574 ユニーク・スライム
( リーフ )
驚きすぎて言葉も出ない俺は、口を大きく開けたままポカーンと黒スライム君が入った腰ポーチを見下ろした。
先ほど発光した光を見てあげ玉の時と似ているなと思ったらやはり同じであった様で、この黒スライム君もなんとユニークモンスター!
そして新たなスキルに目覚めたらしい。
ほぇ〜・・と小さく呟きながら、ズラリと並ぶスキル達に目を通していく。
とりあえず見たことがない上にかなり強力なスキルばかりで、そもそも魔素を弱めるだの呪い無効だの、ありえないレベルのスキル達にまたしてもギョギョっ!と驚かされた。
そしてその中でも特に驚かされたのは< " 家族・愛 " >という特殊なシークレットスキル!
先ほどの発光はこれが発現した際の光だった様だ。
んん〜??と、もう老眼ではないはずなのに何となく目を細めながらその内容に目を通すと、とにかく単純に全ステータス極大UPが凄い。
そしてなんと先天スキル< 黒の嫌われ者 >という、スメハラ的扱いの謎オーラを消してくれるという最強のいいとこ取りスキルとなっている!
スメハラはファブリーズマシンガンがないと厳しい!
・・と前世で加齢臭に悩まされていた俺は大きく頷き、それが解決したなら良かった良かった〜と思わずグススンと鼻を鳴らした。
そしてそんなとても嬉しいスキルはあげ玉の取得したスキルと同様に、何だかとんでもなく取得条件が厳しい事にハテナが頭の上を飛ぶ。
ズラズラ〜と並ぶ取得条件をしっかり一文ずつ確認していくと、正直抽象的な言葉が多くてイマイチ分かりづらいが、多分簡単に言うと、
” スメハラちっくなオーラを纏ったまま、うちにおいでよ!と家に誘って貰う? ”
” ペタペタと触ってもらい、あいさつしてもらったりお喋りしたりする事?? ”
ーーーとか?そういうのっぽい?
うう〜ん・・
考察しても分からない事に頭がプスプスと焼け焦げながらも、とりあえずわかった事は恐らくコレはやはりあげ玉の時同様、人型種以外ではほぼ発現不可能なスキルだろうということ。
なんといっても同種のスライムに至っては意思自体がないので精神的な接触はできないし、他のモンスターたちも知能が低いため少々厳しい。
更に< 黒の嫌われ者 >の効果でありとあらゆる生き物がその謎オーラによって近寄ってはくれないし・・
ならば人型種なら!とジェスチャーなどを駆使してそのスキルについて伝えようとしても ” 黒 ” が禁忌の色であるこの世界では話も聞いて貰えない。
しかも移動する際にスライム戦争を始めとした厄災レベルの騒ぎを起こしてしまうので、100%討伐対象にされてしまうという、まさに打つ手なし。
俺は自分の腰ポーチに大人しく収まっている黒スライム君を見て、さっきの絵を思い出す。
きっとこのスライム君は、迷惑をかけないようにずっと一人で過ごしてきたのだろうと思われる。
今まで騒ぎがなかった事を考えると、多分森の奥で一人ひっそりと。
それを考えて俺の脳裏に続いて浮かんだのは『 アルバード英雄記 』のレオンハルトだった。
” 黒 ” と ” 呪い ” を抱えてたった一人で孤独に生きてきた英雄様。
自分を虐げてきた世界に復讐するくらいの強大な力を持っていたのに、決してそれを望まなかった孤独で世界一カッコいい俺のヒーロー。
ジジ〜〜・・ン・・・
なんだかそんなレオンハルトとこの黒スライム君は似ている。
この黒スライムだって凄く強いユニークモンスターなのだから、自身を受け入れてくれない他の者たちに復讐しようと思えばできたのに、それを選択せずにただ一人で静かに暮らし、さっきだってルーン先生に攻撃されても仕返ししようとせず大人しく去ろうとしていた。
おじじ感動!!
ガクガク、プルプルと急に震えて泣き出した俺を見て、ギョッ!!とするレオン。
俺はそれを気遣う余裕なく腰ポーチにいる黒スライム君をツイッ・・と掴んで取り出すと、
” 何っ!?何っ!? ” と言わんばかりに、ビクっ!!と揺れる黒スライム君をモニモニモニ〜と撫で回す。
「 よ〜しよしよし。君は何て良いスライムなんだろうね。
俺は君がいい子過ぎて感動が止まらない! 」
そのまま黒スライムを撫でながら顔をべっちょりにしながら泣いていると、俺の周りをオドオドしながらレオンが周り始めたので、直ぐに捕獲!
そしてレオンも巻き込んで抱きしめて「 よ〜しよし。レオンも凄くいい子。 」と伝えると、レオンの身体から力が抜けていき、ぐたぁ〜としてしまう。
そんなレオンとされるがままの黒スライムをギュムッ!と抱きしめ、暑苦しいオジさんの地獄の抱擁をかましていると、空からボスーーーン!!と黄色い物体が降ってきた。
「 クププ〜??( 何してんの? ) 」
なんと黄色い物体の正体はあげ玉であった。
どうやら森にいる俺達の気配を感じてやってきたらしい。
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