第8話

ルルツはカルラが幻覚を見せることを応用して、それを伝播させる増幅器を作り、それをヘルメットの上にとんがった部分に送り込むという装置を作った。これだとこのヘルメットをかぶっている者はカルラのクオリアクラウドを30人ぐらいが同時に見ることができる。しかしこの場合は壺と違って自分が探したいイメージではなく、カルラのイメージが飛ぶというカルラのメンタルの部分に依存するところがあった。


「カルラ、大丈夫?とりあえずこんな装置を作ったけど、カルラ自身の負担は取り除けないよ?」


「うん。いいの。私の場合は一時だから。それに少し休憩を取れば治るからさ。それより病院に行って苦しんでいる人達を楽にしてあげない?」


「いいけど、薬の方なんだけど、前回作った薬は脳波を強く出せるのと快楽を出すのを目的で作ったけど、痛みをやわらげるとなると、モルヒネ系統の薬がいいのかな...」


「その辺のことはルルツに任せるよ!私はルルツを信用しているから!」


「わかった。カルラの負担も軽減できるとしたらモルヒネ系統の薬に脳波を安定させるかつ強く出せるやつを作るよ。」


そう言った点ではルルツは秀才だ。そのオーダーを見事にクリアすることができるからである。


数時間後。


「よし。出来た。実験はどうしよう?いきなり病院にいる方にするわけにもいかないしな。そうだ。」


ルルツはナイフを取り出し自分の腕を切りつけた。


「うりゃ!いてててて...。さて試してみよう!」


「ルルツって本当に馬鹿じゃないの!?取り合えず急いで実験しなきゃ!」


そういってルルツはヘルメットをかぶり、カルラは薬を飲んで痛みをやわらげるイメージをした。


「あぁ、これはいい。心地いい。腕の傷なんてなかったものみたいだ。むしろこれはドラッグだ。いや、それを超越するそんな気持ちよさだ。」とルルツ


「う~ん。ドラッグだったらドラッグを手にしたほうがいいんじゃない?」とカルラが手当しながら言う


「いや、これは中毒にもならないし、負担もない。しかもそれを超越するんだから。しかし、この場合だとカルラのイメージだけだから持続性がないな。ヘルメットを脱いだらなくなってしまう。やはりこれに対応する何かを作らなければ...。あぁ、そうか。壺のような保存器を作ればいいのか。それだと小さい壺を何個も作ることになるのか?いや、カルラのイメージに頼るのだから相手の脳も使うことになる。だから直接届けて保存器にしばらく貯めておくコンデンサーみたいなものでいいな...。」


「ところでルルツはなんで動物などの脳を使わないの?そっちの方が早いんじゃないの?」


「まぁ、それはそうなんだけど、動物などの脳を使うとその動物の個性が出ちゃうからそれがノイズになっちゃうかもしれないからさ。それになんだか倫理に違反する気がして。」


「そっか。ルルツはちゃんと考えてるんだね。」


数時間後


「電極を二階層に分けて作り、そこに有機疑似脳を電解液にして出来上がり!」


「ほんとルルツって凄いのかバカなのか分からないよね。」とカルラが苦笑した


「さて、これを瓶に詰めてヘルメットと繋いで、金属の輪っかとこのコンデンサーをつないでおけば、ヘルメットを脱いでもしばらくは続くだろう!」


それから二人は病院に向かった。病院に行って、癌の末期患者に試してみた。


「さぁ、これを試してみてください。これはあなたの命を救うことはできませんが、痛みをやわらげることはできます。よければ、どうぞ。」


「そうなんですか。試してみます。」


やせ細ったおじいさんがヘルメットをかぶってカルラの祈りを待った。


「ああ、ありがたや。ありがたや。私はもうこのまま逝っても悔いはない。本当に極楽はあるんじゃな。おじょうちゃんかな?こんな魔法を使えるのは。あんたは天使だよ。」


安らかな表情でニコリとおじいさんは微笑んだ。


「ありがとう、おじいさん。私、自信がついた。これから人のために生きていく。」


そうしてルルツとカルラは病院を回って色んな人の苦痛などをやわらげた。特に精神病などにはてきめんの効果を発揮した。


されど人間の欲にはキリがない。壺やカルラの能力を求めて人々がルルツの研究所に殺到した。もうほとほと悩まされたときに


「この道を開けよ!王様より直属の命である!道を開けない者は切り捨てる!」


そう言ってエリックがやってきた。


「ルルツ、そのおじょうちゃんと城の中の研究所に入ってくれ。リューベリッヒ博士が共同研究したいと言っている。もちろんルルツやカルラの命の保証はする。今の状態よりはマシだろ?」とエリック


「共同研究だって?僕の研究はほとんど終えている。それをむざむざと他人に引き渡せってことか?」とルルツ


「それが最近おじょうちゃんの能力を求めて隣国のカルディナ帝国が我がアルカデア王国に進軍するのではないかと懸念されている。そこでおじょうちゃんの能力を使ってどうにかならないものかとルードベル王直々の命が下ったのさ。」


「なるほど。それなら仕方がないか...。カルラ、それでもいいか?」


「うん。ルルツがそう言うならそれでいいよ。」


to be continued...

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