5

 雪景色に彩られた外を2人で静かに眺めながら観覧車は頂上に着いた。海里は「さっきのこと覚えてる?」と呟いてきた。私は頷くと瞼を閉じた。海里は私の肩に手を置くとそっとキスをしてきた。まるで壊れ物に触れるかのようにそっと優しく――。


「っ…!」


「どうしたんだ彩花。なんでさっきから泣いて?」


「もう無理だよ、こんなの辛すぎだよ……! 海里は私を苦しめる為にこんな残酷な夢を私に見せるの!?」


 両手で顔を覆うと海里の前で私は泣いた。胸が締め付けられるくらい苦しくなると、堰をきったように泣きだした。


「彩花……?」


「私わかったの…! はじめはわからなかったけど、過去に戻ってるって…――! 高2の時に海里、私とクリスマス前に一緒に遊園地に行ったよね。それにあの時、聴いた音楽も同じだった…! それで私の気のせいじゃないって思った……! それに今も観覧車だって…――!」


「彩花、お前……!」


「このクローバーの指輪だって私に送ってくれたよね、ほら見て! ネックレスに飾ってある指輪、海里があの時、私に贈ってくれた指輪だよ!?」


 私は取り乱したように彼に話すと、首に飾ってあるクローバーのネックレスを見せた。海里は驚いた顔をしていた。


「私、わかるの……! きっとこれは私の夢だって、恋人を失って、独り寂しくしてる可哀想な女の子に気まぐれな神様が見せてくれた幸せな夢だって、きっと目が覚めたら貴方は私の前から…――!」


「彩花っつ!!」


 海里は私を腕の中に抱き締めると「何も言うな!」と言ってきた。私はその言葉に疑いは確信した。だって亡くなった人がいきなり蘇るなんて、そんなの都合の良い夢物語りだ。海里は一年前にクリスマスの前に交通事故で亡くなった。その日は私の誕生日だった。待ち合わせ場所に待ってたのに彼は来なかった。鳴らない携帯を握り絞めて私はずっと彼を――。


 彼が亡くなったのを知ったのはその後だった。海里が交通事故で即死した事を知った時は、私の中で漠然と全てが音を立てて壊れた。私は最後に彼の死に目にも会えなかった。それが私の中で忘れられなかった。いつも思ってた。これが夢なら、夢だったらって何度も思った。あの日、あの時、私に会いに彼が来なければ良かったって。それが私の中で罪のように重く心にのし掛かっていた。彼を忘れよと次の恋をしようとしても、私には海里しか居なくて他には何も無かった。


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