第39話:中間テストと母と鬼に金棒
「"テスト勉強なんてしてない"という奴は、だいたいがっつり勉強している」
……というのを、何かの漫画で読んだような気がする。しかし実際、僕はほとんど勉強せずに中間テストの一日目を迎えた。
*
「おはよう。……久しぶり」
「おはよ。連休は田舎に帰ってたんだっけ?」
朝一番、日々木さんにあいさつすると、前に日記に書いたことを拾ってくれた。
「うん。3泊4日で行ってきたよ」
「私も、昨日までは母方の田舎に行ってた」
ちょうど自粛明けというのもあって、この連休は久しぶりに帰省したという家が多いという話をテレビのニュースでも見た。
「なにか、収穫とかはあった?」
「えーっとね。……まあ、日記のお楽しみってことで」
中古屋というのは、同じチェーン店であっても売っているものは当然、店ごとに違う。遠出をしたときはその土地で店を巡るのが楽しみだと両親が言っていた。若い頃は、よくデートで古本屋めぐりなども楽しんでいたという話だ。
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「なんか思ったより楽勝だったな」
「うん、確かに」
最初の科目である数学を終えると、ソウタが話かけてきた。これも、おそらく本心であるのだろう。一学期の中間テスト、入学してわずか一ヶ月後なので範囲もごく狭い。
おそらく一年生にとっては、テストというシステムそのものに慣れさせるのも目的だろう。一つの時限をフルに使ってテスト問題に向き合うというのは小学生の頃には無かった経験だ。それも、業者が印刷したカラフルでイラストも多いテスト用紙ではなく、無機質な黒一色で印刷された用紙は、もう子供ではないんだなという印象を強くさせた。
何より、僕にとっては50分も拘束されるのが辛くて仕方なかった。問題自体は30分くらいで解き終わっており、見直しが大事だと言われても限度がある。小学生の頃は、終わったらさっさと提出して図書室で時間を潰したりしていたのだが。
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「終わったー!!」
社会と国語のテストを終え、ようやく解放された。簡単なホームルームの後、午前で帰宅となる。
「なんか、全然大したことなかったな」
ソラの言葉に、いつものメンバーが同意する。僕とソウタ、それにハルキとソラの4人は、割と勉強ができる方のグループに属する。得意科目で言えば、僕が数学でソウタが社会、ハルキが国語でソラが理科といったところだが、他の科目が苦手というわけではない。
「本番は明日の英語だけど、スペルミスに気をつけるくらいだよなぁ」
ハルキが言う。パソコンの『ウィザードリィ』というRPGでは、呪文のスペルを一文字ずつ入力する必要があり、間違えると失敗するなんていう雑学をこの前に話していたのを思い出す。
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「へえ、
家に帰り、日々木さんから受け取った日記を開く。母の実家の近くの中古屋で、ファミコンソフト『MOTHER』が安く手に入ったと喜んでいる。
さっそく検索する。任天堂によるRPG。(当時の)現代アメリカ風の世界が舞台で、超能力やゾンビ、宇宙人が登場する。タイトルにもあるように家族愛もテーマの一つ、ということらしい。
『MOTHER』のロゴは「O」の字が地球のようになっている。僕はMotherという単語をなかなか覚えられないというか、Fatherと混同してoとaを間違えることが多い。でも、このロゴを一度見たらもう間違えない。母なる地球のOだ。
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さて、僕のほうは昨日から引き続き『桃太郎伝説』を進めよう。花咲かの村から北に進むと、さっきまでボスだった銀の鬼が野生で出てきた。しかも戦利品として「鬼の金棒」を手に入れた。攻撃力が非常に高い反面、素早さが0になる。しかし命中率が悪い等というわけではないようで、敵から先制されやすくなるだけのようだ。
金太郎の村では、ニセ金太郎と相撲で勝負。Aボタン連打で吹っ飛ぶ鬼は、『桃太郎電鉄』で見た「モモスラの卵をふっとばす金太郎」にそっくりだ。しかし、ただのザコかと思いきや、正体を表して本気で戦うと普通に強く、負けてしまった。修行が必要なようだ。
陣羽織や鹿の足袋を買って装備を固めていく。隠れ蓑は装備品かと思いきや、一時的に移動速度が速くなる消耗品だったのにはがっかりだ。西にある大地の仙人の修行をクリアして、
近くにキジがいるらしいので探しに行く。犬によると、島にあるつづらの中にいるようだ。洞窟を通って進もうとしたが岩が邪魔して進めないので、いったん外に出て周囲を調べる。すると、南のほうの仙人の修行で稲妻の術を覚えた。これで岩が壊せるようだ。それにしても108回も連打させるとは。ジョイカードなる、おそらく連射機能つきのコントローラの宣伝までしているのが芸が細かい。
洞窟の中は普通の武器を装備した上で、相手によって鬼の金棒に持ち替えるのが、面倒でもベストなようだ。外からの見た目よりも遥かに長いダンジョンを抜けて、キジが仲間になった。この時点でレベル10。羽衣でワープして、今日はこのあたりでおしまい。
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