破壊と創造の世界
もちっぱち
第1話
ここは、とある小さな村。
そこには、わずか十歳の男の子のルヴァイという少年がいた。
ルヴァイは、母が育てた畑で石をよけるお手伝いをしながら、的当てゲームをして楽しんでいた。
「ルヴァイ! 石よけ作業終わった?」
開拓されたばかりの村で、壊れたパソコンや家電のガラクタがたくさん落ちていた。
すぐ近くには砂漠が広がっている。
空気はとても乾燥していて、風で舞い上がる砂埃で咳き込むほどだった。
「まだ終わってない。」
母のローラがくわを持ってやってきた。
呆れたため息をつく。
「もう、遊んでたんでしょ。やりたくないなら、あっちの井戸の水汲みやってて。私がするから。」
縛りから開放されたルヴァイは、喜びながら駆け足で井戸へ向かう。
「はーい。」
ローラは、またため息をついて、袖の腕まくりをすると、気合を入れてくわでうね作りを始めた。
どうして、現代の便利な時代にこんなアナログ的な畑をしなくてはならなくなったのか。
母のローラも、考えもしなかった。
この村だけではない。
この世界の住人はすべて、畑を作らざる得ない環境になったのだ。
それは、約二ヶ月前のことだった。
村内放送がサイレンが鳴り響く。
『本日から、この村は、国王の指示のもと、全ての村人は仕事をしなくてよいことになった。毎月のお金は国からの十万円を支給することとする。また、家電製品全てと車や、家を国に寄贈することが絶対条件だ。もう一度言う。もう、どんな仕事もしてはいけない。お金を稼ぐことは禁止とする。以上各自、家の中で待機するように。』
隣の家に住むマーズのお父さんが放送をしていた。
国の考えがよく分からない。
ものをすべて奪われて、お金は支給する? 十歳のルヴァイでさえも、道理に合わないことをする国がおかしいことに気づく。
放送が、流れて、村のみんなは全ての家財道具を外に出し始めた。
炊飯器、冷蔵庫、電気ポット、テレビ、大体みんなの家に置いてあるものだった。
「お金が支給されるなら、働かなくてもいいんでしょ。早く家を出る準備しなくちゃ。」
マーズのお母さんのジェニファーが慌てて、家の中のもの全て出していた。
マーズは、ぬいぐるみを抱いて異常な動きをするジェニファーを見て、動けないようだった。
「おかあさん、マーズの家は全部外に出してるみたいだけど、家はどうすんの? 出すの?」
ローラは、ブツブツ独り言を言いながら、メモに書き出していた。
そのメモは字になっていなかった。
二階から、父のロバートはおりてきた。
「おぅ、ルヴァイ。何やってるんだ? 学校はどうした?」
眠い目をこすりながら、ロバートはルヴァイの頭をポンポンと優しく撫でた。
「父さん! 目をこすってる場合じゃないよ! 大変だよ。さっきマーズのお父さんが放送してて、この家とか全部、国に渡さないといけないってよ?」
時間は朝の八時。本来なら、学校で授業を受けている時間。
村の放送を聞いて、いつも通りに勉強してる場合じゃないと察した。
ローラはブツブツ何か言っていて混乱してるようだ。
「国に全部渡す? どういうこと、それ。嘘でしょ…ハハハ、面白い冗談だな。」
インスタントコーヒーをマグカップに入れて、答えた。
緊急事態にとても悠長な父だった。
「冗談じゃないよ! ほら、見てよ外。自衛隊の人達が村を取り囲んでるよ!」
カーテンを開けて外を見ると、迷彩柄の服を着た自衛隊の人たち二十人が、たいまつをもって立ち並んでる。
リーダーらしき人がメガホンを持ってこちらに向けていた。
『すべてのものに告げる! いますぐそこから立ち退きなさい! あと十分後にすべての家に火をつける。もう。この家々は君たちのものではない。我が国の支配下にある! 全焼したことを確認したものからドローンにより、国からの御礼を支給する。急いで家を燃やしたものはより多くの御礼をもらうこととなるだろう。さぁ即刻行動するんだ』
ルヴァイの家族は、慌てて、家の中の
生活必需品をリュックに詰め込むと、自衛隊が立ち並ぶ広場へ駆け出した。
