第2話

爺さんがみどりさんに、「おい、早く飯だ、その前にお茶が飲みたい。」

「はい、今用意してます。」

若い時から酒を浴びるぐらい飲んで、タバコも吸えば、博打もした、そんな病気になった爺さんを誰が面倒見るかって。

息子の政矢は、結婚紹介所で5年前登録して直ぐ、みどりさんを紹介してもらった。

政矢は、みどりが、看護婦をしていた所と両親が他界していた所を気に入り、バツイチだというのは気にしないと言った。

もちろん、それは爺さんの世話をさせるためだ。

政矢は影でお父さんの事を爺さんと呼んでいた。母親とは20歳も歳が離れていて、やっとできた一人息子だった。

今まで、ワンマンで身勝手な爺さんを無視してきた。

そんな爺さんが突然倒れて、片麻痺になった。

それで急いで政矢は、結婚紹介所に入会したのだった。

ある程度裕福な家で何の不自由もなく過ごしていた。

たまにうるさい爺さんは、仕事の鬼で、休みには好きな山登りに行っていたので、それまで、結婚など考えたこともなかった。

だが、爺さんが倒れて病院にいる間、政矢の母が爺さんの世話をするのは嫌だと言い出し。

政矢も俺も仕事はあるし、無理だということになった。

それならと、結婚してお嫁さんに世話をさせようと言うことになり、爺さんが、帰ってくる前に結婚したのだ。

みどりは、落ち着いた感じの背の高い、顔もそこそこの自営の工場の次期社長ときけば、バツイチの、自分には勿体無いくらいだと思い、迷いもなく、ふたつ返事で了承した。

あわや、あわやと、1ヶ月で結婚式も神社で家族だけで済ませた。

持ち家の、政矢の部屋に引っ越した。

あと1ヶ月後には、爺さんが、病院から帰ってくるとはまだみどりには伝えてなかった。


結婚式が終わり、1ヶ月が過ぎた頃。

政矢と二人で食事を終え、片付けをしようと、テーブルを立ったときだった。

「みどり、明日爺さんが帰って来るんだ。」

「お爺さんって?どちらから?」

「ちょっと病院に入院してたんだよ、全然大丈夫だから。」

「そ、そうなの?何か、ご用意しましょうか?」

「そうだなぁ、何がいるかよくわからないんだよ…」

「一緒にお迎えに行きましょうか?」

「助かるよ、お願いする。」

「私、昔看護婦を少ししていた事があって。お力になれたら、いいけど。」

「あぁ、ありがとう、頼りになるよ。」

わざとらしく、政矢はみどりの肩を掴み少し頭を下げ、それからギュっと抱きしめた。


それを、廊下から母のとよが見ていた。

みどりは、政矢と結婚して良かったとこの時は、本当に思った。



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