インクの国のミミズクと女王
@mochipan0505
第1話 ある国のお話
これはある世界のある国のお話。
その国では、1人の女王が統治していた。
名をヒロコというその女王はとある力を持ち、民に幸福を与えていたのだ。
民たちは歴代の王達からずっと王族を崇めていた。
その力は、不思議なガラスのペンと様々なインクを使い描いたものがその場に現れるというものだった。さすがに人間を産み出すことはできないが、小さな動物くらいなら生み出せた。
女王が食べ物を描けば、美味しそうなハンバーグやカレーライスが現れ、花を描けばあたり一面に花を咲かせた。
この国はそうして歴代の王族達が力を使い、栄えさせてきた。
しかし、力は優れてはいるものの、その力を使うことは王自身の命を削るものだった。
王になり、国を栄えさせることは義務でありながらもそれは命懸けのことであった。
ヒロコは10代目の女王だった。
歴代の王達は、その力をサポートする役目を担う者を作り上げ国を統治していた。
とある王は完璧な執事を。とある王は屈強な男を。とある王は知識の多い女性を。
ヒロコも女王となった際には、お気に入りのインクで補佐を作り上げた。
とある本で読んだ「しあわせの象徴」「知の象徴」であるミミズクだった。
それが私「RBブッコロー」だ。
「真の知へと王を導く者」として、名付けられたのが私だった。
「女王様、女王様、急いで準備してください。今日も会合があるんですから。」
私が呼びかけると、女王は「待って。」とかけたメガネを直しながら何かを書いていた。
「今日はピンク色だ。」
最初は補佐するだけでも精一杯だった。
民の頼みを聞き、他の国との会合、もはや生まれたことすら嫌になることすらあった。
ただ最近は、少しは色々なことにも興味を持ってきてはいた。
例えば、人間たちのやっている馬に乗ってお金を賭けるゲーム。あれは楽しそうだし、ルールも何となく覚えた。女王は興味なさそうだったが。
それから、女王の使うインクだ。
特殊なガラスペンを使う時もそうだが、女王はインクにこだわりを見せていた。
歴代の王族達の記録を読む限りでは、王達は職務でさまざまなインクを使うことはあったものの、ヒロコのように使うもの一つ一つにこだわりを見せた王はいないようだった。
「これはペンタスというインク。綺麗な色でしょ?希望が叶うみたいな意味があるから、誰かのしあわせを願うのにちょうどいいの。」
女王はすべてに一つ一つ意味をつける。
それが見ていて楽しかったのかもしれない。
「私は何のインクで書いたんだっけ?オレンジ色のインクでしょ?」
私が聞くと、女王はフッと笑った。
「前にも言わなかったっけ?ブッコローさんはガーベラのインク。花があるんだけど、花言葉は冒険心って意味らしいよ。」
「冒険心?…変だな、別にどこかいくわけでもないのに。女王陛下の近くでずっと過ごすのだから。」
私が首を傾げると女王はクスクス笑っていた。
「冒険心を持って色々なことに取り組んでほしいからよ。競馬にも興味持ってきたんでしょ?私が消えた後も、ブッコローさんにはたくさんのことを見て欲しいから。」
女王はそう言うと手紙を折り曲げて、封をしていた。
「ふーん、まるでいなくなるみたいな言い方するじゃないですか。女王陛下冗談はやめてくださいよ。」
私がそう言うと、女王は一瞬だが悲しそうな顔をしていた。
私は女王の隣でなんだかんだずっと補佐を続けてきた。時には叶わない夢も、描くチカラだけではどうしようもないことも。
そんな時は私は女王に好きなインクについての話を聞かせてもらった。
それが僕には居心地がよかったのかもしれなかった。
何より女王が楽しそうなのがよかった。
「陛下、この赤いインクは?」
「これ?これが気になる?これは…」
こうして職務の間に女王からたくさんの話を聞く、質問すると女王は日頃の職務の中でどこで知識をつけているのか僕にたくさん教えてくれた。
それが私達の他愛もない日常だった。
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