第15話 SSS(EX)級覚醒者VS SSS級覚醒者

『ハハハハハハハハッッ!! 中々に良い蹴りだ!!』

「お褒めに預かり光栄だな。まぁそこまで力は入れていないんだが、随分吹き飛んだな?」

『ほざけッッ!! 銀色になった所で強くなっていないことは丸見えだぞ!? そんなんで俺の攻撃を防ぎきれるか!?』


 未だ学院が見える程度の高さの上空にて、アメリカのSSS級覚醒者『破壊者』の二つ名を持つベン・アレスが、空中にも関わらず立体的な動きで接近してくる。

 奴の異能がどんなものか知らないが、攻撃にだけ注意すればいいだろう。


 しかしさすがSSS級覚醒者なだけあり、戦いなれているのか攻撃に緻密なフェイントを織り交ぜて攻撃してくるので、少し対処が難しい。

 まぁ難しいだけで出来ないことはないのだが。


 全方位から攻撃してくるベンだったが、俺はその場から一歩も動かずとも魔力が自動防御してくれるので俺にはダメージはない。

 しかし俺の魔力に触れたベンの拳がジュッと言う音とと共にダメージが入る。


『ぐッ……その魔力は危険だな……なら———これでどうだ!!』


 ベンが何処からともなく取り出した如何にも高そうな槍を俺に向かって投擲した。

 風切り音と共に飛来した槍を弾こうとすると———その部分の魔力が弾け飛んだ。


「っ!」

『ハハハハハハ!! どうだ!! 我が国の『対覚醒者用投擲槍』は! これは異能じゃガード出来ないぞ!! これでも食らえッッ!!』


 そう言って数十本の投擲槍を取り出したベンが、異能らしき力で動かすと一気に発射する。 

 縦横無尽に迫り来る投擲槍の速度は最早音速の域を優に超えていた。

 しかしそんなことより……


「…………」


 果たして本当にどんな異能でも無効化出来るのだろうか?

 仮にそんな物があれば全世界から批判が殺到しそうだが……。


『どうした? 避けないのか? それとも異能が無効化されて悔しいのか? これだから新人はダメなんだよ。こんなんじゃ———』

「———五月蝿い」

 

 俺は膨大な《矛盾の魔力》を全方位に半径10メートル以内撒き散らす。

 するとその中に入った投擲槍は全て爆発して灰も残らなかった。


『…………は? 何が起きた……?』

「キャパオーバーさせただけだ」


 そう、俺の魔力が投擲槍が無効化出来る魔力量を超えていたと言うだけだ。

 それだけで勝手にショートして爆発した。


 心底くだらない、と俺は大きくため息を吐くと、自分でも分かるほど冷たい目で言葉を吐き出す。


「とっとと本気を出せ。じゃないと一瞬で勝負が付くぞ?」

『ハッ! 貴様程度に本気を出すわけないだろ!! だが———俺の異能は特別に見せてやろう!! 《空間破壊》』

「———っ!?」


 その瞬間———俺の全本能が警鐘を鳴らしたので反射的に後ろに飛ぶ。

 すると何の予備動作もなく、文字通り俺の元いた空間が消えた。

 

 とても奇妙な光景で、言葉に形容し難い。

 突然視界の一部分がグニャッと歪んだかと思うと、一瞬だけそこにポッカリと穴が空くのだ。

 

『ハハハハハハハハハハハハ!! どうだ斉藤神羅!? 俺の異能の前に手も足も出ないだろう!? 貴様は此処で殺して琴葉は俺が奪う!!』

「……お前は琴葉を手に入れて何がしたい?」


 俺は狂ったように笑うベンに問いかける。

 そんな俺の問いをベンは鼻で笑い飛ばした。


『そんなの決まっているだろ!? あの反抗的な女を従順にさせてやるのさ! アレ程の女は中々居ないが、如何せん気が強すぎる。だから誰が真の主人かあの魅惑の体に教えてやるんだよッッ!!』

