第8話:早起きと歯磨きと大人の味
4月17日(月)
海の敵への攻撃はよくミスになるが、サンダーやブリザドを使えば勝てる。毒を食らったりすることがないので陸地より安全かも。タランチュラはクモのくせにやたら強くて毒もってるので戦いたくない。毒消し高いし、毒を受けると一番うしろに勝手に移動するし。
メモ:毒を受けても、船で移動している間はダメージを受けない!
メンバーが全員レベル5になった。戦士が2回ヒットを出せるようになった。サンダラを買ったが、まだMPがなくて使えない。
メモ:命中率が32の倍数になるたびヒット数が増える!(戦士レベル5でシミターなど)
レベル6になり、全員のHPが100を超えた。そしてついに赤魔がランク3のサンダラを使えるようになった。これで海の敵があっという間に片付く! しばらくお金をためて、ミスリルソードを2つ買ったら先へ進んでみる予定。
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「こんなもんかな」
寝る前に、僕は今日の簡単な進行記録と、各キャラのステータスをノートに書いた。ゲームをしながら記録をするというのはどうも苦手なので、適当にタイミングがいい場所と、その日の終わりにまとめて書くことにしたのだ。
日々木さんはエルフの町に到着し、次の目的地である「沼の洞窟」の攻略に取り掛かっているようだが、全滅しかけて引き返したりして苦労している模様。パーティは戦士・赤魔・白魔・黒魔で、僕と比べると物理攻撃が貧弱で大変だろうなと思う。その代わり、白と黒はクラス3の魔法をレベル5から使えるのが強みのようだ。
「まだスペースが余ってるな。学校のことでも書くか」
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今日は部活見学に行ってきた。トレーニング部では、生徒会の書記をやっている先輩が案内してくれた。意外と女子が多かった。朝練は文化部かけ持ちの男子が多いらしく、午後練はトレ部オンリーの女子が多いという話。顧問は家庭科の先生で、栄養士の資格も持っているのでダイエットの相談に来る女子もいるんだって。
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女子が多いというのは素直な印象でもあったが、こう書いておけば日々木さんも入部する気になるんじゃないかと、少し期待したからだ。
そして、目覚ましアラームをいつもより30分早い6時半にセットして布団に潜った。
***
「おはよう。早いわね、もう部活始まったの?」
いつもより早く起きた僕を見て母が言う。なお、父はいつも7時前に出勤するので、もう朝食はできている。
「まだだけど、今のうちに早起きできるようにしておこうかなって」
「ファミコンで夜更かしするかと思ったんだが、その心配はなさそうだな」
納豆ご飯をかき込みながら父が笑う。
*
「お、タケルも納豆にカラシを入れるようになったのか」
「うん。チキンナゲットをマスタードソースで食べたら平気だったから、納豆のカラシもいけるかなって」
そういえば、父と一緒に納豆を食べるのはずいぶん久しぶりのような気がする。中学になってからはいつもカラシを入れるようにしてたのに。
「そっか。今度シュウマイを食べる時はカラシを買ってこないとな」
今までは、僕が使わずに余らせていたカラシを使っていたのだ。
*
「ごちそうさま!」
僕は生卵と納豆でご飯をかきこんで味噌汁を飲み干す。
「おう、もう行くのか?」
「うん、歯磨きしてからね!」
洗面台で歯を磨いていると、両親の会話が耳に入ってくる。父は、僕が毎朝歯を磨くようになったのが意外らしい。好きな女の子でもできたんじゃないかとか言っているが、図星だ。
**
「おはよう」
「あ、おはよ」
教室に入る前から予感がしていたのだが、やはり日々木さんがいてくれた。他の生徒はまだ来ていないか、来ていてもそれぞれの部活の朝練を見学に行っているところだろう。わざわざ教室に残っている生徒は他にいない。
「日記、書いてきたよ」
「えっ……ありがとう」
まるで、僕がちゃんと書いてくることが意外であったかのような反応だ。彼女は日記を受け取ると一瞬ページを開こうとしたが、開かずにそのままカバンの奥にしまった。
「これ、今日の分の日記を書くのに使って」
僕にクリアファイルを手渡してくる。中にはルーズリーフのページが10枚ほど入っていた。
「え、悪いよ。そのくらい自分で買おうと思ってたのに」
「……じゃあ次からはそれで。今日は私のおごりってことで」
彼女はにっこりと笑う。アプリクーポンの分と漫画代が相殺されているので、これで彼女に「借り」が出来てしまった。この微笑みはお返しを期待しているのかもしれない。
*
「それじゃ、部活の見学に行ってくるから。またね」
間が悪くなってきたので、僕は一旦この場を離れることにした。そういえば、日記には書いたけど彼女にはまだ部活の話をしていなかった。どこに入るつもりなんだろう。あとで聞いてみようかな。
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