295 確執色々

( リーフ )


なるほど、似ているはずだ。


この二人兄弟だったのか……



俺はさきほどアゼリアちゃんから聞いた話を脳内で思い出す。



” 私の本名は< アゼリア・ロティア・レイモンド > ”



” 私はいわゆるレイモンド家の不義の子でして…… ”



” 【 レイモンド家 】は代々魔法に長けている血筋 ”



” しかし、私の資質は< 闘武士 >という物理系特化の戦闘資質で、魔法があまり……いえ、全く得意ではないのです。”



今、目の前で目撃した光景と、アゼリアちゃんからの話からして、どうやらこの二人には結構な確執なるものがある様だ。



常人なら震えそうなほど殺気めいたクラーク君の視線にも、アゼリアちゃんは全く動じず、正面から睨み返している事からその根深さを感じる。



う〜む……。


少々難しそうな状況を理解して、考え込んでしまった。



確かに兄弟の確執?って結構難しいな〜と思うことは多々ある。


ただ、子供同士だけの問題に留まっているなら、意外にコロッと仲良くなったりで、大抵の子達は関係の落とし所を見つけていく様だが……両親の問題が絡むと、それが多分難しい。


 

ツンッ!と顔を背けて退場していくクラーク君と、その背中を睨みつけているアゼリアちゃんを見ながら、なんとも言えない気持ちでそれを見守った。



クラーク君の出した花は【 ボンボン華 】という、魔力を流すことで爆発する特性を持つ花で、攻撃様魔道具の貴重な素材だったらしく点数は70点。



突然のハプニング的な出来事に加えての高得点に周りはどよめく。



流石は魔法特化で有名なレイモンド家、体内魔力量はかなり多い様で、しかもそれをしっかりと操作する魔力操作も相当なものの様だ。



これはレオンのライバル枠に採用かな〜?



キラっ!と目を輝かせていると、次に呼ばれたのはマリオンだ。



おっ、レオンのライバル……になりたい子猫枠、我らが同級生マリオンは果たしてどんなお花を咲かせるのかな〜?



そんな事を考えながら、ワクワクとマリオンに視線を向けると、マリオンはチラチラッとコチラを見ながら、見てろよ〜と言わんばかりにフンッと鼻で笑った。




マリオンの家は魔道具作りの頂点と言われる────



【 スタンティン家 】



その流石と言える出来の魔道具の数々は、現在全て王族と貴族専用で販売されていて、絶大な信頼と権力を持つ家である。



そして魔力操作に関していえば、先ほどの魔法特化の【 レイモンド家 】を凌ぐ。



その証拠に、マリオンの練りだす魔力は非常に繊細で複雑な動きをしていて、小学院時代に戦った際はその動きが読みづらく、戦いにくさを感じたものだ。



そして今まさに目の前でそれが実践され────




ポポポンッ!!




そんな可愛らしい音とともに咲いたのは、赤、青、黄色……と色とりどりの別種の花達、しかも10本!




「 な、なんと……っ!


全ての色がバラバラ、しかも種類もバラバラとは……余程の能力がなければ出来ぬ芸当だ。



マリオン殿、85点!  」



またもや高得点!しかもソフィアちゃんと同着の第1位に周りは再度騒ぎ出す。



俺はレオンから離れ、そのカラフルな花をうわぁ〜と眺めながら「 綺麗だ〜。 」とポツリと言った。


するとレオンがそれに僅かにピクリと動き、ジッとマリオンの花を見つめる。



その視線に気づき、普段はレオンに完全無視されているマリオンは、フフンっ!!と得意げに笑った後、大きく胸を張ってそのまま堂々と去っていった。



その姿を追って女子受験生達のキャッキャッする声が聞こえ、モルトとニール、そしてアゼリアちゃんは、チィィッ!!!と地鳴りがしそうな舌打ちを。


反対にサイモンはうっとりとその姿を見つめ「 いい・・♡優良物件第二位マリオン様♡ 」とブツブツ呟いている。



そろそろ人間関係が飽和してきたため、プスプスと煙が立ちそうな頭をスリスリとさすっていると……


「 次!リーフ殿、前へ! 」


────という声が前から上がった。



なんか複雑なニャンニャン、ワンワン関係で頭が一杯で、結局なにも思い浮かんでいない……



困ったな〜と、俺は頭を抱えたまま前の台座へと向かった。


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