第11話 爆炎!コカトリス!

 コカトリスに付けた紐を追っていくと、コカトリスの巣についた。


「おお、本当に巣に着いた! すごいな、セレスト?」

「……恥ずかしくなってきたので、葵って呼んでください。昔からこんな事ばっかり考えてて。現実世界にモンスターが出れば役に立ったんだけどね」


「今役に立ってるじゃん。助かるよ!」

「今更でも役にたってるからいいか……。辿り着くまでが私の役目。コカトリスはあなたが倒してね!」


 2人でコカトリスの様子を草陰から見る。

 洞窟のような場所にコカトリスが見える。さっき帰ってきたやつらと、元々巣にいたやつがいる。


「敵は6匹か。じゃあ、行ってくる!」


 茜さんは目にもとまらぬ速さで飛び出して、次々に攻撃を当てていく。

 力を使いこなしている。信じる力っていうやつなのね。


「おりゃーーーっ!」



 ――ヒーローの力っていいな。私にも力があれば……。


 あっという間にコカトリスを6匹とも倒してしまった。


「よし! ‌倒したぞ!」


 茜さんがこっちへ向かって帰ってくる。



 ――これだけなのかしら。

 巣が見つかったと思ったから、倒してしまったけど。奥に女の子がいるのかな……?


 けど、コカトリスはみんな同じ大きさだった……。

 ボスがいると思ったのだけれども……。


「なんてことなかったな! 女の子探そうぜ!」


 笑った顔で茜さんが帰ってくるが、その後ろにコカトリスが現れた。


 ――洞窟の奥にいたんだ。動きが速い。


「茜さん! 後ろ!!」


 茜さんが後ろを振り返る前に、コカトリスは茜さんに突進した。

 今までのやつらよりも早い。

 突進された茜さんは、吹っ飛ばされてしまった。


 早いだけじゃなくて、他のやつより力も強い。


「こいつがボスのようね……」



 さらに言えば、このコカトリスは女の子をくわえている。

 逃げないように加えているといったところだろうか。

 鳥の習性ね。


「お姉ちゃん助けて……」


「くっ……。私一人じゃ何もできない。魔法なんて使えないし。このままじゃ私もやられて」


 コカトリスがじりじりと迫ってくる。


 にらみ合っていることで、急には迫ってこないらしい。

 視線を感じると慎重になる。



 万が一の時のために爆炎玉ばくえんだまなんていう強力そうな魔法アイテムを持ってきたけど……。

 説明書を読んだら半径10mは吹っ飛ぶくらいの力があるらしい。

 ここで使えば、あの子も私も無事じゃすまない……。



「魔法少女のお姉ちゃん! 助けて!」

「魔法少女……。私のことをそう呼んでくれるのね、お嬢ちゃん。私もそうやって堂々と名乗りたかったけど、残念ながら私は魔法少女じゃないんだ。魔法が使えないんだもん」


 じりじりとコカトリスが近づいてくる。


「……お姉ちゃん、助けて。」

 ここまでずっと耐えてたのだろう、少女の瞳から涙が溢れ出てきた。



「……私が魔法少女じゃなかったとしても、貴方だけは助けられる……」


 コカトリスの攻撃範囲へと入ってしまった。

 もう、逃げられないわね……。

 覚悟を決めるしかないか……。



「……私は魔法少女じゃないけど、……今でも魔法少女になりたいよ。お嬢ちゃんは、大きくなったら魔法使えるようになりたい?」

「私も、魔法が使いたい。魔法が使えればこんなトリさんなんて倒しちゃえるもん。街のみんなを守りたいもん」


「うん。そうだよね。その気持ちを持っている貴方なら、絶対になれるよ! 他のどんな子よりも貴方が一番ふさわしい!」


 コカトリスは私の目の前で止まった。


「……私は小さいころに、大勢から否定されて、心の奥底に夢を引っ込めちゃったけど。貴方ならできる! みんなからバカにされても、周りの人の意見なんかに負けないで! ‌夢を曲げずに言い続けるって素敵だよ! ぜっっったいに、貴方は魔法少女になれる!!」

「……うん」



「諦めないで目指し続けてね。広場で小さい魔法が出ているの、私は見えたよ。貴方ならできる! そして人を助けようとするその心。それがあるなら、絶対に大丈夫!」


 ――爆炎玉、これを使うしかない。


「この世界では、思いの力が外に現れるのよね、茜さんみたいに。私も一緒に信じるから、しっかり耐えてね! 貴方は立派な魔法少女になれる!」


 ――自分の夢を信じてくれる人が1人でもいれば、思いはもっと強くなる。

 私がこれだけ信じてるから、女の子は爆炎玉にも耐えられるはず……。

 私は、ここで終わりだな……。

 自分のことを心の底では信じられていないんだ……。

 魔法少女になりたいと思いながら、魔法少女になれない時のことばかり考えて、いっぱい勉強なんかして……。



 女の子は、泣くのを止めて私の方を力強く見た。

「ここまで助けに来てくれたお姉ちゃんは、とっても強い魔法少女だよ!」


 濁りのない瞳で私を見つめて、そう言った。

 言葉からは、お世辞のような嘘偽りといったものも感じられなかった。



「……ありがとう。……子供って純粋でいいね。私も自分を信じたい」


 爆炎玉……。スイッチを押したら数秒後に起動してこの辺りが吹き飛ぶ……。

 ……できれば私もこんな所で死にたくない。

 もっと自分を信じてみたい。

 魔法少女になりたいよ……。


 ……思いは口に出さないと始まらないって、昔親友から聞いたな……。




「……恥ずかしがらずに、もう一度、昔みたいに言うよ! ‌私も魔法少女になりたい!! 魔法少女になって悪い敵をやっけたいよ! ‌‌夢は信じ続ければ叶うんだもんーー!!」


 爆炎玉のスイッチを押して、コカトリスへと投げた。

 爆炎玉は爆発して、辺り一面は爆音と共に赤い光に包まれた。

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