「……そうか。お前はそれだけの為に琴葉を手に入れたいのか」

『当たり前だろう!? 俺に従順じゃねぇ女には調教が必要だ!! 安心しろ。俺がちゃんと飼っていてやるからな。だがらお前は死ね』


 そう言って醜悪な笑みを浮かべたベンが俺の居る空間を消そうとしてくるが———



「———お前は危険だな」



 俺は身体のリミッターを外し、《矛盾の魔力》を纏った拳で虚空を殴る。

 途端、『バキンッッ!!』という音と共に空間を破壊しようとしていた魔力の根源ごと消え去った。


『———なっ!? 俺の異能がキャンセルされただと!?』

「驚いている場合じゃないぞ」


 俺は拳を握り、8割の力で虚空を撃って拳圧を飛ばす。


 ———ズバッ———ッッッッ———!!


 雲を吹き飛ばし、ベンを巻き込みながら空を駆け昇る。


『ぐ———《空間破壊》ッッ!!』


 しかし、ベンが異能を発動したことによってベンの後方の雲を除いて全てが吹き飛ぶ。

 

『はぁはぁはぁはぁ……ば、バカな……!? 何だこれは……貴様、一体何をした!?』

「———お前にそんなことを言っている暇があるのか?」

『!?!?』


 俺は勿論待つことなく何度も力を込めて拳を振り抜く。

 その度に『ドカンッ!!』と言う拳が虚空を打ち付ける音と、風切り音が空に響き渡り、空が揺れる。


 だがさすがSSS級覚醒者なだけあって、異能を器用に使うので中々倒れない。


 まぁ俺が永遠に攻撃を続けていれば絶対に勝つだろうが、それだと時間が少し掛かってしまう。

 しかしそのまま殴ってしまうと間違いなく瞬殺してしまうし、セーブしていればあの異能に阻害されて攻撃が通らない。


 さて、どうしたものか。


 俺が奴の処し方に迷っていると、全身に滝汗をかいたベンが雄叫び———いや、悔しそうな負け犬の遠吠えを上げた。


『くそッ……くそくそくそくそくそくそッッ!! 巫山戯るな! 俺は世界で3番目に強いんだぞ!? そんな雑魚に負けてたまるか……!! こうなったら———』


 その瞬間———空が歪んだ。


 これは比喩ではなく、1キロ程の範囲の空がグニャッと輪郭をぼやけさせて歪んでおり、そこには俺もすっぽりと入っていた。


「……この異能を発動させればどうなるか分かっているのか?」

『当たり前だろ!! ここ一帯に擬似的なブラックホールが出来て全てを呑み込むだろうな!』

「このままなら琴葉も死ぬが?」

『死んだならそれまでの女だったと言うことだ!! まぁそうなれば『女帝』を手籠にすればいいし女には困っていないんだ』

 

 この期に及んで琴葉を殺して他の女性まで手に掛けようとしているのか……最低だな。

 今までこんな感じの奴らは居たが、流石にここまで酷くは無かった気がする。


 ……しょうがないか。


「———今後動けないかもしれないが、文句は言うなよ」

『あ? 何を言ってんだ? お前は死ぬんだから俺が動けなくなるなんてあるわけないだろうが!!』

「もういい。その口を開くな愚図」


 俺はもう何を言っても無駄だと悟り、無言で拳を全力で握り、俺の魔力の3割を《矛盾の魔力》に変換して拳に集める。

 その瞬間に俺の拳が、まるで太陽のような力強く膨大な白銀の輝きに包まれた。

 

『何をする気だ? ハハッ、無駄だ! これを防げる奴などこの世に居ない!』


 高笑いを上げて俺を見下ろすベンを見据え———



「———琴葉を害する奴は誰であろうと許さない……ッ!!」



 ———この世界で初めて本気で拳を振るった。


 ———ッッ————ッッッッ———ズバァァァァァァッッ!!


 途端———《矛盾の魔力》を纏った白銀に輝く拳圧が空間の歪みごとベンをあっという間に呑み込み、青い空一面を白銀に染め上げることとなった。


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