フィニストとの死闘
「砲塔機銃! 撃って!」
迫ってくるフィニストに同軸機銃で撃たせる。
本来は7.62ミリだが、改造してM2機関銃12.7ミリに切り替えていた。
弾の嵐を浴びてフィニストは怯み離脱していく。
すれ違い様にRPGを撃ってくるが、簡単に避けた。
「左へ! 丘を登って!」
カチューシャはT34に丘を登らせ始めた。
フィニストも後を追って迫ってくる。
「右へ! 斜面を横切って!」
カチューシャが命じると、T34は丘の中腹を斜面に対して横切っていった。
フィニストも方向転換してカチューシャに向かいミサイルを浴びせようとする。
T34に急速に近付くフィニスト。
しかし、射程に捕らえる前に、フィニストは、下へ、丘の麓に向かって流れるように落ちていった。
「やったわ」
フィニストが右後ろに流れていく様子を見てカチューシャは歓声を上げた。
ホバークラフトは、浮くことで地面からの抵抗をほぼゼロにする。抵抗がないから高速移動できるが、抵抗がないのは欠点もある。
横からの力に弱い。
斜面を横切ると下へ向かう力が働き、スライドしてしまう。
車輪なら踏ん張れるが浮いているフィニストには無理だ。
それでもカチューシャに追いつこうと車体を斜めにして斜面から滑り落ちないよう姿勢を制御する。
しかし、下に落ちないよう力を配分したせいでスピードが落ちた。
「主砲旋回!」
カチューシャはすかさず主砲を向けて発砲する。
フィニストは咄嗟に避けて、回避し戦況不利と判断すると逃げ出した。
「機関銃撃って!」
同軸機銃がフィニストに向かって放たれる。
外れ玉が多かったが、数発当たる。
貫通はしなかったが、12.7ミリ銃弾の衝撃でフィニストはバランスを崩し回転し始めた。
「弾着を見て主砲発射!」
機銃弾の命中を見て狙いを定め発砲した。
フィニストは慌てて回避し、直撃を免れた。
だが、着弾の爆風でバランスを崩し地面に接触し、停止する。
すぐに態勢を立て直して逃げようとする。
主砲の再装填には時間がかかる。
幸い浮揚装置に問題は無く数秒で浮き上がり離脱出来る。
だが、その数秒で十分だった。
「撃って! ノンナ!」
カチューシャの言葉ですぐにノンアハIS3の122ミリ砲を放った。
狙いは違わずフィニストを122ミリ砲が貫き、撃破した。
「ありがとうノンナ」
『無茶をしないでカチューシャ』
「大丈夫よ。ノンナが助けてくれると信じていたし」
自分達を追ってきていることを知ってからカチューシャは後続のノンナ達と合流するために移動していた。
ただ逃げ回るだけでなく少しでもノンナと早く接触するように。そしてノンナが機会を見て攻撃してくれると信じていた。
『そう』
カチューシャに言われて嬉しそうな声をノンナは返す。
ノンナはカチューシャに褒めて貰うのが好きだった。
「まさか……」
ミスキーは画像を見て愕然とした。
嫌な予感はしていたが、第二次大戦の遺物、T34に自分達が作ったフィニストが撃破されるとは思っても見なかった。
フィニストの成果を見て喜んでいたロシア軍将校も期待していただけに落胆は大きかった。
「いやあ。やられちゃったね」
一人、嬉しそうなのはモーリェだった。
空気を読まず、笑い声を上げていた。
「ホバークラフトの弱点を上手く突いて攻撃するのは流石だね」
大平原でホバークラフトを使う事は間違っていない。
凹凸が少ないからだ。
その僅かな凹凸、丘を使って撃退した手腕にモーリェは、感動していた。
「命が掛かっているのにあそこで思いついて攻撃できるなんて凄いよ」
「あの課長」
「さあ、ミスキー君。モスクワに帰ろう! 彼女たちを打ち破る新製品を開発するんだ」
そう言うとモーリェは喜び勇んで出て行った。
「課長、今回の作戦は失敗です。撃破の映像も世界に流れています」
「そうだね。彼女たちの姿も流れている。これを撃破したら僕たちは大注目を浴びるね」
「まさか、そうなることを狙って撃破させたのですか」
「楽しい戦いの後の優勝賞品は豪華であれば豪華なほどいいだろう」
肯定するようにモーリェは笑顔で言った。
「全力を尽くして戦って、勝ち取ったものこそ至上の価値があるんだよ。君も、思うだろう?」
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