氷の魔女の異世界放浪記

里予木一

序章

カスタネルラ

 もらった名前は、楽器から。同期にはホルンやフルート、チューバなどがいて、なんとなく格好良くて羨ましかった記憶がある。


 でもそんな美しい楽器たちは、毎日の厳しい訓練で少しずつ傷つき、壊れていった。私みたいな頑丈な子は、傷つきながらもずっと音を奏でることができた。


 ――でも残念なことに、あまり綺麗な音は出せなかったけれど。


 カスタネット。そこから派生した、カスタネルラ、というのが名前。――カチカチと、震える歯のぶつかる音を聞いて、私にぴったりの名前だな、と場違いに思う。


 ――化け物が、こちらを見ている。


 規格外の、巨大な紅い竜。瞳を見ただけで、逆らってはいけない存在だとわかる。なのに私はこの化け物を退治する役割を担っていた。


 ああ──なんでこんなことに、なったんだっけ――――。

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