第9話 新しい名前
「ライハイツ君を救うという選択をしなくて、よかったのかい?」
「うん、それでいいの。
俺が前へ進むためには、お別れが必要なこともあるから」
「そうかい。
お主は、本当に天然だな。
予想を上回る答えばかり出す」
「俺、天然とかじゃないって。
いつも、真面目に頑張っているし、天然がやるようなことをしていない」
「そうか・・・・。
自覚がなかったのか。
まあよい。
途中で気が変わったとか、言わんようにな」
「言わないよ。
俺が今までそんなこと言ったことある?」
「言ってはないけど、急な方向転換とかあるぞ」
「方向転換?
俺はスクイアットロとは短い付き合いだから、できようがないよ。
急にどうしてそんなことを言うのさ?」
「これだから、無自覚天然はほんとこわいな」
俺は中国で過ごした。
家の中でしか過ごせない。
死に寄せの魔力があるから、ホテルに行けばホテル内で事件が起こるし、外食先に行けば毒殺事件も普通に起きた。
こんな生活を送っていけば、次第に俺は他人の死に対する恐怖すらも感じなくなってきた。
俺は、近場では「歩く死神」として有名にもなる。
仕方がない。
俺のいる場所で、必ず事件が起こるから。
中国語は読めないし、書けないから、スクイアットロに翻訳してもらってばかりいた。
スクイアットロは、中国語をどこで覚えたのだろうか?
中国にはいるけど、中国語は一切わからないし、話せない。
それをスクイアットロが「無謀」って言うんだけど、それはどういうことなのか俺にはよくわからない。
家の前に、フードで顔を隠している人が現れた。
「そなたが、歩く死神なのですね?」
「歩く死神?
それは否定も肯定もできません。
俺は何もやってませんから」
「質問の答えになっとらん」
「そなたには、ライハイツと名乗る権利があります」
「え?
俺、名前を持っていいの?」
「許します。
そなたに、名前を持つ権利を与えます。
ただし、その名前は選べません。
ライハイツがいない今、そなたが英雄として、ライハイツの名を語るのです」
「よくわからないけど、俺は名前を持ってしまうと、その名前が呪いをかけるための呪文になるって聞いたので」
「普通なら、そうです。
ですが、そなたはこれから、英雄となろうとしていることをスクイアットロから報告を受けました。
ですので、そなたは今日から、ライハイツです」
「俺が、ライハイツ・・・?」
「そうです。
受け入れられないかもしれませんが、納得してください。
英雄は、自分の使命を選べません。
それと同じです」
こうして、俺は「ライハイツ」という名前をもらうことになった。
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