支配された村

和田いの

「食いもん用意してあるか?」

「はい。こちらに」

「なんか前より量が減ってるような」

「いえ、そんなことは...」

「人手が足りなくなってきたか。もっと監視増やした方がいいな」


この村では、鬼が村人たちを奴隷のように扱い、24時間体制で数人の鬼が村を監視して周っている。それでも稀に逃走者が現れ、だんだんと村人の数が減ってきていた。

そんな鬼たちのやり方に不満を持つ鬼がいた。その鬼はチャンスを見つけては村人たちを逃し続けた。


今夜も逃走を図る者たちがいる。

「そろそろ見回りが来る時間だ。そいつが通り過ぎたら行きな」

「ああ、ありがとう。お前さんへの恩は一生忘れねぇよ」

「まだ礼を言うのは早いさ。俺もいずれここを出る。もしまた会うことがあったら、外の話、聞かせてくれ」

「いくらでも聞かせたるさ」

「来たぞ...」

鬼は通り過ぎていき、そして見えなくなった。

「達者でな」

「ああ」

村人たちが歩き出したとき、どこからか鬼が現れた。

「おかしいと思ったよ、お前が出かけてる時に限って逃走者がいるんだからよ」

「...」

「ちょっと怪しかったんで、つけさせてもらった。てめぇなんで村人逃してんだ?」

「あんな奴隷にして心が痛まないお前たちがイカれてんだ」

「は?」

「逃げろ、こいつは俺がなんとかする」

「鬼のくせにヒーローぶってんじゃねぇよ!」

棍棒と棍棒の殴り合いが始まった。その間に村人たちは泣きながら逃げた。

「すまない...」


数分後、そこには真っ赤に染まった鬼が1体倒れていた。傍には鬼が一体と人間が2人と猫が1匹と熊が1匹とカラスが一羽と犬が1匹と猿が1匹と雉が一羽いた。

「助かりました。ありがとうございます」


2年前桃太郎に追いやられた鬼たちは、遠くの地で村を襲い、その村を支配していた。鬼達は村の名前を鬼ヶ村と名づけた。

あるとき村から逃がしてもらった村人の1人が、桃太郎に助けを求めた。桃太郎のことは自分を救ってくれた鬼から聞いていた。その鬼は2年前に、鬼ヶ島の一件で過ちに気づき心が揺れていた。


桃太郎はかつての仲間と共に、村人の案内で村へと向かった。

道中では新たな仲間を加えた。鬼ヶ島での出来事が噂で広まり、それを聞きつけた者達がきび団子がほしいと話しかけてきたようだ。


村の近くまで来たところ、鬼が殴り合っているのが見えた。

「あ!あそこで戦ってるツノの長い鬼が私を救ってくれた鬼です!」

村人の言葉を聞き、桃太郎達は走り出した。


桃太郎は鬼ヶ村の鬼たちも倒し、縛りあげた。そして、もともと鬼たちがいた場所、鬼ヶ島へ連れて行った。

鬼たちの足には50キロ程の重りをつけ、島の周りから船を全て持ち帰った。これで鬼たちは、島から泳いで出ることもできなくなった。

それからは一日に一度、村人が船で鬼ヶ島へ向かい、遠くから豆を投げて食べさせてあげているらしい。

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支配された村 和田いの @youth4432

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