【超短編】 神社電車と頑張る人たち

茄子色ミヤビ

【超短編】神社電車と頑張る人たち

 山手線の先頭車両に神社の設置が義務化された。

 それは文化庁からの突然のお達しだったが、意外にも東京都民はすんなりと受け止めた。 

 しかし他の地域からは税金の無駄遣いだと叫ばれた。そして

 海外からの観光客に向けてのサービス?

 若者へ日本の古き良き文化を伝えるため?

 年々増える飛び込み自殺対策?

 などなど、様々な噂飛び交うようになった。

 そんな中実装された電車は、先頭車両のパンダグラフが鳥居の形になり、車内のモニターには神主さんの祝詞が流れ続け、座席の手すりにはお賽銭が入れらるスリットがあった。そして通称・神社電車が運用されてしばらくすると「先頭車両の空気は澄んでいるような気がする」や「気持ちがいい」「満員電車の嫌な気持ちが減った」などといった好意的な意見が多数寄せられ、事実飛び込み自殺者も減少したと日々のニュースに取り上げられた。

 そんな中、東京で大規模な停電事故があった。

 原因は不明だったが、後の現場検証でDNA鑑定不能な大量の毛が変電所ので見つかったという。

 そしてその煽りを受けた山手線も当然全線が止まった。しかしそれは必死の復旧作業によりその40分後には回復、他国からは流石日本だと称賛されるほどの速さだった。

 だがある中学生が、山手線の中心地帯である麹町で不思議な光景を見ていた。

 眩暈を起こしたときのように景色が歪み、その中で黒く巨大な「のたくっていた」と後に証言している。

 その一方で、それを目撃したであろう大勢のサラリーマンは口を揃えて「何も見てない。明日も仕事だから」と言ってインタビュアーから足早に立ち去ったという。


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