え、あのアイキャッチ、ボクが入れていいんですか!?

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

ブパパブッパ(アイキャッチ

「え、マジっすか、ブッコローさん! アイキャッチ挿入の編集、ボクがやってもいいって!」


「おお、いいぞ」


 飲み会の席で、R.B.ブッコローさんから、直接の依頼が来た。


 仕事は、アイキャッチを入れることだ。


 前任者は女性で、臨月を迎えたので出産と子育て休暇に入る。

 彼女が復帰するまでをつなげ、というのだ。


 あの「ブパパブッパ」という軽妙なアイキャッチ音が好きで、ボクはチャンネル『有隣堂しか知らない世界』のアシスタントディレクターになった。


 長年ADしててよかったー。


「いや、でもおめー変わってんなー。アイキャッチ入れる仕事したいだなんて。頭おかしいんじゃね?」


「おかしいのかもしれません。いやおかしいです。でも、そうでないとやっていけないでしょ?」


「そりゃそうだけどさぁ。要望がピンポイントすぎね?」


「いや、なにを言っているんですか! あの絶妙な間とタイミング! あれがいいんですよ」


「ワケわかんねえ。なーんかもー、一生理解できねーわ。なんでオレの周りってこんなんばっか集まってくんのな?」




 いよいよ、初仕事だ。


「はーいブッコローでーす。今回はこちら。『マスコットのせかーい』! というわけでですねー。今日はカクヨムさんにお邪魔していまーす。ゲストはこちら」


「マスコットのトリでーす」


「おねがいしまーす。いやーさー、ぶっちゃけ又吉さん以上に絡みづれえ」


 

(スタッフ爆笑)



【ブパパブッパ(アイキャッチ音】


 

……早いか? 面白いと思うが。



「いやーさ、世間では、VTuberとか流行ってんじゃーん。オレたちは一応、増○ジゴ○ウのスピリッツを受け継いでいるわけで、この肉体を維持しているわけじゃん」


 自分で言うんだ。



「その点で、トリさんは、Vに憧れたりすんの?」


「憧れはないですねー。やはりマスコットですので、あんまり出しゃばらないでおこうかなって。メインのイメージキャラはいますから、そちらをフューチャーしてもらえたら」

 

「マジか。謙虚じゃないっすかー。儲けほしいとか、思わないんスか?」


「いや、もう儲かっちゃってるんですよね! だって、グッズになってますしー。マスコット肖像権は行使しますから!」


「なるほど! そういう……やべえこのトリ、思いの外、金の亡者かもしれん」



【ブパパブッパ(アイキャッチ音】


 

 これは、いいタイミングだったんじゃないか!?



~~~~~ ~~~~~ ~~~~~


 後日、ブッコロ―さんからもOKが出た。


「いやーなんか、いい経験をさせていただきました」


「おめえだけ、楽しんでるっぽいな」


「楽しかったです。トリさんの返しも見事でしたし、ボクが楽しかったのを、視聴者さんたちにもお届けできれば!」


「……おめえが楽しそうで、なによりだよ」


「ですが、案外アイキャッチの音ってゆっくりなんですね。もっと店舗が高いと思っていました」


「は? おめえいつもどうやって見てるん?」


「毎回、1.5倍速くらいで見てますかね?」


「全部見てくれてるのはありがたいが」


「いえ。アイキャッチのところ以外は飛ばしてます」


「クビだクビィ!」

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