ウクライナ軍攻勢発起
ウクライナ軍の反撃はロシア軍も予想しており、奪った陣地に兵力を増強し、万全の備えをしていた。
だが、今回の攻撃は奇襲となりロシア軍は大損害を受けた。
「砲兵大隊壊滅!」
「補給所がやられました!」
「あの爆破は何だ!」
「弾薬段列に直撃! 予備弾薬を全て失いました!」
「旅団司令部方面に着弾光を確認! 司令部との通信途絶! 指揮官カミンスキー少将行方不明!」
「どうして連中は我々の弱点を知っているんだ!」
ウクライナ軍の事前砲撃が的確にロシア軍の中枢を撃破していた。
長射程の砲兵、戦闘を維持する弾薬保管所、命令を下す司令部。
いずれも長時間の交戦を可能にする重要な場所。
そこを破壊された。
この時点で前線は突破されていないが、ウクライナ軍の攻撃が始まればロシア軍陣地は長時間保持する事は不可能だ。
そこへウクライナ軍が前進し始めた。
「攻撃開始!」
カチューシャも攻撃の先頭に立って加わった。
ロシア軍の前線、防御を破壊するためだ。
自前の迫撃と、司令部を潰した砲兵の支援でロシア軍の前線は火の海になる。
「最終弾弾着十秒前っ! 突撃用意っ!」
カチューシャが命じると部隊に緊張が走り、秒読みと共に精神が昂ぶる。
「五秒前! 四っ!三っ!二っ! 一っ今っ! 突撃っ!」
最後の一発が炸裂するとカチューシャ達は飛び出した。
先頭を切るのはカチューシャのT34。
軽快にエンジンを回し、凍った大地を疾走する。
ロシア軍が反撃してくるが、いずれも機関銃。
直ぐに応戦して潰す。
しかし、ロシア軍もこまねいていない。
後方から火を吹く物体が迫ってくる。
「ミサイル!」
ロシア軍の対戦車ミサイルだ。
最新鋭のレオパルトさえ直撃したらお終いの新世代のミサイル。
大戦中のT34など一撃だ。
しかしカチューシャは狼狽えない。
「スモーク! ジャミングを急いで!」
通信手がランチャーとジャマーのスイッチを入れる。
砲塔の両脇から煙幕が放たれT34を隠す。
同時にミサイルの誘導電波が妨害され、ミサイルは酔っ払ったよ九ウニ不規則な動きをして大地に墜落した。
そしてミサイルを放ったランチャーに122ミリ砲が直撃する。
『カチューシャ、油断しないで』
「ありがとう、ノンナ」
後方で援護してくれるノンナのIS3の射撃だった。
主要な抵抗拠点を潰すと、歩兵が前に出てロシア軍陣地を制圧、ロシア軍の防衛線に斬り込んだ。
突破口が出来た。
カチューシャは制圧を確認すると青い信号弾を放つ。
すかさず後方から、第一独立戦車旅団が突入する烏。
予備部品が少なく稼働率が低下している部隊だが、稼働可能な戦車を全て投入しただけに攻撃は凄まじかった。
レオパルト2はカチューシャが確保した陣地を通り過ぎて、ロシア軍の後方へ向かって豹のように軽快に突進する。
「凄いわね」
レオパルトが突進できるよう突破口を開くのがカチューシャ達の役目であり、これで任務は終わったも同然だった。
あとは、ロシア軍が突破口を、レオパルトの後ろを攻撃しないように制圧した箇所を確保しておくのが任務だ。
だが、大打撃を受けたロシア軍に反撃の余力は無いように思えた。
ウクライナ政府が力を入れただけあって稼働率が低い中、まともなレオパルト2を叩き込んだため、快進撃を続ける。
勇ましいレオパルト2の姿を同行するカメラクルーが映像に収める程度には余裕があった。
しかし、それは幻想だった。
ロシア軍は崩壊してゆき士気も下がっていた。
だがモーリェは違った。
ロシア軍がウクライナ軍に蹂躙される様をディスプレイで見て嬉しそうに言った。
「舞台が整ったね」
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