第19話 宝探しの結末
私が目を覚ましたのは、翌日のことだった。起きると、体の一部に包帯が巻かれている。きっとこれだけで済んだのはポジェット様のおかげだろう。ずいぶんと心配をかけていたようで、目を覚ました時にミシュリアに泣かれてしまった。
「よ、よかったです、お目覚めになって。
今の時間ですと、ドフィアート様が食堂でお食事中ですよ」
「心配をかけてごめんなさい。
兄様がいるなら、私も食堂に行こうかしら」
「あ、それでしたらきちんと着替えてからがいいかと。
お客様がいらっしゃっているようですから」
「え、そうなの?
私が言っても大丈夫かな」
「大丈夫かと思いますが、念のため確認してまいりましょうか?」
「お願いしてもいいかしら」
少々お待ちください、といってミシュリアが部屋を出ていく。手間をかけさせて申し訳ないけれど、お客さんの前に出ていいのかは確認しないと。特に今はこんな格好だし。
ミシュリアはすぐに帰ってきてくれた。お客様は快諾してくださったようで、これで遠慮せずに行ける。兄様はむっとしていたってミシュリアが面白そうに教えてくれた。え、それはいいのかな。
ミシュリアに着替えを手伝ってもらって食堂へと向かう。一体誰が来ているんだろう。それにしても昨日ご飯を食べ損ねたからお腹が空いた……。
「おはよう、アイリーン。
よく眠れたかい?」
「おはよう、ございます、兄様……。
ポジェット様……?」
え、お客様ってポジェット様だったの⁉ そんな、え。昨日助けていただいて、お礼もろくに言えていないのに、次に会うのがこのタイミング? それは先に教えていただきたかった。
「おはよう、アイリーン嬢。
朝からお邪魔していてごめんね」
「い、いえ!
あの、昨日はありがとうございました。
その私にできることでしたら、何かお礼を……」
「そんな、お礼なんて」
「そうだぞ、アイリーン。
この人にとっては趣味みたいなものだ」
「趣味って……。
あ、そうだ。
それならさ、怪我が完治したら少し付き合ってもらえないかな?」
少し、付き合う? 何のことかはわからないけれど、この方なら変なことにはならないでしょう。ということで、うなずくと兄様から必要ない、と声が飛んでくる。もう、何をそんなにむきになっているのよ。
「ちなみに、付き合うとはどこにですか?」
「うーん?
カフェにね、付き合ってもらいたくて」
「カフェ、ですか?」
「そう。
僕は甘いものが好きなのだけれどね、男一人でカフェに行くのはなかなか視線が痛くて」
「ああ、なるほど。
もちろんお付き合いいたします」
あの時、お世話になったお礼も含めて。そう口にすることはないけれど、心の中で付け足した。兄様は未だに何かぶつくさ言っているけれど、あきらめてもらいましょう。
私も朝食をもらってひと段落したころ、兄様が再び口を開いた。
「そういえば、昨日は一体何があったんだ?
課題を見つけて先生方のところに戻ったら、急に爆発音が聞こえてきて驚いたよ。
ほかの生徒、それこそリューシカ嬢やマベリア嬢たちも先生方のところに集まってきたのに、アイリーンは一向に姿を見せないのだもの。
本当に、心配した……」
「すみません。
その、火の手が上がってそこに戻れなくて。
それにそのあとに追われてしまったので、とっさに川に飛び込んだのです」
「追われた?
誰に」
誰に。これを言ってしまっていいのか少し悩む。でも、その話だとおそらく先生のところに戻らなかった生徒が誰かわかっているのだろう。なら、言ってしまっても問題はない、よね?
「私が分かったのは、シュベルティア公爵家のご子息だけです。
でも、おそらく他もホライシーン殿下派の人だと」
「ああ……」
それきり、兄様は黙りこんでしまった。言いたいことはわかったのだろう。ポジェット様はというと何かを言おうとして、それでも結局何も言わずに黙り込んでしまった。
「そう……。
そうだ、それで今回の宝探しなんだけれどね。
公開されたのは宝探しに成功した人の名だけだった。
もちろんアイリーンの名も、ミークレウム殿下の名もあった。
だけど、順位は非公開になったんだ。
でも、きっと全生徒がミークレウム殿下、そして君の活躍を知っている」
「……え?
どういうことですか?」
私の問いかけに兄様が意地悪そうに笑った。え、本当にどういうこと。
「殿下が自分のことを後回しにして、森を襲った炎を水魔法で消そうとしたところを見ていた人がいたんだ。
それと、君が天馬に乗って空を駆けていた姿を見た人もいる」
あー……、目立ちたくないと言ったのに。でも無理ですよね、そうですよね。ウェルに乗った時からその覚悟はしていたけれど。
「急激に成長を遂げた君の従魔に興味を持った人もいるみたいだ。
……気を付けるんだよ」
「ありがとうございます」
まあ、いずれは目を付けられることになったはず。それが思っていたよりも早かっただけ。そう思おう、そうしよう。
そんな風に会話を繰り広げる私たちのことをポジェット様はじっと見つめていた。
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