第7話 首謀者がいる限り、この惨劇は終わらない

 スクイアットロの言うことは、何も間違っていない。

 だけど、おいらは何か騙されている気がするんだ。

 何なのかわからないけど、大事なことを見逃している気がしてならない。


「時間をループする能力がもし、俺にあったら、間違いなく、ライハイツ君を救うためだけに使っていたかもしれない。


過去に戻れば、あいつが戻ってくるって、未来に進めなくなっていたような気がしてきた。


スクイアットロ、君は正論ばかり言う」


「よろしい。


お主は、正しい判断へ自身を導けるようになってきている。


だが、もう少しだ。


この死に寄せの魔力がある限り、どんなに過去に戻ったとしても、ライハイツ君は必ず、事件に巻き込まれて死ぬ。


それは、殺人事件かもしれないし、自殺を選ぶかもしれないし、事故に巻き込まれるかもしれない。


ただ、確実なのは、何かしろの方法で生きることが終わってしまうということだ」


「そんなにはっきり言わなくても・・・・。


病死とかはない?」


「死に寄せは、死を呼び寄せる魔力であって、病気は発症させないからね。


ここは、実はおいらも気になっていたところなんだ。


事故死、殺人、自殺、死に寄せの魔力を持つ者の悲劇は嫌というほど、おいらが恐怖がわからなくなるくらいは見てきたけれど、なぜかいつも病死というものがない。


ここが不思議なところなのだ。


それだけ、多くの謎が残されているってこと」


「俺、ライハイツ君を救うことが正しい選択じゃない気がしてきたんだ」


 俺は、ライハイツ君を救うことばかりが頭にあった。

 だけど、冷静に考えれば、それがライハイツ君のためになるのか?


「俺は、ライハイツ君のことを好きになっていたのかもしれない。


盲目的になりすぎて、まわりも、自分のことも、これからのことも見えていなかった。


だから、俺は相手が望んだことと違うことはするべきじゃない。


救わなきゃいけないのは、ライハイツ君個人じゃない。


この世界だ」


「世界を?


この広大で、人口があふれているような世界を、どうやって救うんだい?」


「いじめ殺しは、こうしている間にも、次々と人の命を奪っていく。


それって、見過ごせることではないはずなんだ。


だから、俺は・・・・、いじめ殺しの首謀者を見つけたい」


「首謀者?


おいらが見つけられなかった首謀者を?


いじめ殺しを作っている会社の社長かもって疑って、裏で操られていたとわかっても、首謀者を見つけらなかったんだぞ。


簡単にできないことを、やりきるかのように言っていいのかい?」


「首謀者がいる限り、この惨劇は終わらない。


何度でも、パラレルループをする。


だから、この根幹を切る。


これが、俺のやり方だ」

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