霧雪の氷想紀

川之一

一章 フリゼルス雪山

1. 始まりの雪山


 ……冷気を感じる。



 閉じていた目をゆっくりと開けた。


 

 "フリゼルス雪山"の山腹にある山窟の中。


 山窟の中は全て氷に包まれている。平な石を枕にして寝ていたようで、起きてから少し頭痛がしていた。山窟の入り口の方へと視線を向ける。入り口からは朝日が差し込んでいた。

「あっ、もう朝かぁ。寝過ぎた……今日は、誰かフリゼルス雪山に来てくれているかな。何か変化があると嬉しいんだけど」

地面から起き上がり、山窟の入り口へと歩き出す。


 朝日が自分のショートヘアーの銀色の髪と黄金色の瞳を照らす。眩しさで目を細めながら銀世界の雪山を見渡していた。


 ……今日も誰も来ていないようだ。


 一冊のこげ茶色のノートを山窟から持ち出す。かつて、フリゼルス雪山に登ろうとしていた登山家の忘れ物だったノートだ。どのページにも何も書かれていなかったので、今は勝手に自分の日記にしている。


 ノートに"氷想紀ひょうそうき"の始まりを書いていく。

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