「父さん、荷物は全部持ってきた?」
「スマホと、髭剃りとノートパソコンと…財布がない。うわ、やばい。持ってくるの忘れてた。」
ロバートは、家の中へ戻ろうとしたその時、既に時は遅し。
たいまつを持った男たちは家々の窓にバリンとごうごうと燃えたたいまつを投げ入れた。
「あーーー、おれの財布…。」
膝からガクンと泣き崩れた。
横でルヴァイは肩を撫でてあげた。
「父さん、今言ったもの。全部意味ないんだよ! さっき言ってたじゃん。お金はすべて支給されるし、家電は使えないから持ってても意味ないよ。」
「お、おれは…お金じゃないんだよ、ルヴァイ…。お前が生まれたばかりの写真が、俺の財布に入っていたんだよー。うぅ・・・小さいときのルヴァイがいないー。」
「なんか今の俺には複雑な心境だよ、父さん、確かに赤ちゃんの俺は可愛いとは思うけど、本人ここにいるからいいじゃん。十年も経ってしまいましたが……スマホにデータ残ってないの? まだ電池あるうちに見てみればいいじゃん。」
泣きながらポケットのスマホをフリックしてみた。
「あるといいな…俺のルヴァイ…。あ!」
「俺のルヴァイってここにいるし! あった? 写真。」
「電池が残り一パーセントしか無い!」
「え? マジで? 無理じゃん。」
「俺、おわた。」
膝からまた泣き崩れたロバート。
リヴァイはヨシヨシと頭を撫でる。
どっちが子どもなんだか……
「おい! お前たち、何をしている?! 家電はすべて没収と言ったはずだ。」
「え、あ、え。すいません、間違って持ってきてしまいました。どうぞ!」
迷彩柄を着た男が長い銃を片手に言っている。
ルヴァイたちは急いで持っているスマホなどの家電を男が持っている大きな皮袋に入れた。
武器を所持しているため、みな恐怖を感じていた。
近くではさっきたいまつで火をつけた家が勢いを増して、燃えている。
本当ならば、火事だと言って消防車を呼ぶはずなのに、呼ばない。
不思議な感覚。
なんで家を燃やさなきゃならないんだろう。
住宅ローン三十五年の両親が三十歳の時に銀行からお金を借りて建てた家ルヴァイが生まれた年に買ったものだからまだ十年しか経ってない。
この家は太陽光発電を取り付けていた。
また蓄電もできる装置もつけたばかりだった。
どこも家の損傷はないのに国の方針で燃やすことが決まった。
働いてはいけない。
表向きは貧富の差を無くすためだとかいう。
裏では、働かずにして引きこもらせて命そのものあり方を問われる。
全員お金を稼いではいけない。
その代償で、国から支給されるが、どうやって暮らしていくのか。
家電すべてを使ってはいけない。
なぜか。
資源を減らしてはいけないからなのか。
ガソリン、灯油、火力発電には、石油というものが使われている。
それは無限にあるものではない。
有限なもので、どこかの国に油田があり、そこから石油として灯油やガソリンに精製されていく。
火力発電には火を起こすために、石油や石炭 液化天然ガスが使われている。
その資源が遂に底につきそうだと言うのだ。
原子力発電もあるが、国民の反対で使うことができなくなった。
地震や災害などで受ける影響のリスクが高いことがデメリットだった。
放射能の影響が懸念されている。
ますます、人はこの世界に住むのが窮屈になりつつある。
電気を使える便利な社会を作った。
明るいライト、車、スマホ、これを使うには石油がないとできない。
でも、そのまもなくこの石油が枯渇する。
国はそれを恐れて、使ってはいけないと禁止し、その中で暮らしていけるかを国民に問うた。
でも、あまりにも人口が多いがために様々な壁が生じることに気づいた。
新たなミッションを与え、それをコンプリートできるものだけが生き延びるとするらしい。
便利な世界から、岸壁から岸壁に繋いだ綱渡りのように、生か死かをどちらがよいかを選ばなければならない。
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