第13話 最終日 S級・決勝戦⑥「打鐘」
レースは
すると、②早見が減速し始める。先を行く関東ラインとの車間を切り始めた。これに気づく③佐倉や⑨御坂たち関東ライン。先ほど以上に後方を警戒する。
②早見の南関東ラインの選手たちは、さらに後方へ注意を払う。そこには⑤大野や人気の近畿ライン2名がいる。⑤大野や、近畿ラインの2名も南関東ラインの動きを警戒する素振りをみせる。
隊列は2センター(3コーナーから4コーナーの間)へ差し掛かり、いよいよ
2センターを抜けるタイミングで②早見が動いた。
隊列が
ホームストレッチ(客)
←(1コーナー)―――――――(4コーナー)→
②④⑧ ⑤
①⑦
(誘導員・待避) ③⑨⑥
↙ ――――――――
ホームストレッチ(バンク内側)
1センター(1コーナーから2コーナーの間)に差し掛かり③佐倉は突っ張る素振りを見せたが、そのまま南関東ラインを送り出す。この動きに透かさず⑤大野は南関東勢を追いかける。
1センターを抜けて②早見率いる南関東ラインが隊列の先頭。いよいよ
一瞬、後方を振り返った②早見。他の選手の動きを確認し、意を決したように勢い良く加速。この瞬間、勝負の合図となる鐘の音が響く。
客たちのボルテージが最高潮に達する。歓声、声援、怒号が入り交じり、澄み切った青空の下で人の声が竜巻のように渦巻く。そのせいで中継画面からは微かにしか鐘の音が聞こえない。
「早見、行けー!!!」
「早見、行けー!!死ぬ気で走れ!!!」
「はやみん、頑張れ!!!」
「早見、行け!!!関東勢、前に出すな!!!」
「早見!!!」
「はやみん!!!」
特観席内でも周囲の客が絶叫する。席を思わず立ち上がる者、テーブルを思い切り叩いて興奮する者。皆が勝負の瞬間に興奮する。
「はやみん、頑張れ!!!行け!!!」
「早見さん、頑張れ!!!」
周囲の熱狂に成行と見事も巻き込まれる。二人も思わず立ち上がり叫んでしまった。
2センターを抜けて最終ホーム(残り1周)を通過。南関東ラインが先頭で、その後ろに⑤大野。そして、③佐倉が率いる関東ラインが5番手から。人気の近畿ライン2名は後方のままだ。
ホームストレッチ(客)
←(1コーナー)―――――――(4コーナー)→
←②④⑧ ⑤ ③⑨⑥ ①⑦
――――――――
ホームストレッチ(バンク内側)
1センターに差し掛かるタイミングで③佐倉が捲り始める。その時、最後方にいた近畿ラインの2名の捲りが迫っていた。一方、②早見は全力で前だけを向いて必死に走る。
最終バック(残り半周)に差し掛かるタイミングで④海野(由)が、②早見を抜いて先頭に立つ。ここで行かなければ③佐倉率いる関東ラインの捲りが決まってしまう。そうなる前に先頭へ躍り出る。
バックストレッチ(バック側・特観席)
←(3コーナー)―――――――(2コーナー)→
①⑦
③⑨⑥
←④⑧⑤
②
――――――――
バックストレッチ(バンク内側)
④海野(由)が先頭で、番手には兄・海野(大)。海野兄弟の後ろに単騎の⑤大野が食らい付く。バンク外側から捲ってくる③佐倉。そのせいで近畿ラインの進路が塞がれる形になった。その展開に客たちの怒号や嘆き声が暴風雨のように競輪場内を震わせる。
それでも①広重-⑦古達は関東ラインの外側から捲ろうとする。が、これを待っていたかのように⑨御坂は透かさず①広重へブロックをお見舞いする。再度、湧き上がる観客の悲鳴と歓声。関東ライン3番手の⑥青澤も、近畿2番手の⑦古達と激しく体をぶつけてブロックする。
一度はブロックに耐えた①広重だが、⑨御坂はブロックを緩めなかった。再度⑨御坂のブロック。2センターに差し掛かるときには①広重の捲り脚は止まっていた。一番人気の選手の動きが鈍り、凄まじい絶叫をする客。
「あああああっ!!!広重、終わったああああああっ!!!!」と、絶叫する雷鳴もその一人だった。
①広重は2センターの外側へ浮いてしまう。が、番手の⑦古達の勢いは止まらない。⑥青澤の牽制をものともせず①広重と⑨御坂の隙間を突いてくる⑦古達。
⑨御坂はその動きを見逃さない。今度は⑦古達をブロックする。だが、①広重とは異なり、縦にも横にも強い⑦古達。⑨御坂のブロックに耐え、逆に捌き返したのだ。今度が⑨御坂が勢いを削がれた。
④海野(由)と③佐倉は、最終バックに差し掛かるタイミングで互いに決死のもがきあい。ここで④海野(由)が普段しないブロックを③佐倉へ放つ。ここでブロックしなければ、2センターを最初に駆け抜けるのは③佐倉である。
一方、③佐倉もブロックされながら必死にもがく。準決勝戦で連携した二人の死闘。客たちは喉が焼き切れそうになるくらい叫ぶ。
「ユッキー!!!」
「ユッキー、頑張れ!!!」
「ユッキー!!!」
「ユッキー、負けんな!!!」
「ユッキー!!!」
「ユッキー、負けんな!!!」
「頑張って!ユッキー、ユッキー!!!」
見事も身を乗り出して④海野(由)へ声援を送る。
最終2センターに差し掛かり、海野兄弟の④⑧が隊列の先頭。この後ろに⑤大野がいる。④⑧⑤の外側から③佐倉の仕掛けが来る。勢いはまだある。このまま行けば、2センターを抜けるタイミングで④海野(由)を捲りきれる。それに気づいた客は『佐倉』の名を絶叫した。
しかし、単騎⑤大野がその佐倉をどかしにかかった。⑤大野の牽制を受けて車体が外へ浮く③佐倉。⑤大野はこの瞬間を狙っていたのだ。③佐倉は踏み続けるも、その勢いは削がれた。
最終2センターを抜けて最後の直線へ。全ての力を注いて駆ける④海野(由)。その外側から⑤大野の捲りが飛んでくる。
「大野、キター!!!大野!大野!」
「行け!⑤!⑤!⑤!」
「行け、大野!!!」
大野への声援、絶叫。人気の近畿ラインではなく⑤大野が迫る想定外の展開。客の絶叫で青空が突き破れそうな勢いだった。
しかし、競輪の神様はこれだけで済ませる気が無かった。④海野(由)を交わしたのは⑤大野だけではない。弟の番手から飛び出した⑧海野(大)が、最後の直線で⑤大野と並走になる。
さらに⑧海野(大)の後ろには切り替えた⑥青澤。そして、⑤大野の真後ろまで⑦古達が迫っていた。
ホームストレッチ(客)
←(1コーナー)―――――――(4コーナー)→
⑤ ⑦ ①
決勝(ゴール)← ⑧ ⑥ ③ ②
④ ⑨
――――――――
ホームストレッチ(バンク内側)
観客の目の前を選手たちが駆け抜けて行く。一瞬の出来事だった。その瞬間、客たちは息を飲んだ。
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