海の輝き
@yagihiro
第1話 影に隠れる光
──僕が10歳の時、
父様に聞かれた事がある。
アルセウス、あの海の向こうに
何があると思う?
「わからないです…とうさま」
ハッハッハ!と大きな声で笑いながら
そりゃそうか!と言う父様は僕にこう語った「父さんはなぁ、あの海の向こうに…
大きな…大〜きな!宝があると思うんだ。」
たから…ですか?
「あぁ、心に残る…大きな、宝だ!」
大きく口を開けて僕にそう言った
この言葉を聞いて僕は父様に目を向け、
大きく開いて、決意したような顔で言った
─いつか…
「いつか、僕が海の向こうへ行きます!
そして、父様に見せます!」
─偉大なる海…そして、きっと…
更に輝いている海のその先を!
父様は僕にこう言った
「あぁ…それは楽しみだな!」と…
─────あれから5年
「アンウィルドグレイ……」
と呟く一人の男がいた その男は今にも
泣きそうな顔で続けて一言呟いた
「父様…」と─
そうだ、この男は
アンウィルド アルセウス。
そう、今は亡き父
「アンウィルド グレイ」の息子だ。
グレイはこの世を立ち行く前、
アルセウスに言った。
──海の向こうへ…いや、その先を…
諦めないで…見てほしいんだ…。
と…。その翌日
父様はあの世へと逝ってしまった。
─そこからどうしたものか、
僕は根暗な人間になった ずっと家にいるし…
あの時が一番輝いてた…僕はもう…輝けない
─と そんな事を思っていた根暗な日々、
僕に転機が訪れた。いつも通り
何もせずだらけていた真昼間の出来事だ
ポストの小さな扉が「カチャリ」と
音を立てた。そう、手紙が届いたのだ。
家を出て、ポストを確認する。
うん、やっぱり入ってる…
「アンウィルド アルセウスへ」
僕の名前…誰から?
家に持ち帰り、珍しく椅子に座って早くに
封筒を破って中を見た。そこには
『息子へ』
と書いてあった。
─これは…まさか…父様から…!と
何が書いてあるのか、亡き父からの
手紙に心臓が高鳴る。そして、
じっくりと読み進める。
─── 我が愛しき息子へ
この手紙を読んでいる頃は、
お前はもう13歳か、早いものだな。
時間が来る前に 父さんについて話しておこう
父さんはな、実は冒険家を目指してたんだ。
だが、父さんが27の時
後数年しか生きれないと言われた。
お前が8の時、海の向こうについて話した事、
覚えているか?あの時から父さんは
頭を痛めていた。医者に聞けば…
まぁ、そういうことだ。
今しか話せないから、父さんはここで言うよ
父さんの夢はな、世界を知りたい。
世界を回って色んなものを見てみたい
それが父さんの夢だった。
でも、俺はもう生きられない
だから、上から見させてほしいんだ。
自分の夢だった事を息子に押し付けるなんて
良くないことだって分かってる。
だけど、父さんはお前に行ってほしい
見てほしい。
行って、世界を回って、
─そして、見てきて欲しいんだ。
広い世界に広がる、海のその先を。
長くなってしまったが まぁ、
そういうことだ!だから…
良かったら…行ってほしい。
僕はこの手紙を握りしめながら、
いつの間にか頬に涙が垂れていた。
こうしゃいられないって、変わらなきゃって
心の底から、思ったんだ。
「父様、上からちゃんと見てておくれよ。」
─こうして、僕の旅が始まった。
海の輝き @yagihiro
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