第32話
「さすがに、やりすぎだぞ……」
黒兎はベッドに横になったまま、下着をはいていた雅樹を睨む。
ほぼ初めてに等しいにも関わらず、今日の一回で色んなことをさせられた身としては、文句の一つぐらい言ってもいいだろう、と思う。
けれど、雅樹はにこりと笑って余裕の表情だ。
「え? まさか、あれで私が満足しているとでも?」
「え? ……は?」
黒兎の額に冷や汗が浮かんだ。確かに、あれだけのことをしておいて、雅樹が達したのは一度だけ。足りないと言われれば、分かる気もするけれど。
「私はね、好きな人のことなら何でも知っておきたいんだ」
意外と粘着質なんだよ、と言われ、人脈の外に弾かれていた時とのギャップに目眩がした。
(これ、雅樹を慕う女性が知ったらどう思うかな……)
そんなことを考えて現実逃避するくらいには、黒兎は疲れていた。まさか、心の内に入れたら優しいどころか、とことん甘やかされて泣かされるとは。
「とりあえず、今度休みが合った時は、別荘にでも行ってのんびりしようか。そこでもっと黒兎のことを知るのも良いかもね」
そんなことを笑顔で言う雅樹。なまじ金と権力があるだけに、本当にことを起こそうと思えばできてしまうから厄介だ。
「……っ、頼むから、普通のお付き合いしてくれ!」
黒兎は堪らず声を上げたのだった。
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