼の母は、息子が4日も失踪しているのに心配をするどころか、そのまま放ったままで、嘘をつき続けているのだ。

 彼は学校には来ず、ただ一日を物置のベッドで過ごしていた。もとは父が使っていたものだが、先月新しいものに買い替えたので、それを彼に使わせていたのだ。

 学校に行かない彼に対して父も母も文句は言わなかった。というか、文句なんて言いようがなかった。彼は食事はきちんと摂っているのに、日に日にやせ細っていくように見えた。隈は濃くなり、顔は青白く変色していた。

 彼は家で必要最低限のことしか喋らなかった。彼の口から発せられる言葉は、「ありがとうございます」と「すみません」と「美味しかったです」の3つだけだった。

 何か楽しい会話をしようとしても上手く行かなかった。ただ、一度だけ海の話題を出した時だけ、彼は反応を示してくれた。

 今年の夏休み、家族で海にでも行こうかという話が出ているという、何の変哲もない話だった。


「海……青……晴天……砂浜……」


 彼は恐らくそう呟いていた。声が小さかったし、聞き返しても答えてくれなかったから、自信は無かった。


 【追記】

 欠席連絡について母に話したところ、流石にこのままじゃだめだと思ったらしく、裏で連絡は取っているようだ。

 でも、受話器を持ってる母の手は震えていて、偶に階上の私の部屋まで怒鳴り声が聞こえてきていた。母のあんな声は初めて聴いた。

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