【朗報】底辺ダンジョン配信者の私ですけど、最強のエンシェントドラゴンをある方法を使って倒したら鬼バズりしちゃいました。
真賀田デニム
底辺ダンジョン配信者の私ですけど、最強のエンシェントドラゴンをある方法を使って倒したら鬼バズりしちゃいました。
白の龍廟の間編
第1話 トップダンチューバー、鳳条星波。
「はあぁぁぁぁっ」
配信終了後。
16年という短い歳月の中で、過去一大きなため息が出る。
もしかして見間違いかもしれないという淡い期待を胸に、もう一度、さきほどのライブ配信の同時接続数を確認する。
アクセスログ:0
「はあぁぁぁぁぁぁぁっっ!」
過去一最大の溜息を瞬時に更新する私。
ずっと自分のことを底辺
ゼロということは誰も見ていないということであり、もはや底辺ですらない。
空気だ。空気配信者。
いてもいなくても、たった一人の人間にすら気にかけてもらえないエア・ダンチューバ―。むしろ、エアマックス・ダンチューバー。
「あ、なんかカッコいぃかも。エアマックス・ダンチューバー。うへへ」
笑いたくもないのに、変な笑い声がでる。
顔もすごいことになっていそうだ。
でも同接がゼロになった理由は自分でも分かっていた。
私の今までの配信場所が全て
ネーミングセンスはさておき、内容が舌足らず全開の一人喋りなのも同接がゼロになった要因の一つかもしれない。
せめてクラスCダンジョンなら。
せめてモンスターとのバトル配信なら。
せめて珍しい食材を使った料理配信なら。
せめて流暢に面白い一人喋りができたなら。
せめて巨乳を武器にしてぶるんぶるん揺らせたら。
全部ダメな私は、改めて底辺であることを突き付けられて膝からくずおれる。
特に最後の巨乳でショックを受けている私は、自分の胸を押さえて嗚咽すらした。
(はぁ、……ダンチューバーになんかならなければ良かったのかな)
全てはあの日――
◇
20XX年、4月2日、地球上に突如無数のダンジョンが現れた。
それは文字通り〝突如〟であり、今までの当たり前だった日常が一瞬にして崩壊した日でもあった。
ダンジョンはそのほとんどが地下に生成され、発生のエネルギーに耐えられなかった地上のそこここで地盤沈下を発生させた。街が沈み、悲鳴と怒号が響きわたり、人々の安寧は奪われた。
地下の次に多いのは地上だった。隆起してくるダンジョンに破壊されていく人類の陣地。陣地と言ったのは、ダンジョンに異形のモンスターが生息していることが判明したからだ。
中には海中に発生した超巨大ダンジョンもあり、押し上げられた海水が津波となって海岸沿いの町を壊滅させた例もあった。
そして地球上で5つだけだけど、空中に浮かぶダンジョンも存在した。
まるで異星人の宇宙船のごとく、あるいはファンタジーの空中庭園のごとく存在するそれら天空ダンジョンは、クラスSSSダンジョンとして今もダンジョン
突如のダンジョン生成は地球規模の大災害であり、もちろん日本も例外ではなかった。かろうじてダンジョンが発生しなかったのは四国くらいであり、そのダンジョンの多さから、今や
日本は強力な通貨と空中浮遊ダンジョンを二つ所有していることから、Godの中でも発言権が強く、ダンジョン改革を率先して提唱し、実行していった。その中でも画期的だったのが、ダンジョンの踏破難易度設定と探索者ギルドの発足である。
この二つの改革によりダンジョンの管理は徹底され、国の根幹事業の一つにまで成長した。
このいかにもゲーム的な管理はまず、世界中のゲーマーや冒険者を夢見る者の喝采を浴びた。そして彼らの多くがダンジョンシーカーとなり、命の危険も顧みず、ダンジョンへと飛び込んだ。
すると、触発されたその他の人間も彼らのあとを追いかけるようにダンジョンに挑み、その魅力に取りつかれた。
探索、バトル、収集、配信、旅行――。ダンジョンを楽しむ方法は多岐にわたり、いつしかダンジョンはあらゆるエンターテインメントの頂点に立ったのだった――。
◇
「諸君、おはよう」
始まった。
〝諸君〟から始まる鳳条星波のライブ配信である。
私は、コーラで喉を潤すと、彼女の一点の瑕疵もない美麗な顔に見入り、耳をかっぽじいた。
鳳条星波。
彼女は17歳という若さながら、
虹潜章持ちというだけで英雄並みだというのに、彼女はチャンネル登録者数516万人のトップダンチューバーでもあった。
最強装備を身に着け、しなやかな肢体を躍動、且つ栗色のロングヘアをなびかせながら、どんなモンスターにも流麗な剣技で果敢に立ち向かう鳳条星波。
その美貌と漆黒のいで立ちから、ブラックプリンセス・闇の剣聖・深淵を統べる美女・黒の伝説などの異名が彼女にはあるけれど、でもやっぱり――、
【コメント】
・おはようございます、星波様
・おはようございます、星波様
・おっはようございまぁぁぁす、星波様ぁぁぁぁ
・おはよぉございまぁす、星波様
・おきれいでございます星波様
・星波様、おはようございます!
・おはようございます、せな様
・お早うございあす、星波様
(私も……〝おはようございます、星波様〟と――)
コメントを入れる私。
そう、やはり鳳条星波は星波様が一番しっくりくる。
私のコメントは瞬時に無数のコメントに追いやられたけど、別に気にしはしない。むしろ、この鳳条星波ファンの一体感と熱量がたまらない。
ああ、それにしても美人だ。
女の私でもドギマギしてしまうレベルである。彼氏の噂など一度も聞いたことはないけれど、もしもいたら私はショックで寝込むかもしれない。
「先日に言った通り、私は今からクラスSダンジョン、〝虐げられた貴婦人達の宴〟の踏破に挑戦する。順調にいけば掛かる日数は3日。遅くとも5日で成し遂げたいと思っている」
【コメント】
・待ってました!
・このときを待っていたよ
・きたああああああっっ、S級踏破!!すでにおめでとうございます!!!
・三日前からパン一待機していました
・一週間前から全裸待機してました
・一カ月前から風呂入らず靴下だけ履いて待機してました
・ダンジョン名のセンスはよくわからんが、星波様が可愛ければよし!
・最後までお付き合いさせていただきます!
(えとえと……頑張ってね、星波様。……なんか普通すぎるけど、えいっ)
コメントをして、しっかりみんなの輪に入る私。
ダンジョンのクラスには、難易度の高いほうからSSS・SS・S・A・B・C・Dとある。その中でもクラスSは
虹潜章持ちの星波様なら踏破できると信じているけど、なんといっても今回、彼女はソロである。
S級ともなるとパーティー編成が主流のダンジョン探索において、ソロはあらゆる行動で不利になる。
なのに星波様はそのS級以上は絶対ソロと決めていた。
その理由は分からないけれど。
なんにせよその孤高が彼女の気高さを底上げし、星波ファンを増やす要因ともなっていた。御多分に漏れず、私もその一人だった。
女性が一人でダンジョンを踏破していく姿は,同性としてとても頼もしくて応援にも熱が入ってしまう。ダンジョンシーカーにおいて鳳条星波は、もはや女性の象徴と言っても差し支えないかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます