異世界召喚された俺、食い扶持はドラゴン飼育員 ~特にチートとかないので、常識の範囲内の強さで仕事するしかねえ!~

赤夏デンデロデロリアン

第1話 俺ってこんなやつ

さて、俺という人間を語るには、まず今の仕事から説明せねばならないだろう。


俺の生業とは、つまり、ドラゴンである。


おはようを一日の始めに言うのはドラゴンで、ドラゴンにおやすみを告げて一日を終える。


朝から晩まで、ほとんどドラゴンと過ごす日々だ。


この世界に『召喚』されたとき、俺には何のチート能力も与えられなかった。


力こそパワーな先代の王は、俺を一兵卒として戦争に駆り出した。


何とかせせこましく生き延びているうちに、やつは崩御して、今の博愛主義の王に代替わりしていた。


生命の尊重を謳う現王は、俺たち異世界召喚者を呼び集めて、王都に内勤するよう勧めたが、まあチートなんて貰う連中は、皆奔放に飛び出してしまうもので、結局職に就いたのは俺ひとりだけだった。


そんなわけで、俺は今、『魔獣管理局』の一部署、『竜庭園』の管理者―――まあ、早い話がドラゴンの飼育員として働いている。


王都から馬車で一時間、小さな半島をまるまる岩壁で囲った庭園の中に、ドラゴンたちの『宿舎』はあった。


鉄の門扉を押し開けて、すぐ近くにある倉庫で作業着に着替え、スコップや手押し車など、必要な道具を用意して園内に向かうのだが、初っ端からひとつ山場を迎える。


雪山に暮らすハイベルニア・ドレイクの『宿舎』が、庭園の一番初めに位置するのは、はっきり言って設計ミスだ。


寝覚めのコーヒーを飲んで暖めた体に、彼らの好む温度に保たれた室内はかなりこたえる。


健康状態を調べるために、糞の採取をし、剥がれた鱗や毛は、さまざまな魔術や武具の素材となるのですべて集めなければならず、水も食べる餌も凍っていては摂取しないので、保温のための『魔動機』を動かし―――


そんな作業をこなす間に、すっかり体は冷え切ってしまう。


コーヒーで温めた胃腸は、なまじ活動を始めてしまっているので、余計にお腹は下すし、日がな食欲も失せるのだった。

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