おまけ1 その後のエフタル王国
王都が炎上して数日が過ぎた。
私たちは崩れかけの王城の側に野営地を築き臨時政府として活動を始めた。
精鋭とはいえ、我々は50名の集団でしかない。
アジトの皆が来るのにあと数日はかかるだろう。
その間、私たちはこの国の冒険者ギルド、職人組合や、地下組織との交渉を行った。
この国の方向性について話しあうためだ。
「クロード、やはり私が王になるのは良くないわね。彼らの印象がよくないし。
世襲制はいずれ破綻する。私が良くても次の代が良いとは限らない」
「俺としてはクリスティーナ様に治めてもらいたいってのはありますが。貴女がそうおっしゃるならそれが正しいのでしょうか」
「私だって完璧じゃないわ。そうね、共和制っていうのが理想的かしら。幸いにも平民達にもギルドや組合がある。
彼らのトップを議員として国政に関与してもらいましょうか」
その時、王城の方から大きな爆音が聞こえた。
アランが、急いでこちらに向かってきた。
「団長、姫様。大変だ! エフタル解放戦線の奴らがやらかしやがった」
エフタル解放戦線。
ドラゴンの襲撃の際に真っ先に動き出した。地下組織。
全体は把握してないけど。犯罪者が中心になった武装集団だというのは聞いている。
「アラン、あの爆発は彼らが起こしたっていうの?」
「へい、どうやら、連中、貴族の小娘どもを匿っていたみたいです」
「その貴族が脱走したっていうの? 彼らだって素人じゃないだろうし、それで魔法使いの対策を怠ったっていうの?」
「いやぁ もちろん手足を縛った上で魔封じの首輪はしてたそうです」
「なら、どうして?」
「いや、まあ、姫様の前でこんなこというのはあれですが。貴族の女の一人が新入りの若い男を誘惑したそうで。ベッドに連れ込むときにうっかり縄を解いちまったんでさぁ」
「あら、ふふ、なるほど、それであの爆発という結果になったと」
「クリスティーナ様。これは大事です。魔法が使える貴族が野放しにされたということは、放っておくとどんどん数を増やしてしまう恐れが……」
「そうね、クロード、では貴方に任せます。数が増える前に速やかに刈り取ってしまいなさい」
◆
「おのれぇええ! 平民の分際でぇええ! よくも、よくも! この伯爵令嬢であるこの私を嬲りものにぃいい! 死ねぇええ!」
クロードが到着するまでにはエフタル解放戦線のメンバーであった男たちは焼け焦げていた。
見境なく炎の魔法を放ったのか、辺り一面火の海になっていた。
その炎の中心には裸の女性が数人、一か所に集まり通路から新たに現れたエフタル解放戦線の男たちに炎の魔法を浴びせている。
貴族、やはり、俺達平民にとっては脅威そのものだ。
しかし、エフタル解放戦線には悪いが自業自得だろう。
生きたまま捕らえるリスクを軽視した結果だ。
だが、このまま見殺しも今後に差しさわりがある。
クロードは前にでる。
一人の女がクロードに気付くと、手をかざし魔法を唱える。
「おまえは! よ、よくも私の家族を! 許せない、消えろぉお! ヘルファイア!」
クロードは憶えていない。憶えてやる義理もない。
ヘルファイアは中級魔法の中でも最強の炎の魔法である。
クロードは剣を抜くと。前に突き出し呟く。
「魔剣開放!」
目の前に迫っていた炎の塊はかき消された。
「なっ! 私の炎の魔法が……消えた……?」
「知らないのか、魔剣だよ。これはルカ・レスレクシオンの十二番の魔剣『魔封じの剣』だ。
その名の通り、魔剣開放の効力は魔法の無効化。つまり、お前たちにとっては最悪の武器ってところだ。
おいおい、お前ら本当に魔法学院に通ってたのか? 腰を抜かすほどの武器じゃないぞ?」
「うるさい! 平民が私に説教を、許せない。お前は家族を殺した。死刑よ、そこで死ね! 死ね! 自害しろ!」
まったく、気が狂ったか。
つい先日まではそのセリフは俺達平民のものだったんがだな。
他の貴族の女達も魔法を俺に連続で打ち込んでくる。
学習しない奴らだ、この状況で俺に魔法を撃ち込むことは悪手以外の何物でもないのに。
俺は魔封じの剣で魔法をかき消しながら、ゆっくりと近づく。
そして、左手で、もう一つの魔剣を取り出す。
四番の魔剣『エアーレイピア』
「最後に教えてやる。この場合の対策方法はな、接近戦しかない。ならば、することは一つだろう、自身に最大限の強化魔法を施し。武器を探す。
なければ、時間を稼ぎ逃げる。そしたら再戦の機会があるのだから」
貴族の女たちは、あきらめたのかその場に座り込んだ。
「お、お願い、殺さないで。そ、そうだ、あんたにだったら私の体を差し上げても――」
次の瞬間、魔剣開放したエアーレイピアから空気の刃が放たれた。
貴族の女たちの首は同時に地面に落ちた。
「まったく、醜いな」
…………。
「あら、クロード早かったわね。って、どうしたの? 顔が暗いわ、気分でも悪いの?」
「いえ、醜い貴族の女たちの顔を見てたら、気分が悪くなりまして。でもたった今、楽になりました」
「なにそれ? 私の顔は貴族よりもマシってこと? それは失礼じゃない? まったく、女性を顔で判断するなんて見損なったわよ」
「いえ、決してそんな、私はクリスティーナ様か、そうじゃないかで判断していますので」
「うふふ、冗談よ。で、私のことはどう思ってるのかしら? はっきり言ってくださいな」
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