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 やっぱり嫌いだ。


 屋上の昼食、その私だけの特権を侵害するのはやはり彼だった。


「へぇ……こんな場所あったんだね。君の独り占めかい? ずるいね」


 彼の揺れる艶やかな金髪がどうしようもなく私の心と重なる。

 揺れて動いて、止まってまた揺れて。

 馬鹿みたいだ。


「五月蝿い。別に私の勝手だろ」


 私が何処にいようと彼には関係ないし、彼が何処にいても私には関係ない。その相関係数は限りなく0に近い。


「勝手って……。入り口に『立ち入り禁止』って書いてたんだけどね……」

「いけないんだ。不良だ」


 なんて、おちょくる彼の顔が脳にこびりついて離れない。一種の薬だ、それも良くない方の。


「アンタだって入ってきてるでしょ」


 正論だ。私が嫌いな正論だ。

 でも、その綺麗な高いエベレストの鼻を一度へし折らずにはいられなかったのだ。


「いやいや。俺は悪いことしてるってちゃんと思って入ってきてるから」

「一番ダメなのは、ダメをダメと感じられなくなることなんじゃない?」


 なんて、ダメダメダメ五月蝿い。

 風紀委員でもクラス委員でもなければ、教職員でもない村人Aが私を注意しようなんて烏滸がましいにも程がある。


 いや、彼の名前を気にするなら、村人Sか。


 苗字も名前も同じだから迷わなくて済むね。


「ほんとにアンタは五月蝿いな。もう私に関わらないで、ほら、不良が移るわよ」


 自分で言ってて変な気持ちになった。

 私はキャッチボールは苦手だが、ドッジボールは得意だ。逃げて避けてればそれでいい。

 しかし、彼とはなぜかキャッチボールを続けてしまう。これは、きっと彼のウザさが経験したことないほどのものだからだ。


「不良が移るなら、その方が良かったんだけどね……」


 そんな言葉を言った後、彼は黙って菓子パンを食べ出した。

 話すネタが無くなったのかもしれないし、私の言動がそうさせたのかもしれない。

 でも、彼はその日2度と私に話しかけなかった。

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