嘘告ばかりしてくる生意気な後輩が真面目に告白してきたが、どうせまた嘘だ

でずな

第1話 生意気な後輩

「付き合ってください!」


 高校2年生の夏。

 俺、空宮そらみやかいは雲ひとつない晴天下の中、直射日光を浴び、一人の女性に告白されている。


 これをモテている、と言うのはあまりにも言葉違いだ。普通の男子高校生ならば、『告白される』ということは夢にも見るような光景だろう。


 だが、俺はもう見飽きている。

 なぜかというと……。


「おい。18回目の告白はまた随分と相手に配慮してないな」 


「告白じゃなくてですよ。先輩」

  

 告白してきた女性、一つ年下で後輩の七星ななぼし桃華ももかがにまぁ〜っと頬を釣り上げさせ、顔を上げた。


「あっ、もしかして「今回こそはまじで告白されたんじゃないか!?」とか思ってたんじゃないですか? そんな先輩に言うのは可愛そうですけど、もう一度真実を言います。これ、嘘告です」


「知っとるわ」


「へへっ。その代わりには随分と神妙な顔をして告白されてませんでしたぁ〜?」


「嘘告だけど告白されすぎて、男子高校生としてあるべき心を失ってしまったんだなって……。ちょっと悲しんでただけさ……」


「あ、そうですか」


 まだ出会ってから数ヶ月程しか経ってないが、桃華は俺の語りが長くなると察し、スタスタ歩き始めた。


 嘘告するときはすべて別のシチュエーションで、凝っているのだが。したあとが毎回雑だ。

 いつも「先輩」と呼んでいるが、からかって言ってきてるとしか思えない。

 全く。生意気な後輩だ。


「なんでそんなジロジロ見てくるんですか。先輩、もしかして嘘告され足りなかったです?」


「これが嘘告されたがってる人の顔に見えるか?」


「いえ。唯一の異性の知り合いに嘘告され興奮してる犬に見えます」


「俺の異性の知り合いは別に桃華だけじゃないし! あと、興奮してないから!」


「私が教室を覗いてるとき、異性と話してるところ一度も見たことありません。よって、先輩は可愛い後輩である私に嘘告され興奮してます」


 言ってやったぞ、と言わんばかりに鼻を高くする桃華。


 たしかに異性の知り合いの方は見栄を張って嘘ついたけど……。断じて興奮はしてない。


 真っ青な青空と合う、ひまわりのような鮮やかな髪色。小顔で整った顔。ちょこんとしてて、小さい体。


 あれれ?

 こうして客観的に観察すると、桃華は女性として魅力的ではあるな……。


「先輩。ようやく木陰につきましたよ!」


「お、おう。やっとか」

 

 生意気な後輩が魅力的だとしても、だ。

 恋愛感情なんてそんなもの持つわけ、ない。


「ふぃ〜6月ってこんな暑かったかなぁ〜」

 

「ちょ、おまっ」


 木陰になってる木に腰掛けている俺の顔のすぐ横で、スカートがヒラヒラと舞い踊ってる。

 

 何を考えてるんだこいつは。

 俺がちょっと姿勢ずらしたら色々見えちゃうぞ。


「もしかして見ました?」


「見えてないから安心してくれ。俺って紳士なんだ」


「冗談も程々にしてくださいよぉ〜。先輩が紳士だったら世の中の男性はなんですか? 神様ですか?」


 こんな色々危ない状況でも煽ってくるのは、もう流石としか言いようがない。


「とりあえずそのスカートヒラヒラさせるのやめろよ」


「えぇ〜。これ涼しいんですけど……」


「この場面を誰かに見られたらなんて思われると思う? 多分、俺は残りの高校生活で不名誉なあだ名をつけられて、さわるな危険みたいな扱いされるぞ」


「それもまた良さそう」


「どこが!?」


 俺は慌てていたが、それに対し桃華はわざとらしく「にひひっ」と笑って返してきた。


 あぁ……やっぱり生意気な後輩だ。





【あとがき】

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