闇の中のつぶやき

進藤 進

第1話 追いかける闇

カツカツカツ・・・。

コツコツコツ・・・。


闇の中、音が重なっている。


一つは私のヒール。

もう一つは。


分からない。

低い音。


男?


カツ・・・カツ・・・。

コツ・・・コツ・・・。


私が歩を緩めると。

同じように緩める。


ドクン。

心臓が脈打つ。


カツカツカツカツカツカツ。

コツコツコツコツコツコツ。


私が速めると。

同じ速さで。


冷たい汗が背中に。

無意識に右手がポケットを探る。


カツカツカツカツカツカツ。

コツコツコツコツコツコツ。


振り向けない。

振り向いたら。


「はぁっ・・はぁっ・・はぁっ・・・」

やっとたどり着いたアパートのドアを後ろ手に閉める。


心臓の鼓動が収まらない。


薄闇の中。

白い影が霞んで見える。


震える手で。

照明のスィッチを押した。


明るさに少し、ホッとする。

そのまま玄関のフローリングに座り込んでしまった。


私は元々、怖がりだ。

しかも、昨夜のことがあったから。


今朝の大家さんとのやり取りが頭に浮かんだ。

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